カスタムLSIだけでなく,標準品の市場でも勢力を伸ばすARMプロセッサ ―― Embedded Systems Conference Boston 2003

組み込みネット編集部

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レポート 2003年10月 1日

 2003年9月15日~18日,組み込みシステムの設計・開発に関する展示会/セミナ「Embedded Systems Conference Boston 2003」が開催された.16日と17日の両日は,展示会場にて製品のデモンストレーションが行われた.ミックスト・シグナル信号を扱うARMコア内蔵のマイクロコントローラや,モータ駆動用のマイクロコントローラなど,プロセッサ関連の新製品の展示や発表が数多く行われた.開催地は,米国マサチューセッツ州BostonのHynes Convention Center(写真1)

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[写真1] Hynes Convention Center
2003年9月15日~18日の4日間,Embedded Systems Conferenceが開催された.

●ARMコアを内蔵するマイクロコントローラの新製品が続々

 ARMプロセッサというと,これまではカスタムLSI(ASIC)に搭載されるCPUコアという印象が強かった.しかし,最近では標準品のマイコンの位置づけて出荷されるARMプロセッサが増えている.本展示会でも,ARMコアを内蔵した組み込み機器向けマイコンの展示が目立っていた.

 まず,米国Aeroflex Microelectronic Solutions社は,ARM7TDMIコアを内蔵する32ビット・マイクロコントローラ「AX07CF192」を使ったデモンストレーションを行った(写真2).50MHzで動作しているときの消費電力は430mW.本マイクロコントローラは,同社がこれまで発売していたARMコア内蔵マイコンに新たに10ビットA-Dコンバータを追加したものである.例えば,アナログ信号とディジタル信号の両方を扱う用途などを想定している.

 本マイクロコントローラは192Kバイトのフラッシュ・メモリと4KバイトのSRAM,5チャネルの10ビットA-Dコンバータ,2チャネルのUART,ウォッチドッグ・タイマなどを備えている.外部割り込みピンは8本,最大I/O数は75.本マイクロコントローラの出荷はすでに始まっている.大量購入時の価格は8ドル以下.

 これとは別に,同社はフラッシュ・メモリの容量が64Kバイトの「AX07CF064」と,同40Kバイトの「AX07CF040」も用意する.フラッシュ・メモリ容量以外の仕様はAX07CF192とほとんど同じだが,I/O数,外部割り込み用ピン数などが少ない.出荷開始時期は2003年12月ごろの予定.

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[写真2] AX07CF192を搭載した評価ボード
本評価ボードを用いて,ブザーを鳴らしたり,温度センサで熱を計測するといったデモンストレーションを行った.

 一方,米国Atmel社は,ARM9コアを内蔵するマイクロコントローラ「AT91RM9200」を展示した(写真3).本マイクロコントローラは,USB2.0(フルスピード・モード,ロースピード・モード)のホスト/ファンクション・ドライバや,SRAM/SDRAMなどのメモリ・コントローラを内蔵している.PDAなどの携帯機器や医療システムなどで利用されているという.

 また,同社は本マイクロコントローラ用の評価用ボードも提供する.本ボードは,Ethernet MACやUART,MMC/CompactFlashインターフェースなどの機能を備えている.

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[写真3] AT91RM9200のデモンストレーション(左)と評価ボード(右)
評価ボードを用いてVGAディスプレイやキーボード,マウスを制御している.

 米国Triscend社は,ARM7TDMIコアを内蔵したFPGA「A7S」のデモンストレーションを行った(写真4写真5).本FPGAは,SRAM/SDRAMコントローラやウォッチドッグ・タイマ,UART,JTAGインターフェースを備えている.

 展示はなかったが,同社は今回,A7SにUSB1.1対応のコントローラや10M/100M Ethernet MACを内蔵したFPGA「A7V」を発表した.A7Vのサンプル出荷は2003年第4四半期から開始するという.

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[写真4] A7Sのデモンストレーション
ステッピング・モータの制御を行って,おもちゃのロボットのアームを動かしている.

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[写真5] A7Sのボード
A7Sの場合,Ethenetコントローラなどは外付けとなる.

●日本勢は独自アーキテクチャの製品を展示

 米国NEC Electronics America社は,同社のV850E1コアを採用したマイクロコントローラ「V850E/IA1」,「V850E/IA2」のデモンストレーションを行った(写真6).50MHzの周波数で動作させていた.インバータ・モータ(3相誘導モータ,ブラシレスDCモータなど)の制御に適しており,エアコンや洗濯機などへの応用を想定しているという.

 また,同社は本展示会に合わせて新しいマイクロコントローラ「V850E/IA3」,「V850E/IA4」を発表した.動作周波数は最大64MHz.V850E/IA1,V850E/IA2と同じく,インバータ・モータの制御に用いられる.V850E/IA3,V850E/IA4の特徴は,二つのモータを同時に駆動できることである.例えば,電気自動車の車輪の制御といった用途を想定している.また,変換速度が2μs(64MHz動作時)の10ビットA-Dコンバータを備えている.

 V850E/IA4はJTAGインターフェースを内蔵しており,ピン数は100.一方,V850E/IA3はJTAGインターフェースを内蔵しおらず,ピン数は80.

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[写真6] V850E/IA1,V850E/IA2を用いたデモンストレーション
3層ブラシレスDCモータの制御を行っている.真ん中のいちばん下にあるボタン(CW,CCW)を押せば,時計回り,反時計回りにモータが回転する.

 一方,米国Fujitsu Microelectronics America社は,CANインターフェースなどを備えた16ビット・マイクロコントローラ「90F349」のデモンストレーションを行った(写真7).自動車のインパネ(回転数や速度などの表示部)などの応用において,すでに実績があるという.

 デモンストレーションは行っていなかったが,同社も本展示会に合わせて新しい32ビット・マイクロコントローラ「MB91260」を発表した.CPUコアとして,同社の「FR60Lite」を採用している.動作周波数は最大33MHz.12チャネルの8/10ビットA-Dコンバータを3相分用意している.いずれも変換速度は1.2μs~1.3μs.3相インバータ・モータの制御に適しており,エアコンなどの白物家電の需要を見込んでいる.

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[写真7] 90F394のデモンストレーション
6個のステッピング・モータを駆動して,自動車のインパネを制御しているようす.

 また,ルネサス テクノロジは,R8C Tiny用のスタータ・キット「Mini R8C StarterKit Plus」を展示した(写真8).開発ボードにはR8C/11 MCUが搭載されており,動作周波数は20MHz.USBを介してパソコンとターゲット・ボードを接続するための「FoUSB」を同梱している.

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[写真8] Mini R8C StarterKit Plus
写真左の黒いケースが「FoUSB」.プログラムを開発する際,パソコンからUSBインターフェースを介してフラッシュ・メモリの書き換えを行える.

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