監視と遠隔操作から市場に入る「ネット家電」 ――ネット家電ショー2002

組み込みネット編集部

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レポート 2002年12月 3日

 2002年11月19~22日,東京ビッグサイト(東京都江東区)において,インターネットと融合した家庭電化製品(いわゆるネット家電)に関する展示会「ネット家電ショー2002」が開催された.

 「家電ショー」と銘打ってはいるものの,いわゆる白物家電(冷蔵庫,洗濯機,電気炊飯器など)関連の出品は少なく,Webカメラを応用した監視装置や,携帯電話などから家庭内の機器を操作するといった遠隔操作関連の展示が目立った.また,家庭内の機器を接続するネットワーク機器も展示されていた.

●家庭内機器をつないでインターネット越しに制御する

 NTTコムウェアは,家庭内の機器をつなぐ情報端末制御装置「L-Box」を展示した.アドレス変換機能,ファイアウォール機能,DHCPクライアント機能など,プロキシ・サーバとしての機能を持つ.10/100Base-T(Ethernet)やUSB,PCMCIAカード(Type II)などのインターフェースを備える.これらのインターフェースを利用して,特定小電力無線やIEEE1394,無線LANのアダプタに接続することもできる.

 L-Boxを利用すると,インターネット経由で,さまざまな家庭内の機器を制御できる.会場では,壁に取り付けた赤外線リモコン付き監視カメラと無線で接続していた.例えば,インターネット経由でカメラの向きを変えたり,電灯に向けて赤外線信号を送信し,電灯のON/OFFを制御してみせた(写真1).ほかにもL-Boxを利用して,テレビ番組の録画(Gコード予約),エアコンのON/OFF,来客時のインターホンの応答などのデモンストレーションを行った.

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[写真1] インターネット経由で電灯のON/OFFを行うデモンストレーション
携帯電話から見た部屋のようすを,パソコン上でシミュレーションしてみせた.

 家庭内の機器の通信には,Echonetプロトコルを用いている.Echonetとは,家庭内の機器などを相互接続するための規格で,エコーネットコンソーシアムが仕様の策定を行っている.エコーネットコンソーシアムには,家電メーカや電力会社など,100社以上の企業が参加している.

●壁に埋め込んで使う小型コンピュータ

 ピノーは,壁に埋め込む小型コンピュータを展示した(写真2).外形寸法が95mm×75mmのCPUボード「PNM-SC1」と,汎用I/Oボードを組み合わせて構成した(写真3).米国National Semiconductor社のx86互換CPU「Geode SC1100」を搭載している.300MHz動作時の消費電力は2.5W.消費電力を抑えているため,ファンを搭載しなくてもボードはほとんど熱くならないという.展示では,640×480ピクセルの解像度のディスプレイを壁に据え付け,アニメーションなどを表示していた.例えば,インターホンの応対などに使えるという.

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[写真2] 壁に埋め込んで使う小型コンピュータ
消費電力を抑えているため,ボードはほとんど熱くならないという.壁に埋め込む以外にも,いろいろな用途が考えられる.

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[写真3] PNM-SC1(左)と汎用I/Oボード(右)

 また,PNM-SC1よりも高性能なCPUを使用したCPUボード「PNM-SC2」も展示した.こちらはGeode SC1200/SC2200/SC3200の3種類から搭載するCPUを選択できる.

●これからの録画/再生は著作権保護に配慮

 三洋電機は,セキュリティ領域を持つリムーバブル(脱着可能な)ハード・ディスク規格であるiVSRに対応したビデオ・プレーヤを参考展示した.iVSRの規格は,キヤノン,三洋電機,シャープ,日本ビクター,パイオニア,日立製作所,フェニックス テクノロジーズ,富士通の8社が2002年3月に設立したiVSRハードディスクドライブ・コンソーシアムが策定している.現在は25社がコンソーシアムに参加している(2002年11月現在).

 ハード・ディスクの構造自体は従来と同じだが,通常のデータ記録領域以外に,セキュリティ情報を格納する領域を備えている.

 参考展示したビデオ・プレーヤは,4台までのハード・ディスクを挿入できるラック型である(写真4).1台のハード・ディスクから三つのコンテンツを同時に再生できる.デモンストレーションとして,展示会場では合計九つの動画コンテンツを一つの画面に並べて表示していた.

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[写真4] iVSR対応ビデオ・プレーヤ(ラック型)
1台のハード・ディスクから三つのコンテンツを同時に再生できる.

●火災や不法侵入を検知して知らせるカメラ

 ホーチキは,カメラと携帯電話のメール通知機能を組み合わせた家庭用セキュリティ・システム「S-Mode Lite」を展示した.

 S-Mode Liteのカメラをインターネットに接続すると,カメラが撮影した画像をS-modeセンタのホームページから確認することができる.また,火災検知器や窓に取り付けたスイッチなどと連動させれば,火災や不法侵入などが発生した場合に警告メールを受け取ったり,問題が発生したときの映像をS-modeセンタのホームページから確認できる(写真5写真6)

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[写真5] S-Mode Liteのカメラを取り付けた室内のようす
ドアの右上と部屋の左隅に,カメラが取り付けてある.

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[写真6] 問題が起こると,携帯電話に通知する
火災検知器と連動させたS-Mode Liteのカメラから,メッセージが送られてくる.

●Air H"とカメラだけで遠隔監視を実現

 CBCは,PHSのデータ通信サービス「Air H"」を利用した遠隔監視カメラ「いまみ~る」を展示した(写真7).カメラにAir H"対応の通信端末を差し込むだけで,遠隔操作に対応したカメラとして使用できる.撮影した画像は「いまみ~るサーバ」に保存され,インターネット経由で確認することができる.監視を行う場所(家庭内など)にインターネットの接続環境などを用意する必要はない.

 ユーザがいまみ~るサーバにアクセスして現時点の画像を確認できるほか(ライブ画像),一定間隔で撮影した画像をそのつどユーザに送信したり(タイマ撮影),画面内に動きがあったときに撮影してユーザに通知したりできる(警戒モード).また,カメラのシャッタ・ボタンを押すと,そのときの画像をすぐにユーザに送信できる(シャッタ撮影).

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[写真7] 遠隔監視カメラ「いまみ~る」
監視を行う場所にインターネットの接続環境を用意する必要はない.

●音声を認識して家電制御や緊急通報

 ボイスマジックは,音声認識技術によって各種機器を操作するソフトウェア「UNマジック」を使って,各種装置を制御するデモンストレーションを行った.テレビのON/OFFを音声で指示したり,「助けて」という言葉を認識して通報メールを発信する(写真8)

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[写真8] 音声操作ソフトウェア「UNマジック」のデモンストレーション
音声に反応して,センタにメールを通知するシステムを実演していた.

●相手の顔と資料を同時に確認できるテレビ会議システム

 マイルストーンは,相手の顔と資料を同時に表示して,資料を指し示しながらコミュニケーションできるテレビ会議システム「以心伝心」を展示した.自分の映像は,左右を反転して相手の画面に表示する.そのため,画面上のプレゼンテーション資料の特定の箇所を指さした場合,相手の画面でも,自分が指したのと同じ資料の箇所を指し示しているように見えるという(写真9).また,プレゼンテーション資料と相手の映像の透過度は自由に変えることができる.

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[写真9] テレビ会議システム「以心伝心」
自分が指したのと同じ資料の箇所を指し示しているように見せることができる.画面中央やや上にぶら下がっているのが,こちらの顔を撮影している小型カメラである.

 デモンストレーションでは,会議を行う人物の正面にディスプレイを置き,その中央やや上に小型カメラを設置していた.小型カメラには広角レンズを用いており,180度近い範囲の映像を撮影している.小型カメラの位置が相手の顔の近くにくるので,会議相手の視線が自然に見えるという.

 このシステムは現在開発中で,2003年4月の発売を予定している.今回の展示では,プレゼンテーション資料の共有にWindows XPのリモート・アシスタンス機能(パソコンに対して遠隔ログインを可能とする機能)を利用した.製品化にあたっては,遠隔ログインの機能も自社で開発し,製品側に組み込んで提供する.また,映像を重ねて表示するために,今回の展示ではソニーのDME(Digital Multi Effect)スイッチャ「DFS-700」を利用している(映像の反転もこれが行っている)が,同じような機能を持つハードウェアを自社開発する予定.DFS-700では,映像のRGB信号をいったんNTSC信号に変換して表示しているが,自社開発するハードウェアでは,RGB信号をそのまま処理できるようにする見込み.

●書画カメラとプロジェクタを一体化

 日本アビオニクスは,新製品として,立体物も写せるプロジェクタ「MP-50」を展示した(写真10).読み取り面に載せた対象物を,内部に設置した200万画素のCCDカメラで撮影する.カメラは読み取り面にピントが合うように調整されている.書画カメラ(プレゼンテーションにおいて資料などを撮影するためのカメラ)本体にプロジェクタを一体化したのが特徴.

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[写真10] マルチプロジェクタ「MP-50」
書画カメラとプロジェクタを一体化しているのが特徴.

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