「SystemCの基礎は押さえた,さぁ実践」という方に ――『SystemC Golden Reference Guide』
「SystemCの基礎は押さえた,さぁ実践」という方に
ISBN:0953728021
20.5×12cm
177ページ
6,303円(税別,amazon.co.jpの2003年5月8日現在の価格)
2002年4月(初版第1版)
英国Doulos社からSystemCに関する書籍が出版されました.Doulos社は,筆者の会社(エッチ・ディー・ラボ)とよく似ていて,ハードウェア設計のトレーニングやコンサルティングを行っています.
本書は,TutorialsとReference Guideの2部で構成されています.Tutrialsは,この本を読むにあたって簡単にSystemCを覚えようという趣旨で書かれています.しかし,その内容は30ページ程度ととても短く,SystemCの概要がわかるものではありません.単におまけの意味合いで掲載されたものでしょう.「SystemCを覚えるならわが社のトレーニングでどうぞ」と言っているかのようです.
ところで,現在,SystemCの標準化・普及推進活動を行っているOSCI(Open SystemC Initiative)から"User's Guide"と"Functional Specification"の二つのマニュアルがリリースされいています.しかし,SystemCで使えるすべての関数やクラスがこれらのマニュアルで紹介されているわけではありません.加えて,LRM(Language Reference Manual)もまだ出版されていません.
そういった意味で,数の多いSystemCの関数やクラスを一つ一つ紹介している本書のReference Guideは,ある程度評価できます.ただし,ここでは文法定義が詳しく解説されているわけではありません.おそらく,本書はクイック・リファレンスの位置付けで刊行されたものでしょう.
要するに本書は,SystemCを学習し,いざ記述を始めようとしたとき,参考資料として活用する際に便利な本だと言えます.大きさも手帳サイズで持ち運びやすくなっています.
しかし,分量は意外と多く,約170ページにもなります.Verilog HDLやVHDL,C言語と違い,SystemCはクイック・リファレンスでさえこれほど分厚くなるのだなぁと,あらためて感心しました.
長谷川裕恭
(株)エッチ・ディー・ラボ