Infineon,「洗えるMP3プレイヤー」をアパレル・メーカと共同開発
2002年7月19日,ドイツの半導体メーカであるInfineon Technologies社はアパレル・メーカと共同で開発した「ウェアラブル・エレクトロニクス」に関する発表を行った.ウェアラブル・エレクトロニクスとは,エレクトロニクス機能と衣類を一体化する技術である.
今回の発表では,このウェアラブル・エレクトロニクス技術を用いた「洗えるMP3プレイヤー」を公開した.これはMP3プレーヤを一体化した洋服である.洗濯などの際に,洋服に織り込まれたエレクトロニクス部を取り外す必要はない.「かりに普通のジャケットが50ユーロしたとする.エレクトロニクス部を付け加えるのに,それに10ユーロの上乗せで済むのであれば,買い手がつくだろう」(Infineon Technologies社,Senior Director,Corporate ResearchのWerner Weber氏).
「洗えるMP3プレイヤー」は,以下の四つのユニットから構成されており,これらが導電体の埋め込まれた生地細片を通して電気的につながっている(写真2).
1)オーディオ・モジュール(マイコン/音声処理用チップ)
2)バッテリ/マルチ・メディア・カード(MMC)モジュール
3)イヤホン/マイクロホン
4)センサ・キーボード
1)のオーディオ・モジュールは,3cm×3cmのモジュールである.搭載されているチップは本MP3プレーヤ用に特別に開発したものではないが,組み込んだソフトウェアによって音声認識やテキスト/スピーチ変換などの機能を実現している.
2)のバッテリ/MMCモジュールは,充電やカードを取り替えるために脱着が可能である.バッテリにはリチウムイオン・ポリマ電池を採用している.数時間連続して使用できる.
今回のウェアラブル・エレクトロニクスではバッテリを用いたが,将来的には同社が開発している「サーモジェネレータ」技術を採用していきたいという.サーモジェネレータは,体温と外気の温度差によって電圧を発生させるシリコン・ベースの技術である.現在,数μW/cm2の電力を発生させることができる.これは,腕時計の電池としては十分であるが,MP3プレーヤ付きの洋服などでは不十分であり,改善していく必要があるという.また,同社は比較的バッテリの価格が高い補聴器などの製品にサーモジェネレータを応用することを考えている.