読書専用端末と対応コンテンツが続々登場 ――デジタルパブリッシングフェア2004

組み込みネット編集部

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レポート 2004年5月 6日

 ソニーは,読書専用端末「LIBRIe(EBR-1000EP)」を展示した(写真2).表示パネルに米国E Ink社の反射型ディスプレイ・モジュールを採用した.表示パネルの画面サイズは6インチ,解像度はSVGA(800×600ピクセル,約170ppi).重さは約190g.2004年4月から発売を開始している.LIBRIeで閲覧できる電子書籍コンテンツは,貸本サービスを提供するWebサイト「Timebook Town」にて販売している.

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[写真2] ソニーの読書端末「LIBRIe」
紙と同様に,薄暗い中や強い日差しの下でも読みやすい.画面切り替えの速度もそれなりに速い.しかし,画面切り替え時に,一瞬だけだが白黒を反転させた画像が現れる.

 E Ink方式のディスプレイ・モジュールでは,マイクロカプセル内に帯電した白と黒の粒子を入れ,電圧をかけて白または黒の粒子を引き寄せることにより,パネル上に文字などを表示する.表示された画像の保持には電力が不要.ただし,現状の技術では,画面切り替え時に残像を残さないため,いったんそれまでにかけていた電圧と逆の電圧をかける必要がある.その際に,一瞬だがパネル上に白黒を反転させた画像が見えてしまう.本モジュールのフィルム化を担当した凸版印刷によると,この点については課題として認識しているが,現状では解決方法が見つかっていないという.

 E Ink方式のディスプレイ技術には,画面のカラー化や基板の薄型化などの課題が残っている.ただし,現状の技術で実現できる機器(例えば,画面切り替えの頻度が少ない掲示板向けのディスプレイなど)については,ここ1~2年のうちに製品化の予定があるという.

●電子書籍向けのXML規格が乱立

 キヤノンシステムソリューションズは,同社が開発したLIBRIe用のコンテンツ作成ソフトウェア「Book Creator」を展示した(写真3).テキスト・データや画像データを取り込み,XMLのタグと対応づけを行えば,ソニーが策定した電子書籍規格「BBeB規格」に準拠したバイナリ・データを作成できる.

 電子書籍コンテンツをLIBRIeで閲覧できるようにするためには,BBeB規格に準拠したバイナリ・データ(BBeB Bookファイル)を作成しなければならない.BBeB規格の中間フォーマットはXMLで定義されているが,XSL(XMLのスタイルシート)のタグは独自に定義されたものである.BBeB規格に準拠したバイナリ・データを配布するには,ソニーとライセンス契約を結ぶ必要がある.

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[写真3] ソニーの電子書籍規格に準拠したデータを作成するソフトウェア
ソニーのブース内に展示されていた.

 廣済堂は,中間ファイルにXMLを利用したコンテンツの管理・印刷サービス「XMLフレームワーク」を展示した.コンテンツをXML形式でデータベース化する.XSLタグで見出しや本文などを定義することにより,印刷用のデータ(版下データ)を自動でレイアウト(配置)できる(写真4).組み上がったデータに加えた訂正を元データに反映することもできる.XSLのタグは同社が独自に定義したもの.

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[写真4] 自動組版ソフトウェア
独占禁止法関係の法令集を自動でレイアウトするデモンストレーションを行っていた.XSLタグは,実際に顧客と議論しながら,試行錯誤して決定したという.

 このように,コンテンツをXML形式で管理している企業はいくつかあるが,XSLタグの定義などは各社が独自に行っており,統一されていない.なお,松下電器産業の読書端末「ΣBook」は,コンテンツをすべて画像データとして保持している.

●東芝もSDスロット内蔵の電子書籍端末を参考出展

 東芝も,電子コンテンツを閲覧できる端末「SD-BOOK」を参考展示した(写真5).SD Memory Cardスロットを搭載し,SD Memory Cardによる著作権保護技術(DRM)を採用している.画面サイズ(1画面あたり)は7.7インチ,解像度は640×960ピクセル(150ppi).本端末はWindows XPを搭載している.Flash Playerを利用して工場における作業手順書などを表示するデモンストレーションを行っていた.現状では価格が10万円弱になってしまうため,まずは一般消費者向けではなく,企業や学校向けに販売していく予定.

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[写真5] 東芝の電子書籍端末「SD-BOOK」(参考出展)
現状ではWindows XPを搭載しているが,消費電力を低減するために,いずれはPDA用のOSなどを搭載することを検討しているという.

●市場が拡大するマンガ配信

 エヌ・ティ・ティ・ソルマーレは,ディジタル・データ化したまんがのコンテンツ「C'MOA」を展示していた(写真6).PDAで表示することを想定している.まんがの1コマ分を1画面としており,大きい縦長や横長のコマはスクロールして表示する.原本で意図した効果をできる限り忠実に再現できるという.主な読者層としてPDAを持っている20代~40代の男性会社員を想定しており,彼らが好みそうな内容を中心にコンテンツを増やしていく.ユーザからは,「携帯端末なら通勤の電車内などでも周囲の目を気にせずにマンガを読める」と好評だという.今後は,携帯電話用のコンテンツも作成する予定.

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[写真6] ディジタル・コミック「C'MOA」

C'MOAのコンテンツはWebサイト「フービオ」から有償でダウンロードできる.

 凸版印刷は携帯電話向けのディジタル・コンテンツ配信サービス「HandyBitway」のデモンストレーションを行った(写真7).まんがや書籍のコンテンツを,パケット定額制を導入している携帯電話(現状ではKDDIの携帯電話の一部の機種)向けに提供している.パケット量に応じて課金する携帯電話では,まんが1冊分のダウンロードに何千円もかかってしまうため,サービスの対象をパケット定額制対応の携帯電話に限定したという.

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[写真7] ダウンロードした携帯電話用のコンテンツを表示しているところ
KDDIの携帯電話のWebアクセス・サービス「EZweb」のメニューからコンテンツを購入できる.

●電子書籍用のたて書きHTMLビューア

 ボイジャーは,HTMLコンテンツをたて書きで表示できる読書用ビューア「azul」を展示した(写真8).紙の本のように1ページ分ずつ表示できる.文字の表示サイズを変更したり,よこ書きで表示することもできる.XHTMLに対応している.任意の場所にブックマーク(しおり)をつける機能などを備えている.

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[写真8] たて書きのHTMLビューア「azul」
左はHTMLをWebブラウザ(Internet Explorer)で表示したもの,右はazulで表示したもの.azulは,青空文庫のWebサイトでも販売している.

関連リンク
SamsungやLG.Philipsが60インチ以上の大型PDPテレビを展示――LCD/PDP International 2002レポート

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