プロセッサ最新テクノロジ2016 シリーズ12
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2016年8月22日
EtherCAT対応製品も取り揃え
Cortex-Mコア搭載で産業分野に最適なインフィニオンのXMCマイコン
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社(以下 インフィニオン)は欧州を代表する半導体メーカであり,特に車載や産業など高信頼性が要求されるマイコン分野で定評がある.RISC/MCU/DSPを統合した32ビットTriCoreなど高性能のオリジナル・コアで知られているが,2012年にCortex-M4FベースのXMC4000,2013年にCortex-M0ベースのXMC1000を発表して,ARMマイコン市場に参入した.
XMCファミリは,これまで同社が培ってきた高信頼性を特徴として,産業分野からハイエンドの民生分野までカバーするユニークなARMマイコンだ.このうち次世代産業用バスの本命と言われるEtherCAT対応製品を中心に紹介しよう.お話しは,インフィニオンのパワーマネジメント&マルチマーケット事業本部 滝澤 靖明 氏と川上 彰 氏に伺った.
執筆:宮﨑 仁
1.産業用途のユニークなARMマイコン
インフィニオンはマイコン・メーカとして30年以上の経験をもち,車載,産業分野向けの高信頼製品を得意とする.この分野はライフ・サイクルが長く,長期間の安定供給を求められる.これまではオリジナル・コアを中心に製品化してきたが,最近では業界標準のアーキテクチャを求めるユーザの声も多いのだろう.それに応えるのが,Cortex-M4Fコア搭載のXMC 4000とCortex-M0コア搭載のXMC1000だ.
Cortex-Mベースのマイコンは数多く存在するが,XMCファミリは最低15年間の長期供給保証,TA=−40〜125℃の広い動作温度範囲(XMC4xxx-K),TJ=110℃で20年間連続稼動可能な高信頼性,VDDP=1.8〜5.5Vの広い電源電圧範囲(XMC1xxx)など産業分野に最適化しているのが大きな特長だ.さらに,コア仕様や組み合わせるペリフェラルなどによって品種ごとの差別化をはかり,幅広い産業機器,業務用機器,家電/照明機器などの市場に対応している.
インフィニオンでは,XMCファミリの主な市場として,ホーム&プロフェッショナル(家電,照明,電動工具など),ビルディング・オートメーション,パワー&エネルギ(UPS,ソーラ・インバータ,SMPSなど),トランスポーテイション(電動バイク,建機,農機など),ファクトリ・オートメーションの5本柱を想定している.また,マイコンが処理するアプリケーションとしてはモータ制御,照明,電力変換,通信などを想定しているという.
■ XMC1000はモータが使いやすい
Cortex-M0コア搭載のXMC1000は,ローエンドのXMC1100からハイエンドのXMC1400まで4品種をラインナップしている(図1).8〜16ビット・マイコンの置き換えにも適した品種で,コア・クロック(MCLK)の最大動作周波数は32MHz(XMC1100/1200/1300)または48MHz(XMC1400)に抑えられているが,ペリフェラル・クロック(PCLK)はその2倍の周波数で動作,高性能のアプリケーションに対応できる.
図1 XMC1000とXMC4000のラインナップ
特に,XMC1300は除算やsin/cos演算を高速化する専用のMath co-processorを備えており,Cortex-M3クラスのモータ制御演算能力をもつ.モータ1個の制御を小型かつ低コストで実現できるのは大きな特長だ.また,XMC1400はMath co-processorに加えて2チャネルのCAN通信を備えており,産業用途で幅広い応用が可能だろう.
■ XMC4000は2個のモータを同時制御
Cortex-M4Fコア搭載のXMC 4000は,現在のところローエンドのXMC4100からハイエンドのXMC4800まで7品種をラインナップしている(図1).コア・クロック(MCLK)の最大動作周波数は80MHz(XMC4100/4200),120MHz(XMC4400/4500)または144MHz(XMC4300/4700/ 4800)で,モータ2個の同時制御が可能だという.最大6チャネルのCANや,Ethernet,EtherCAT(XMC 4300/4800)など通信機能も充実している.
2.次世代産業用バスの本命,EtherCATを搭載したXMC4300/4800
工場などには数多くの機器があり,それらをネットワーク化して制御/管理するための産業用バス(フィールドバス)が使われている.一言で工場といっても,化学プロセス機器,水処理機器,工作機械,搬送機器,計測機器,制御機器,検査機器などさまざまな機械があり,業種や規模によっても要求はさまざまに異なるため,フィールドバスもさまざまな規格が並立している.その中で,最近ではEthernetをベースにした高速性とリアルタイム性を両立したオープンなフィールドバス規格としてEtherCATの普及が始まっている.たとえば,今年5月にはトヨタ手自動車の工場でEtherCATを全面的に採用が決まった.
XMC4000のハイエンド品種として昨年4月に発表されたXMC4800は,フラッシュ・メモリやアナログ,PHY用クロックをすべて内蔵しているのが大きな特長であり,省スペース設計,BOMコスト(部品構成の原価)削減に大きく貢献する.さらに,今年2月にはより小型,低コストでEtherCATを実現できるXMC 4300が発表された(図2).これによって,EtherCATの普及がさらに進むと考えられる.
図2 XMC4300のブロック図
■ Cortex-Mコア・マイコンでは世界初! EtherCATコントローラ内蔵
これまでEtherCATは,ドイツの制御機器メーカであるBeckhoff社が供給するASICを利用するか,FPGAと汎用マイコンを組み合わせるのが一般的だった.そのため,スレーブ側機器を十分に小型,低コスト化できないという難点があった.XMC4300,XMC 4800には市場実績のあるEtherCATハードIPが搭載されたことで,開発コストも大きく軽減できる.
3.XMCファミリの開発環境
インフィニオンのマイコンは開発環境にも大きな特長があり,本格的なコード・ジェネレータであるDAVEを中核として,EclipseベースのIDE(統合開発環境)やGUIコンパイラ/デバッガ/フラッシュ・ローダを組み合わせている.DAVEは以前からインフィニオンの8/16/32ビット・マイコンで使われており,XMCファミリの登場に合わせてARMマイコンへの対応を果たした.昨年の2月にリリースされたバージョン4が最新版となるが,ローレベル・ドライバのXMCLIBやGUIベースで選択や改良ができるDAVE APPsなどのツールをもち,アプリの開発や再利用を効率よく実現できる.DAVEは,無償で提供されている.
DAVEが生成するソース・コードはGNU,ARM/Keil,IAR,Atollicなどのコンパイラ/IDEにインポートでき,ARMの豊富なエコシステムとの親和性も高く,MATLAB/Simulinkとの連携もできる.
XMC1000のブートキット・シリーズには,超小型で手軽に利用できるXMC 2Go(写真1)も用意されている.XMC 4000では,特長ある機能をもつRelax Kitが多数用意されている.たとえば,EtherCAT対応のXMC 4300はオンボードでEtherCATを使用できるXMC4300 Relax Kit(写真2)が,XMC4800はメイン・ボードとEtherCATモジュールを組み合わせて使用できるXMC4800 Relax Kitが利用できる.
写真1 XMC 2Go Kit(Cort ex-M0/32MHz, 64Kバイト・フラッシュ, 16 KバイトRAM)
写真2 XMC4300 Relax Kit(Cortex-M4/144MHz,EtherCAT ノード内蔵,256Kバイト・フラッシュ,128KバイトSRAM)
読者プレゼント
アンケートにご協力いただいた方に抽選で当たります.
・XMC4300 Relax EtherCAT Kit(写真2)を3名様
・XMC2GO Kit(写真1)を5名様
下記のサイトよりご応募ください.
https://cc.cqpub.co.jp/system/enquete_entry/523/
-- 以上
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インターフェース誌 巻頭企画プロセッサ・メーカにテクノロジ・シリーズの
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この記事に関するお問い合わせ先
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社 http://www.infineon.com/cms/jp/
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