シリコンバレー駐在日記(6) ――ドライバーズ・ライセンス

田中 良平

tag: 組み込み 半導体

コラム 2003年10月16日

 シリコンバレーでの生活において車の運転は必要不可欠な要素の一つです.ドライバーズ・ライセンスは,米国に駐在する人が必ず通らなければならない関門です.

●日本と異なる運転ルール

 米国の道路を運転する際,初めのうちは日本と異なるルールに,かなりとまどいます.右側通行,左ハンドルは覚悟していましたが,信号機のルールにも日本といくつか異なる点があります.

 一つは,右折に関するルールです.特に注意書きがないかぎり,赤信号でも右折できます.逆に,左折の場合は,ほとんどの交差点は左折専用の信号を装備しています.日本のように間合いをとる必要がなく,とても簡単です.信号の点灯制御は,道路上の車の有無を察知するセンサを利用しているので,青信号中でも,道に車がいなくなると,すぐに赤信号に変化します.一方,信号のない交差点ではストップ&ゴーというルールがあります.一時停止した順番で交差点に進入できます.狭い路地にはこのような場所が多いのですが,このルールはしっかりと守られています.このように,米国では,車の流れをよくするくふうをいたる所で見ることができます.

 こうした機能は便利な面もありますが,駐在して間もないころは,左折用の青信号(矢印の形をしている)を直進用の青信号とまちがえて進行しようとしたり,右折する際に,赤信号で待っていて,後ろの車にホーンを鳴らされるなど,慌てることがたびたびありました.また一般道路でも約80km/hで走っている車が多く,スピードに慣れることもたいせつです.

●免許取得は簡単

 州ごとに多少の差はあるようですが,運転免許証の取得は日本に比べると簡単だと思いました.日本では,一般的に自動車教習所に行きますが,米国では自信のない人だけが教習所を利用します.普通は実地試験での一発勝負になります.ハイスクールでは車の運転に関する授業もあるようです.

 自動車免許証を取得するためには,最寄りのDMV(Department of Motor Vehicles)へ行って,申込用紙をもらいます.DMVは,日本の陸運局のようなところです.試験にかかる費用は12ドルです.試験費用は日本と違ってはるかに安いものです.筆記試験から,写真撮影,実地試験,運転免許証の発行まですべて含まれます.実地試験も3回までチャンスがあります.

 申込用紙を提出すると,パスポートなどの個人情報をチェックされ,事務員が個人情報を登録します.そのあと,顔写真と指紋を登録して,筆記試験(約40 問)を受けます.

 筆記試験は,DMVから発行されるドライバーズ・ガイド,もしくは日本人向けに発行されているガイドブックなどを勉強していれば,それほど難しい内容ではないと思います.日本語でも試験を受けることができますので,筆者は日本語で受けました.ただし,日本語の場合は,標識の試験(約15問)も追加されます.採点はその場で行い,80%以上正解なら仮免許証を発行してくれます.

 仮免許証を手に入れたら,実地の練習に入ります.日本での運転が長い場合は,環境の違いに混乱してしまうので,知人の車に乗せてもらうなどして,道に慣れることから始めます.

 実地試験は自分で用意した車を持ち込んで,試験用の道を走ります.レンタカーや他人名義の車を使う場合は,使用許可証が必要になります.また,この試験を受けるためには,前もって電話で予約を入れておく必要があります.混んでいるときは,試験まで3週間ほど待たなければならないそうです.

 試験当日は,試験官が助手席に乗って,DMV周辺を約10分間ほど走ります.この試験はドライバの安全確認を重点的にチェックするもので,テクニックについては基本的な車両感覚があれば特に問題はないようです.試験前に筆者があまり英語を聞き取れない旨を試験官に言っておいたので,方向指示もずいぶんとやさしい英語で話してくれました.試験官は,フレンドリで試験中に緊張しないように気を配ってくれます.

 運転が終わると,その場で採点結果を教えてもらえます.合格した場合は,受付で一時的な免許証を受け取ります.本物の写真入り運転免許証の発行は,移民局からの資料が必要になるために時間がかかります.筆者の場合は,免許証が送られてくるまでに,この一時免許証の有効期限が切れてしまい,期限延長の手続きを行いました.最近は,時間のかかることがあたりまえになっているのか,期限が近づくと自動的にDMV から新しい一時免許証が送られてくるそうです.

 こうして,最終的に筆者が免許証を手に入れたのは,試験に合格してから4ヵ月後のことでした.有効期間は3年でした.この運転免許証を入手することで,ようやくカリフォルニアの住人になった気分になりました.

(本コラムはDESIGN WAVE MAGAZINE 2002年7月号に掲載されました)


◆筆者プロフィール◆
たなか・りょうへい.同志社大学工学部卒,今年で31歳になる好奇心旺盛のエンジニア.シリコンバレーの目新しいところに,足を運んでは新鮮な驚きを体感する日々を送っている.現在は,シリコンバレーにあるDAIHEN Advanced Component社に勤務.FPGAとIP(Intellectual Property)を応用したシステムの開発を行っている.休日は,家族で巨大なショッピング・モールめぐりをし,お昼は数多くあるファースト・フード店で一休み..

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