μITRONやARMプロセッサ関連の話題が目白押し ――ET(Embedded Technology)2002

組み込みネット編集部

tag: 組み込み 半導体

レポート 2002年12月 2日

●複数プロセッサに対応したARM用開発ツールを展示

 組み込み向けマイクロプロセッサの中でもっとも勢いがあったのがARMプロセッサだった.

 まず,本家のアームは,同社のプロセッサ向けのソフトウェア開発ツール「RealView」を展示した(写真4).複数のプロセッサを搭載するシステムLSIのソフトウェアの開発に対応している.例えば,CPUコアで稼働するソフトウェアとDSPコアで稼働するソフトウェアをシミュレータ上で同時に動かしてデバッグできる.DSPコアとして,まず米国DSP Group社の「OakDSP」と「TeakLiteDSP」をサポートする.

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〔写真4〕RealViewデバッガのデモンストレーション
プロセッサを搭載したボードを二つ重ねてある.それぞれのプロセッサで稼働するソフトウェアを同時にデバッグできる.JTAGを利用してプロセッサの内部動作をモニタする.

 RealViewにはコンパイラやデバッガ,ICEなどが含まれている.コンパイラとデバッガはすでに出荷している.ICEは2003年第1四半期に出荷する予定.従来,同社はコンパイラやデバッガなどを一つのパッケージ(ADS:ARMディベロッパスイート)として提供してきたが,RealViewでは,各ツールを別々に購入することができる.

●ARM用のPCカード型JTAGエミュレータ登場

 ライトウェルは,ET2002の展示会場でARMプロセッサ用のPCカード型JTAGエミュレータ「MJX330 for ARM」のデモンストレーションを行った(写真5).オンチップ・デバッグ機能を持つCPUに対応する.JTAGクロックは最大40MHz.ダウンロード速度は,JTAGクロックが20MHzのとき400Kバイト/sである.

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〔写真5〕MJX330 for ARMを用いたデモンストレーション
ノート・パソコンのPCMCIAカード・スロットにMJX330 for ARMを挿入し,ケーブルを介してターゲット・ボードに接続する.手前にあるのがMJX330 for ARM本体.

 ARM7とARM9に対応するMJX330は,すでに出荷を開始している.デバッガとして,GDB(GNU Debugger)と米国Green Hills Software社の「MULTI」を利用できる.ホストとなるパソコンのOSはWindows 98/Me/NT 4.0/2000/XP.2002年12月にはARM社のADSにも対応する予定.さらに,2002年12月には32ビットMIPSプロセッサ対応の,2003年2月には64ビットMIPSプロセッサ対応の,2003年3月にNECのV850Eプロセッサ対応のMJX330を出荷するという.

●ARMプロセッサ上でLinux OSが動作

 コンピューテックスは,Linux OSをサポートするDragonBall MX1評価ボード「DragonBall MX1 EVA BOD」を展示した(写真6).モトローラと共同開発した.Linux OSはコンピューテックスが独自に開発した.価格は98,000円.2002年12月より販売を開始する.評価ボード上には,DragonBall MX1プロセッサ(ARM9TDMIコアを内蔵)のほか,16Mバイトのフラッシュ・メモリ,64MバイトのSDRAM,Ethernet(10/100Base-T)ポート,USB 1.1ポート,RS-232-Cコネクタ,MultiMediaCard/SDメモリ・スロット,LCDインターフェース,センサ・インターフェース,拡張バス・コネクタ,デバッグ用インターフェースなどが搭載されている.Linux 2.4系カーネルやデバイス・ドライバなどはフラッシュ・メモリに書き込まれている.

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〔写真6〕DragonBall MX1 EVA BOD
DragonBall MX1の性能評価用,開発ターゲット用,Linux OSの評価用,教育用などの用途が考えられている.

 また,同社はLinux OS搭載機器向けのソフトウェア・デバッガ「CSIDE for Linux」も展示した.本ソフトウェア・デバッガには,エディタ,ビルダを含む統合開発環境「CSIDE Version4」が組み込まれている.ターゲット・システムとホスト・パソコンの接続にはUSBやEthernetなどを用いる.本デバッガはWindows98/Me/2000/XP上で稼働する.また,ターゲット・システムで動作するLinux OSとして,米国Monta Vista Softwave社の「HardHat Linux2.0」,「Monta Vista Linux2.1」,米国Lineo社の「Embedix1.0」,アットマークテクノの「Armadillo Linux」,日立超LSIシステムズの「SH4 Linux/BSP V3.5」,同社の「Computex Linux1.0」の動作を確認済みである.

 CSIDE for Linuxには,ARMプロセッサやXScaleプロセッサに対応した「CSIDE for Linux ARM」,SHプロセッサに対応した「CSIDE for Linux SH」,Linux OS搭載Zaurus(SL-A300,SL-B500,SL-C700)専用の「CSIDE for Linux Zaurus Developer」がある(図1).CSIDE for Linux Zaurus Developerは,ノルウェーTrolltech社のPDA用GUIライブラリ「Qtopia」といっしょに利用することができる.

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〔図1〕CSIDE for Linux Zaurus Developerの構成図
ターゲット・システムとホスト・パソコンの接続にはUSBやEthernetなどを用いる.

●AMD社がMIPSプロセッサの拡販へ踏み出す

 日本エイ・エム・ディは,無線LAN用チップセット「Am1772」を展示した(写真7).本チップセットは,RF(radio frequency)トランシーバLSI「Am1770」とベースバンドLSI「Am1771」からなる.会場では,Mini PCIカード(Type IIIb,外形寸法は59.6mm×44.45mm×4.9mm)上の片面に実装した「ミニPCIカード・リファレンス・デザインキット(RDK)」を使ってデモンストレーションを行った.本チップセットは2002年11月にサンプル出荷を開始し,2003年第1四半期より量産を開始する予定.

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〔写真7〕Am1772チップ・セットをMini PCIカードに搭載した「ミニPCIカード・リファレンス・デザインキット」
右にあるのは,大きさを比較するためのボールペンと携帯電話である.

 また,同社は組み込み向けとして,Alchemyプロセッサの販売を強化すると述べた.「ET2002の展示会場はARM一色.でも来年は変わっているでしょう」(日本エイ・エム・ディ 取締役の吉沢俊介氏).パソコン分野で米国Intel社を追い上げているように,組み込み分野でも英国ARM社に迫るという.

 Alchemyプロセッサは,MIPSアーキテクチャを採用している.例えば2002年4月に発表された「Au1100」の動作周波数は333MHz/400MHz/500MHz,400MHz動作時の消費電力は250mWである.本プロセッサの設計は,米国AMD(Advanced Micro Devices)社が2002年2月に買収した米国Alchemy Semiconductor社が行っている.上述の無線LAN用チップセットもAlchemyブランドで販売されている.

●TIはDSPコアC55x用の開発キットを展示

 日本テキサス・インスツルメンツは,DSPコア「TMS320C55x」を内蔵するディジタル信号処理プロセッサ向けの開発キット「TMS320C5510DSK」を展示した(写真8).本開発キットには,開発用ボード,ICE(in-circuit emulator),コネクタ,開発用ソフトウェア「Code Composer Studio」が含まれている.価格は49,800円.

 今回,新たにCode Composer Studioに消費電力解析の機能を追加した.例えばDSPコアやボード全体の消費電力を見積もることができる.また,解析結果をグラフィカルに表示する機能も備えている.本機能を利用して,DSPコアのさまざまな動作周波数やコア電圧における消費電力を評価することができる.

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〔写真8〕TMS320C5510DSKのデモンストレーション
右側の計測器(ハードウェア)で測定している消費電流を,左側のCode Composer Studio(ソフトウェア)でも見積もり,左側のディスプレイに表示している.

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