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TOPPERS,リアルタイム性の確保と動的負荷分散の両立を目指したマルチコア対応リアルタイムOSを一般公開
ニュース 2009年4月23日
オープン・ソースのリアルタイムOSを開発しているTOPPERSプロジェクトは,マルチコア・プロセッサ対応のリアルタイムOS「TOPPERS/FMPカーネル」の一般公開を,2009年5月13日から開始する.本リアルタイムOSは,設計段階で各コアに対して特定のタスクを割り付ける機能分散型と,実行時に負荷に応じて各コアにタスクを振り分ける対称型(負荷分散型)の両方のタイプのシステムに適用できる.
本リアルタイムOSのユーザは,設計段階でタスクを各コアに(静的に)割り付ける.また,本リアルタイムOSはシステムの稼働中にタスクを別のプロセッサ・コアに(動的に)移動させるためのAPIを備えており,これを利用して動的な負荷分散を行える.例えば,アプリケーションがシステムの負荷を監視し,その情報をもとにタスクの移動を指示する方法や,設計者が計画的にタスクの移動ルールを決める方法などが考えられる.こうした機能により,リアルタイム性を確保しやすい機能分散型の利点と,動的負荷分散を実現できる対称型の利点の両立を可能にしたという.
本リアルタイムOSは,シングル・コア・プロセッサ向けに開発したTOPPERS/ASPカーネルをマルチコア対応に拡張したもの.2008年5月から同プロジェクトの会員向けに配布しており,約1年の試用期間を経て,一般配布を始めることになった.
TOPPERSプロジェクトは,μITRON 4.0準拠のTOPPERS/JSPカーネルを非対称の機能分散型マルチコア・プロセッサ・システムに対応させた「TOPPERS/FDMPカーネル」を2006年4月から一般公開している.また,セイコーエプソンと名古屋大学の共同研究により開発された対称型マルチプロセッサ用リアルタイムOS「TOPPERS/SMPカーネル」の仕様も公開している.こうした背景から,今回のFMPカーネルを,同プロジェクトでは「第2世代のマルチコア・プロセッサ向けリアルタイムOS」と位置づけている.
また,同プロジェクトはソフトウェア・モジュールを部品化し,必要な部品を組み合わせて大規模な組み込みソフトウェアを構築するための基盤技術「TOPPERS組込みコンポーネントシステム(TECS)」も2009年5月13日より公開する.具体的には,本システムの仕様書,部品を結合するためのツール(TECSジェネレータ),本システム仕様に対応させたTOPPERS/ASPカーネル・ベースのリアルタイムOSを公開する.
併せて,名古屋大学 大学院情報科学研究科 附属組込みシステム研究センター(NCES)が2009年5月13日より,同プロジェクトの会員に対してトレース・ログ可視化ツール「TlaceLogVisualizer」をバイナリ形式で配布することも発表した.本ツールはリアルタイムOSやアプリケーション・プログラムの実効履歴をグラフィカルに表示するツールで,名古屋大学がTOPPERSプロジェクトの協力を得て開発した.
[写真1] TOPPERS組込みコンポーネントシステム(TECS)の適用対象のイメージ
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