多様なラインナップを資産とするルネサス,統合の象徴「R8C/Tiny」を開発

組み込みネット編集部

tag: 組み込み 半導体

インタビュー 2003年9月 1日

 日立製作所と三菱電機のそれぞれの半導体部門の一部がルネサス テクノロジとして統合してから4ヵ月が経った.片や関東を拠点とする日立側,片や関西を拠点とする三菱側だったが,一つの会社として異動・転勤も含めた人材の交流が始まっているという.また,三菱のM16Cコアを採用した少ピン,小型のマイコン「R8C/Tiny」シリーズの一部の品種のサンプル出荷も開始した.この,ルネサスの「R」を冠した初のマイコンについて,ルネサス ソリューションズ 技術本部 マイコン応用技術部長の鈴木 誠氏,ルネサス テクノロジ 技術統括部 第三応用技術部 グループマネージャーの松本真典氏,同社応用技術統括部 マイコン技術部 4~8ビットグループ グループマネージャの石丸善行氏に聞いた.

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[写真1] ルネサス ソリューションズ 技術本部 マイコン応用技術部長の鈴木 誠氏
鈴木氏は三菱側の出身.マイコンの応用技術を担当している.


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[写真2] ルネサス テクノロジ 応用技術統括部 第三応用技術部 グループマネージャーの松本真典氏
松本氏は日立側の出身.白物家電などを担当している.H8/Tinyのプロジェクトに関わっていた.


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[写真3] ルネサス テクノロジ 応用技術統括部 マイコン技術部 4~8ビットグループ グループマネージャの石丸善行氏
石丸氏は三菱側の出身.R8C/Tinyのプロジェクトを取りまとめている.

――R8C/Tinyはどのような市場をねらった製品なのでしょうか?

松本氏 主に,今まで8ビット・マイコンが使われていた市場において新たに湧き上がってきた需要に対応することと,一部で始まった高級言語による開発に対応するために,R8C/Tinyの開発に着手しました.また,小型のマイコンに性能面でのプラス・アルファが求められ始めており,それもこのシリーズの開発を始めた一因です.

 小型のマイコンは,小型モータ制御やサブマイコンとしての利用など,いわば「ねじ」,「くぎ」のようにさまざまなところで使われています.

 具体的な応用としては,「環境,アクチュエータ制御,セキュリティ」がキーワードになるでしょう.発電機や芝刈り機などに搭載されている小排気量のエンジンにおいて,排気をなるべくきれいにするために点火プラグのタイミング制御をきめ細かく行う.これが「環境」です.また,「アクチュエータ制御」はこれから特に介護機器などで需要があると考えており,寝返りをうちやすいベッドや電動車いす,家庭用エレベータなどの介護用品には,モータが数多く使われています.また,組み込み機器を悪用されないようにするため,本人確認やデータの暗号化などの「セキュリティ」についても需要があると考えています.

――三菱側のM16Cコアを採用したのはなぜですか?

石丸氏 そもそもこれは,2001年から三菱電機の社内で開発が進んでいたプロジェクトです.2002年10月から日立製作所と共同開発を始め,ルネサスとしての最初のチップとなったというわけです.三菱電機の8ビット・マイコン「740ファミリ」の開発グループが中心となり,M16Cコアを採用して開発を進めました.

――それでは,主に三菱電機が開発した製品だということでしょうか?

松本氏 開発作業は三菱側が担当しましたが,製品仕様の検討やサポート,開発ツール,ネーミングを含むマーケティング戦略には日立側のリソースも入っています.

 特にネーミングに関しては,日立側で使っていた高性能の少ピン・小型マイコンの名前である「Tiny」というネーミングがすでに市場に浸透していたので,それを利用することにしました.また,ルネサス テクノロジとして出荷するマイコンとして,ルネサスの「R」,M16Cの「C」を採用しました.このネーミングによって,ルネサスの新しいマイコンが,より早く市場に浸透していくことを期待しています.

鈴木氏 M16Cの「C」には,顧客満足(customer satisfaction)の意味が込められています.以前から三菱電機の社内では,Cをつける製品にはあるレベル以上の設計品質が備わっていなければならない,という暗黙の了解があります.

――これまでは別会社だった技術者どうしの共同作業ということで,くい違いやあつれきはなかったのでしょうか?

松本氏 もともと敵どうしのような存在でしたから,はじめはお互いにとまどいがありました.でも,同業の技術者ですから,話してみると理解し合えることは多かったです.また,困っていた点も同じだったりします(笑).「どちらも同じようなことで悩んでいたんだ」,「うちの会社では悩んでいたことを,あちらはそういうものなのだと割り切っていた.そういう割り切りかたもあるのか」などの発見がありました.

鈴木氏 あつれきというよりも,むしろお互いに遠慮してしまうところがありました.それも,一つの会社としてしごとをしていくうちに,だんだん消えてきていますが....

松本氏 当初は,ことばの使いかたが違う,ワークステーションやソフトウェアが違う,測定の方法一つ取っても違う,という状態でした.お互いのノウハウを共有し,より良い方法を模索するために,社内でワーキング・グループを設立したり,勉強会を開いたりしています.

――御社の8ビット・マイコンにおいては,日立側と三菱側でどのようにすみ分けるのでしょうか?

石丸氏 純粋な8ビット・アーキテクチャのマイコンとしては,社内では三菱側の740ファミリが主流であり,特にすみ分けを考える必要はありません.

――マイコン製品群について,ラインナップの整理統合は行われるのでしょうか?

石丸氏 マイコンはそもそも多様な用途に使われており,ラインナップを絞ればよいというものではありません.すでに,それぞれのマイコンに顧客がいるわけですし,顧客に迷惑をかけてはいけません.それに,まったく同じマイコンはありませんから,多様なラインナップがルネサスの財産になっています.淘汰は市場が行ってくれるでしょう.

鈴木氏 既存の顧客には,すでに導入されているチップの後継を薦めていくし,新規顧客にどれを持って行くかは調整が必要ですが,顧客の要求にもっともふさわしいと思われるものを持って行きます.そのうえで,新しいニーズに応えられるマイコン製品を,ルネサス・ブランドとして開発していきます.


関連URL
ルネサス テクノロジの発表資料
http://www.renesas.com/jpn/news/2003/0619/index.html

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