有機ELディスプレイの展示に活気,透明無機ELも登場 ――LCD/PDP International 2001

組み込みネット編集部

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レポート 2001年11月 6日

 2001年10月31日~11月2日,パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて,フラットパネル・ディスプレイ分野の展示会である「LCD/PDP International 2001」が開催された.今年の出展企業および団体の数は178,来場者数は41,025人だった.

 今年のLCD/PDP Internationalでは,有機EL(electro luminescence)ディスプレイを展示しているブースがにぎわっていた.特に,有機ELのしくみや生産工程などのプレゼンテーションを行っていたブースは絶えず人だかりができており,関心の高さがうかがえた.

●インク・ジェット方式で製造した有機ELディスプレイ

 有機ELディスプレイは,ガラス基板上に 1) 陽極,2) ホール輸送層と発光層と電子輸送層の3層の有機膜,3) 陰極が積層された構造になっている.電圧をかけると陽極から注入されたホール(+)と陰極から注入された電子(-)が発光層内で再結合する.これにより,有機分子が励起して発光する.駆動方法には,パッシブ・マトリックス方式とアクティブ・マトリックス方式の2種類がある.また,応答速度は従来の液晶がms単位であるのに対して,有機ELの速度はμs単位と速い.そのため,動画などに適しているという.今回のLCD/PDP Internationalでは,セイコーエプソン,東北パイオニア,三洋電機,オランダPhilips社など多くの企業が有機ELディスプレイを展示した.

 セイコーエプソンは,2.8インチ型の有機ELディスプレイを参考出品した(写真1).階調は64,色数は26万である.今回の有機ELディスプレイの製造では,英国CDT(Cambridge Display Technology)社が開発したインク・ジェット方式の製法を採用している.発光層になる高分子有機材料をインク・ジェット方式によって噴射して,有機膜を形成する.これにより,真空方式で形成された有機膜より精度が高くなる.また,基板の大きさにあわせて大型化できるという.一方,消費電力は従来の液晶ディスプレイ並みである.材料を改善することで,さらに消費電力を下げられるもよう.ただし,寿命はまだ製品レベルに達していない.駆動方式はアクティブ・マトリックス型,画素ピッチは100dpiである.なお,東芝もインク・ジェット方式による有機ELディスプレイの製造を行っているという.

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〔写真1〕インク・ジェット方式によって製造した有機ELディスプレイ

●CGシリコンTFTを使って有機ELの点灯を制御

 東北パイオニアは,26万色表示の3.0インチ型有機ELディスプレイを参考出品した(写真2).同社の有機ELディスプレイは,アクティブ・マトリクス方式のCG(continuous grain)シリコンTFT(薄膜トランジスタ)基板を採用している.TFTが画素一つ一つの点灯を制御する.CGシリコンとは,シリコン結晶の粒子と粒子の間(結晶粒界)の原子の並び方に連続性を持たせた,電子移動度の高いシリコンである.この有機ELディスプレイは駆動用ICを基板上に実装している.これによって,従来のパッシブ・マトリックス方式と比べて,小型化しやすくなった.2002年秋ごろに製品化される予定である.

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〔写真2〕CGシリコンTFT基板を使った有機ELディスプレイの展示

●消費電力が380Wの50インチ型プラズマ・ディスプレイ

 プラズマ・ディスプレイは,2枚のガラスに挟まれた希ガスに電圧を加え,そのときに発生する紫外線により発光するディスプレイである.ブラウン管(CRT)の代替として期待されている.今回の展示会では,静岡パイオニア,富士通日立プラズマ・ディスプレイ,NECなどの企業がプラズマ・ディスプレイを展示した.

 静岡パイオニアは,43インチ型と50インチ型のプラズマ・ディスプレイを展示した(写真3).今回の50インチ型XGAディスプレイは,消費電力が約380Wと低い.同社の従来品より部品点数を4割削減した.また,パワー・セーブ・モードを組み込んだ.

 このほか,同社の従来品に搭載されていたワッフル構造よりもリブの深いディープワッフル構造を採用した.これによって,従来製品と比べて発光面積を20%,明るさを60%向上させた.さらに,駆動電圧の入力レベルを細かく制御するスムースCLEAR(hi-contrast & low energy address & reduction of false contour sequence)と呼ぶ駆動方式を採用した.これにより,低輝度領域の階調幅を改善できた.加えて,独自開発のカラー・フィルタを採用した.これにより光反射率を30%低減した.NTSC(national television system committee)規格もクリアしているという.

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〔写真3〕静岡パイオニアの展示ブースの風景

●インターレース発光で寿命を1.6倍に延ばしたプラズマ・ディスプレイ

 富士通日立プラズマディスプレイは,32インチ型,37インチ型,42インチ型のディスプレイ・モジュールを展示した(写真4).放電電極の偶数ラインと奇数ラインを交互に発光させるALIS(alternate lighting of surfaces method)方式を採用している.これにより,発光デューティは1/2となり,従来品と比べて寿命が約1.6倍になるという.また,ディスプレイ・モジュールの開発では,ファン冷却なしで動作するように熱設計に配慮したという.

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〔写真4〕富士通日立プラズマディスプレイの展示ブースの風景

●61インチ型のプラズマ・ディスプレイ

 NECは,61インチ型,50インチ型,42インチ型のプラズマ・ディスプレイを展示した(写真5).CCF(capsulated color filter)方式を採用している.これは,表示セル3色(RBG)のそれぞれにカラー・フィルタを埋め込んだ方式である.これにより,色再現範囲が広がった.また,PLE(peak luminescence enhancement)制御を採用している.表示する映像に応じてピーク輝度を自動調整できる.これにより,消費電力を抑えることができるという.

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〔写真5〕NECの展示ブースの風景

●DRAM内蔵の低温ポリシリコン反射型TFT液晶

 三菱電機は,DRAM内蔵の低温ポリシリコン反射型TFT液晶を参考出品した(写真6).色数は26万,サイズは2.15インチ型である.一般的なSRAM内蔵型では,RGBごとに1ビットしか記憶できないため4096色が限界である.これに対してDRAMを利用すると,RGBごとに4ビットを記憶できるので,色数が増えるという.また,4096色と26万色の切り替えを行える.消費電力は,パネルと周辺回路を含めて,4096色表示時(省電力時)が4mW,26万色表示時(通常時)が28mW.なお,駆動回路はガラス上に形成されている.コントラスト比は30対1,反射率は50%,反応速度は30ms.2001年度中に出荷する予定である.

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〔写真6〕DRAM内蔵低温ポリシリコン反射型液晶ディスプレイの展示

●透明の無機ELディスプレイ

 無機ELディスプレイは,発光体に無機物を使用しており,電圧をかけて発光させるディスプレイである.

 デンソーは,透明無機ELディスプレイを展示した(写真7).今回の製品は,絶縁層の主原料にAl2O3(酸化アルミニウム)を用いている(写真8).これにより,シリコン・オイルなしで絶縁層を形成でき,ディスプレイの透明化を実現したという.また,シリコン・オイルなしでもディスプレイは防湿化されるという.寿命は,室温時で5万時間である.消費電力は約5Wである.車載用としてすでに製品化もされており,温度特性などの信頼性試験は問題がない.同社は青発光と緑発光の技術試作品も展示していた(写真9)

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〔写真7〕透明有機ELディスプレイの展示

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〔写真8〕透明有機ELディスプレイの構造(デンソーの展示)

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〔写真9〕青/緑発光の試作品の展示

●帯電したインク粒子を利用するディスプレイ

 オランダ社Philips社は,白黒のインクの粒子のそれぞれに電荷を持たせて,上下に電界を与えて表示するE・INKディスプレイを展示した(写真10).一般的な反射型LCDと比べて輝度が3~6倍高い.また,バックライトが不要であり,電源OFF後も表示データを保持している.これにより,消費電力が1桁~2桁低くなるという.フルカラー化も可能である.今後,応答速度や駆動方法の改善を検討していくという.

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〔写真10〕 E・INKディスプレイの画面

●単一化合物による有機EL発光材料

 タイホー工業は有機EL用の発光材料を展示した.世界初の単一化合物による白色高輝度有機蛍光体である(写真11).白色発光や白色照明などに応用できるという.

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〔写真11〕白色高輝度有機蛍光体の展示

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