プロジェクション・テレビをねらうデバイスに注目集まる ――2004 International CES

組み込みネット編集部

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レポート 2004年1月15日

 2004年1月8日~11日,Las Vegas Convention Center(米国ネバダ州)にてコンシューマ・エレクトロニクスに関する展示会「2004 International CES」が開催された(写真1).プロジェクション・テレビ用のMEMS(micro electro mechanical systems)デバイスや光半導体デバイスが相次いで発表された.薄型のプロジェクション・テレビも発表された.また,韓国メーカなどが大型プラズマ・ディスプレイを競って展示した.

 日本では,薄型の液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)やプラズマ・ディスプレイ(PDP:plasma display panel)を使ったテレビが売り上げを伸ばしている.一方,米国は家屋が大きいためか,大型化が容易な背面投射型のプロジェクション・テレビが注目を集めていた.

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[写真1] 2004 International CESの会場
米国ネバダ州Las VegasのLas Vegas Convention Centerで開催された.

●Texas Instruments,DLPの新チップを発表

 米国Texas Instruments社は,コントラスト比が5000:1,解像度が1,080p(走査線1,080本のプログレッシブ方式)相当のDMD(Digital Micromirror Device)「xHD3」を搭載したプロジェクション・テレビの試作機を展示した(写真2).微妙な色の階調を表現でき,なめらかで切れ目のない映像を表示できるという.

 DMDとは,シリコン・マイクロマシン技術を用いて微細な可動ミラーを多数配列したものである.DMDのミラー角度の変化により,スクリーンに映像を映し出す.

 同社は解像度が1,080pのDMDチップを,同社のプロジェクタ用ディスプレイ技術「DLP(Digital Light Processing)」における第3世代の製品と位置づけている.本DMDチップは2004年後半に出荷を開始する.

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[写真2] xHD3を搭載したプロジェクション・テレビの試作機
従来のDMDよりコントラスト比を高めた.暗い映像でも微妙な色の階調を再現でき,なめらかで切れ目のない映像を表示できるという.

●Intel,液晶と半導体を組み合わせたマイクロディスプレイの開発を発表

 米国Intel社 President & COO(chief operating office)のPaul Otellini氏は,同社がプロジェクション・テレビなどの投影に使われる光半導体デバイスの市場に参入することを発表した(写真3).同社の光半導体デバイスはLCOS(liquid crystal on silicon)と呼ばれる方式に基づくマイクロディスプレイである.また,ディジタル家電向けのハードウェアやソフトウェアの開発に同社が2億ドルの資金を投入することも宣言した.

 LCOS方式では,シリコン・チップ上に画素をしきつめて鏡のような面を構成し,表面のガラスとの間に液晶層をはさみ込む.液晶層を制御して,光出力を変化させる.同社が開発しているLCOS方式に基づくシリコン技術は,Cayleyというコードネームで呼ばれている.本マイクロディスプレイは,2004年の終わり,もしくは2005年早々に発売する予定.すでに,米国InFocus社中国TCL International Holdings社中国Skyworth Digital Holdings社,台湾Primax PDC社が同社のマイクロディスプレイを利用した製品を開発中だという.

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[写真3] Intel社 President & COO(chief operating office)のPaul Otellini氏
CESの初日に「INDUSTRY INSIDER」というセッションで講演を行った.

●Thomson,厚さが6.85インチのプロジェクション・テレビを展示

 フランスThomson社は,厚さが6.85インチ(約17cm)のプロジェクション・テレビを展示した(写真4).2004年中にディスプレイ・サイズが50インチと61インチの製品を,2005年には70インチの製品を発売する予定.2004年中に17種類のモデルを発売するという.

 Texas Instruments社のDLP(Digital Light Processing)技術に基づいたDMDと,InFocus社の投影技術(Light Engine)を用いている.

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[写真4] 画面の大きさが61インチの製品「HD61THW263」.
壁にかけることもできる.重さは139ポンド(約59kg)以下.ATSC/QAMに対応したチューナを内蔵している.

●Samsungが80インチのプラズマ・テレビを展示

 Samsung Electronics America社は,画面サイズが80インチのプラズマ・テレビ「HPP8071」を展示した(写真5).ATSC/QAMとNTSCに対応したチューナを内蔵している.解像度は1,920ピクセル×1,080ピクセルである.一方,LG Electronics社は画面サイズが76インチのプラズマ・ディスプレイを展示した(写真6).このディスプレイの解像度は1,920ピクセル×1,080ピクセル,厚さは81mmである.

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[写真5] Samsung Electronics社のプラズマ・テレビ(チューナ内蔵)
80インチという画面サイズは,プラズマ・テレビでは世界最大だという.コントラスト比は2000:1,輝度は800cd/m2.

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[写真6] LG Electronics社のプラズマ・ディスプレイ
コントラスト比は1000:1,輝度は800cd/m2.

●Sony Erricson,ハンズ・フリー電話としても使えるMP3プレーヤを展示

 英国Sony Erricson Mobile Communications社は,Bluetooth機能を備えている電話端末と連携させるとハンズ・フリー電話として使えるMP3プレーヤ「HBM-30」を展示した(写真7).電話がかかってくると,MP3プレーヤは流していた音楽を止める.ユーザはMP3プレーヤの12けた表示のディスプレイでどの番号からかかってきたかを確認でき,通話ボタンを押せば通話できる.通話を終えると,またMP3プレーヤの音楽が流れる.2004年1月から発売を開始する.

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[写真7] Bluetoothに対応したMP3プレーヤ「HBM-30」
中央奥にあるのが,MP3プレーヤである.通常は右にあるようなイヤホンで音楽などを聴く.左にあるようなBluetooth対応の携帯電話端末と連携させることにより,MP3プレーヤとイヤホンがハンズ・フリー電話の機能を果たす.

●東芝,0.85インチのハード・ディスク装置を展示

 東芝Toshiba America Consumer Products社)は,ディスク径が0.85インチ(約2.2cm)のハード・ディスク装置を展示した(写真8).回転数は3,600rpm,重さは10g以下,容量は2Gバイトと4Gバイトの2種類を予定している.

 携帯電話やディジタル・カメラ,MP3プレーヤ,PDAなどの携帯機器への搭載を想定している.2004年夏からサンプル出荷を開始する.

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[写真8] 0.85インチのハード・ディスク装置
外形寸法は,2Gバイトのものが3.3×24×32(mm),4Gバイトのものが5×24×32(mm).

●指紋認証でパソコンにログインする機能を持つUSBメモリ

 中国RiTech International社は,パソコンにログインするかぎの役割を果たす指紋認証付きUSBメモリ「BioSlimDisk iCool」を展示した(写真9).ログイン画面で本製品をUSBポートに差し込み,指紋認証を行うとパソコンにログインできる.また,指紋認証によって中のデータにアクセスできるUSBメモリとして使用することもできる.2004年2月に発売を開始する予定.

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[写真9] USBメモリ「BioSlimDisk iCool」
側面に付いたスライド・ボタンにより,かぎとして使うかUSBメモリとして使うかを切り替える.

●Duracell,厚さ7mmのLi1次電池を展示

 米国The Gillette社のDuracell部門は,厚さ7mmのLi1次電池「Duracell CP1」を展示した(写真10).この電池はディジタル・カメラ用に開発された.一つの電池で,約200枚の画像を撮影できるという.

 すでに,ニコン製のディジタル・カメラ「Coolpix 3700」とSamsung製のディジタル・カメラ「Digimax U-CA 3」がDuracell CP1に対応している.Duracell CP1は2004年の第1四半期に北米,欧州,アジアにて発売される予定.

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[写真10] 厚さ7mmのLi1次電池「Duracell CP1」
ニコン製のディジタル・カメラ「Coolpix 3700」に電池を入れたところ.

●USBで接続するVoIP電話端末

 米国Aico Systems社は,USB経由でパソコンに接続するVoIP(voice over IP)電話機「U-100」を展示した(写真11).同社はVoIP電話による通話サービス「TalkPro」を提供している.これまで提供していた電話機は,Ethernet経由で接続するものだった.

 TalkPro電話機には,電話番号として7けたの数字がそれぞれ割り振られている.TalkPro電話機どうしの通話は無料.TalkPro電話機から公衆網の固定電話や携帯電話に電話をかけるときは,米国内なら1分あたり3.5セント,日本なら5.5セントになる.固定電話などからTalkPro電話機に電話をかけるときは,いったんアクセス・ポイントに電話をかけ,そこからTalkPro電話機につなぐ.現在,アクセス・ポイントは米国内などの限られた地域にしかないが,各国で提携先が見つかれば同様のサービスを提供する予定.現在のユーザ数は63万人.

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[写真11] 通話サービス「TalkPro」のデモンストレーション
パソコンの左側に置いてあるのが,TalkPro電話機「U-100」.USB経由でパソコンと接続する.固定電話にかけるときは,一般の電話機と同じようにダイヤルするだけでよい.

●無線LANとUSBに対応したディジタル写真立て

 米国Pacific Digital社は,無線LANとUSBに対応したディジタル写真立て「MF(MemoryFlame)-810SW」を展示した(写真12).パソコン上で専用ソフトウェアを使って画像を並べ,無線LAN(IEEE802.11b)またはUSB 1.1経由でMF-810Sに転送する.転送された画像はスライド・ショー形式で表示できる.ステレオ・スピーカを内蔵しており,音声(WAV形式)を出力することもできる.

 写真立てが内蔵するボード上にRAMを32Mバイト,フラッシュ・メモリを20Mバイト搭載している.この中に32~80枚程度の画像を格納できる(解像度は800ピクセル×600ピクセル).液晶ディスプレイの方式はTFT,大きさは10.4インチ,重さは1,761g.USB 1.1のホスト・インターフェースを備えており,USBインターフェース経由で直接カメラやフラッシュ・メモリ・カードから画像を取り込むこともできる.

 2004年2月から発売する予定.USBのみに対応した「MF-810S」はすでに発売している.

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[写真12] ディジタル写真立て「MF-810S」
専用ソフトウェアによって,写真の表示順や切り替えかたなどを設定できる.

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