永遠の恋人と心地よいひとときを ――『お話・数学基礎論』『数学にときめく』

三谷政昭

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書評 2002年8月 6日

永遠の恋人と心地よいひとときを

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八杉 満利子,林 晋 著      新井紀子 著 ムギ畑 編
講談社 刊               講談社 刊
ISBN:4-06-257372-5       ISBN:4-06-257374-1
新書版                新書版
259ページ              247ページ
940円(税別)            900円(税別)
2002年6月              2002年6月



 まずは,2冊の本の奥付けにある発行年月日を見てもらいたい.なんと,どちらも「2002年6月20日発行」,内容も「数学」で同じときている.そのうえ,いずれの主たる著者も「女性」である.数学書であるにもかかわらず,書名にもなっている「ときめく」,「ときめき」といった言葉がちょこちょこと出てくる.

 とり上げているテーマを列挙してみると,「集合,連続,無限,公理,定理,論理,三段論法,連続体仮説,不完全性定理,再帰的関数」などなどで,純粋数学そのものなのであるが,日常的なできごとにうまくたとえてあり,なかなか興味深い.他方,数学,論理学などという類の学問は,今をときめく情報科学や工学分野,IT社会を支える礎(いしずえ)でもある.

 特に,『数学にときめく』のほうは,インターネットのWebサイト「ムギ畑」の掲示板「算数教室:乙女の花園」でのチャットから生まれ出ている.インターネットを利用して本が生まれてくる「ネット・コミュニティ」の底力に感心させられること,しきりである.

 ただ,読んでいて気がついたことは,記述内容に詭弁的なところ(数学的に独特な言い回し)が多々見受けられる点である.数学の論理的思考をたのしめるかどうかは,おそらく国語(日本語)の読解力にかかっているのではないだろうか.

 採り上げた2冊の叢書は,「数学にときめく」という心地よい言葉の響きに,読んでいる時間をついつい忘れてしまうくらいに没頭できる.通勤時間の読み物(著者に対しては失礼かもしれないが...)としても最適であろう.数学に畏敬の念を抱き,数学書を手にされることも目にすることもない方々に,数学が『数楽(数学が楽しくなる意味)』になる「きっかけ本」としてお薦めしたい.

 ときめくこととは何なのか.専門書のようではあるが,必ずしもそれだけでもない.これら2冊の数学本を永遠の恋人に見立てて,ぜひ数学にときめいてもらいたい.


三谷政昭
東京電機大学 工学部 情報通信工学科

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