MotorolaのmobileGTに対応するQNX OS,米欧韓の主要自動車メーカが採用へ

組み込みネット編集部

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レポート 2001年6月26日

 組み込み向けリアルタイムOSベンダであるカナダのQNX Software Systems社に,同社の製品が「mobileGT」の基本ソフトウェアとして採用された経緯について聞いた.mobileGTは,米国Motorola社が提唱している次世代車載情報システムのアーキテクチャである.同社の日本法人QNXソフトウェア システムズの社長Jeff Baer氏(図1)は,最新版(QNX RTOS v6.1)では,x86以外のCPUを正式にサポートすることを明らかにした.また,同社のテクニカルマネージャ岡澤幸一氏に,同社の製品の特徴について聞いた.

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[図1]QNXソフトウェア システムズの社長Jeff Baer氏(左)とテクニカルマネージャ岡澤幸一氏

――mobileGT Allianceで,QXN社のリアルタイムOSが基本ソフトウェアとして採用された経緯について教えてください.

Jeff:mobileGT Allianceの中心である米国Motorola社は,運転者向けの車載情報システムを実現するため,車載端末に音声認識や音声合成など多くの機能を盛り込むことを考えました.また,このシステムにはインターネット・アクセス機能とマルチメディア機能も実装される予定です.mobileGT機能は,ユーザから見ると自動車の一部です.このため自動車と同じように安全性と信頼性が求められます.OSのスケーラビリティ,アーキテクチャの信頼性の面からQNXのリアルタイムOSが評価されたのです.現在,韓国のヒュンダイ・オートネット社がmobileGTの採用をアナウンスしています.もうすぐ,北米のトップ・メーカと欧州のトップ3社から,採用のアナウンスがあるはずです.

――現在,QNX社のリアルタイムOSは組み込み市場向けにどのようなCPUをサポートしていますか?

Jeff:以前から,マルチプラットホームへの対応をアナウンスしていました.2001年6月末に発売する「QNX RTOS v6.1」では,正式にx86,ARM,StrongARM,PowerPC,MIPS,SH-4をサポートします.

 以前のバージョン4までは,x86アーキテクチャしかサポートしていませんでした.バージョン6.1の提供で,CPUパワーが求められるアプリケーション(カーナビなど)にはSH-4,小型携帯端末にはStrongARMを採用することが可能になります.事例として,Compaq社のiPAQ(CPUはStrongARM)にQNX RTOS v6.1をポーティングしてみました(図2).2001年6月27日~29日に開催されるESEC(組込みシステム開発技術展)でデモンストレーションを行う予定です.

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[図2]QNX RTOS v6.1をポーティグしたiPAQ

――他社のリアルタイムOSと比べてQNXの強いところはどこですか.

岡澤:スケーラブルであることとリアルタイム性,高信頼性が挙げられます.リアルタイム性については,一例ですが,PentiumIIIを採用したシステムでコンテキスト・スイッチ時間約1μsというデータがあります.

 QNX RTOSのアーキテクチャは,2001年6月末に出荷するバージョン6.1まで変わっていません.マルチプロセス,マルチスレッドをサポートしています.ドライバはプロセスの一つとして動作します.不ぐあいが発生した場合,不ぐあいを起こしたプロセスだけをアボートすればよく,全体として高い信頼性が得られます.

 また,Linuxと共通のPOSIXベースのAPIを採用しています.Linux用のAPIを再コンパイルすれば,スケジューリング機能を含んだものまで,QNX RTOSで動かすことができます.つまり,Linuxのアプリケーションをリアルタイム環境で動作させることができます.GNU互換のライブラリも利用できます.QNX RTOSは,カーネル・コールをメッセージ・パッシング方式で行っています.セマフォやリアルタイムOSの拡張機能をマイクロカーネルがサポートしており,POSIX準拠のアプリケーションをそのまま利用できます.

 このほか,ハイエンド・アプリケーション向けにマルチプロセッサをサポートする「SMP」,耐故障性を強化したネットワーク機能を提供する「Qnet」などで他社製品との機能の差異化を図っています.

――国内で普及させるために,今後,どのような活動や製品の拡充を計画していますか?

Jeff:まずは,QNX RTOSを製品の試作などで使ってみて欲しいと思います.非商用での利用を条件に,「QNX Realtime Platform(RTP)」を無償で提供しています.このRTPには,QNX Neutrino OS,Photon microGUIウィンドウ・システム,GUIアプリケーションとGUI開発ツールなどが含まれています.

 また,今後のmobileGTの成果や,日立製作所やMotorola社,米国Intel社などのCPUメーカとの協力関係から出てくる成功事例が紹介されれば,顧客に安心して利用してもらえるのではないかと思っています. 

――QNX社の概要について教えてください

Jeff:創設者のGordon Bell氏とDan Dodge氏は,カナダのWaterloo大学を卒業後,カナダにあるBell Northern Research社に入社しました.当時のAT&T Bell研究所の関連会社です.そこでOSの研究を行い,1981年にパソコン用のマイクロカーネルOSを開発しました.1982年に独立し,マイクロカーネルを持ったパソコン用リアルタイムOSを開発することを目的に,QNX社を立ち上げました.

 日本市場では,10年以上前からマーケッティング活動を行っており,おもにFA機器向けに販売を行ってきました.3,4年ほど前から通信,コンシューマ関連の需要が増えてきました.コンシューマ分野は,パソコンより信頼性の高いものが求められています.QNX RTOS は,これまで医療系,FA系で利用されてきた実績があり,信頼性には自信があります.日本でもコンシューマ業界の需要が増えてきたことを受けて,2000年6月に日本法人を設立しました.


組み込みネット編集部 猪之鼻 博隆

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