ET2015の見どころを山田実行委員長に聞く

tag:

2015年10月19日

 

IoTは成長分野と組み込みのコア技術をつなぐキー・テクノロジー

 
 一般社団法人 組込みシステム技術協会(JASA)が主催する「Embedded Technology 2015/IoT Technology 2015」が,11月18日(水)~20日(金)にパシフィコ横浜において開催される.今回は,「進化する組込み技術を成長分野へつなぐ」をテーマ
に,組込み技術の総合展示会であるEmbedded Technology 2015と,今回から新設されたIoTでモノとモノをつなぎビッグデータなどを活用する技術の総合展示会IoT 
Technology 2015が同時に開催される.そこで,今回のEmbedded Technology 2015とIoT Technology 2015の見どころについて,ET実行委員会 委員長の山田 敏行氏にお話をうかがった.

 

 
ET実行委員会 委員長
株式会社日新システムズ 執行委役員 インダストリアル・ソリューション事業部長
山田 敏行氏

 

今年から
IoT Technology 2015を新設
―IoTは社会現象になって広がり始めた


Q:昨年のET2014においてもIoTがメイン・テーマでしたが,今年はそれが独立した展示会の開催になりました.その趣旨をお聞かせください.
山田氏:IoT(Internet of Things)は一昨年あたりから技術者の間で話題になりはじめていましたが,今年になるともう誰もが当たり前のように使う一般用語になっています.社会 現象になったといってもよいでしょう.IoTは,あらゆる機器をネットワークでつないでデータをやりとりし,集めた大量のデータを活用しようという考え方 ですが,これは誰にもわかりやすく,使い方しだいでさまざまな可能性のあることが理解されたからだと思います.このIoTを支えるのは,マイコンやセン サ,通信技術といった組込み技術なので,昨年のET2014ではIoTをメイン・テーマにしたわけですが,あくまで組込み技術の中の話題という扱いでし た.しかし,インターネットにつながり,クラウドを活用するようになると,組込み技術だけでなく,基幹システムやクラウド,インターネット技術なども関連 してくるようになります.そうなると,従来は組込み技術にはあまり関心をもたなかった人々も興味を示してくるようになりました.そこで,そういった人々に も興味を持ってご来場いただけるように,Embedded Technology展とは別のIoT単独の展示会を開設することにしました.


昨年の展示会場の様子

Q:それではET展とIoT Technology展の違いはどのようになるのでしょうか.
山田氏:ET展とIoT Technology展は分かれてはいますが,同じ会場内で開催しますので見た目でそんなに違いがあるわけではありません.ただ,出展社様が,IoTに関 する技術を提案したいと考えていたり,またIoTに関心のある来場者にアピールしたいと考えておられればIoT Technology展に出展されることになります.さらに,これまでは組込み技術とは縁がなかった企業様にも興味をもっていただき出展していただけるよ いチャンスになったと考えています.

 

Q:具体的にIoT TechnologyとEmbedded Tech
nologyの関係を教えてください.
山田氏:図1は,IoTと組込み技術により今後発展すると期待されている成長分野を示しています.例えば,食糧問題を解決する「スマートアグリ」,航空機の開発や 宇宙開拓を目指す「航空・宇宙」,ITS通信システムの実用化を進める「交通システム」,介護サービスなどで実用化が進む「ロボティクス」,車の自動運転 を目指す「オートモティブ」,スマートシティやスマートハウスの実用化を進める「スマートエネルギー」,工場内をインターネットで制御する「スマート工 場」,クラウドによるデータ管理や遠隔医療を実現する「デジタルヘルスケア」などですが,IoTはこれらの成長分野と組込みのコア技術をつなぐキーテクノ ロジーになります.図の中心にあるのが従来からの組込み技術ですが,IoTを実現するにはその周りにある「セーフティ」,「セキュリティ」,「クラウ ド」,「品質管理」,「ビッグデータ」,「モバイル&ウェアラブル」,「システムエンジニアリング」といった技術が必要になります.したがって,今回のカ ンファレンスではこれらに関するテーマをたくさん用意しました.ただし,我々の立場はあくまでも組込み技術が中心であり,大規模なネットワーク・システム やクラウドを軸に置くのではなく,組込み技術からIoTを展開していくアプローチを考えています.

 

図1 ET/IoT Technologyコンセプト

 

これからの成長分野に求められる
最先端のテクノロジーを紹介する

Q:基調講演はどこに注目すればよいでしょうか.
山田氏:組込み業界は,マイコンの誕生から始まり,さまざまな半導体やインターフェース技術の進歩を経て,携帯電話やカーナビなどの情報家電の登場,そして現在の あらゆる製品にマイコンが入る組込み機器へと進化してきました.これまでも基調講演は,その進歩の流れに沿ったものをテーマに選んできました.そこで今回 の基調講演は,これから期待される成長分野において,組込み技術やIoT技術をどのように発展させていけばよいかをご理解いただいている方々にご講演をお 願いしました.
 まず18日(水)には,日本自動車工業会の電子安全性分科会会長である川名茂之氏に「自動運転を見据えた車載制御システムの安全基 盤技術動向」と題して,今後の車載制御システムのトレンドを紹介していただきます.19日(木)には,SIP自動走行システムの葛巻清吾氏に「交通事故死 傷者ゼロに向けた自動運転・通信技術」と題して,交通事故を減らすための自動運転に関し,現状の取り組みと技術的課題をお話いただきます.また,IoTに おいてはビッグデータを価値あるデータに換えることが壁といわれています.そこで,株式会社日立製作所の矢野和男氏に「ビッグデータのボトルネックを探 せ」と題して,この壁の現状と乗り越える手段についてお話いただきます.さらに,オムロン株式会社 京阪奈イノベーションセンタ オープンイノベーション担当の竹林一氏(前ドコモ・ヘルスケア株式会社 代表取締役社長)に「エンジニアの目を輝かせる新しい価値創造の仕組み~IoTで何を創り出すか」と題して,IoTが実現可能になった現在,技術者はどの ようにして新しい価値を創造していけばよいかについて考察していただきます.

 

組込みとIoTのニーズに合わせた
講演とセミナー

 

Q:カンファレンスにはどのようなプログラムが用意されていますか.
山田氏:IoTに関しては,招待講演としてマイクロソフト コーポレーションのロドニー・クラーク氏とカール・コーケン氏による「Windows 10 IoT + Microsoft Azure が導くIoTへの近道」,特別講演として東京大学大学院の坂村健氏による「IoTで日本の組込みシステムが変わる」,法政大学の西岡靖之氏による「IoT がもたらす第4次産業革命後の新たな世界~Industry 4.0 に対応した『コト』社会のデザイン」,Rubyの開発者であるまつもとゆきひろ氏による「Rubyと組込み,そしてIoTへ」などを予定していま す.IoT以外の特別講演としては,東京大学大学院の鈴木真二氏による「小型無人航空機が拓く『空の産業革命』」,東京工業大学の実吉敬二氏による「『ぶつからない技術』驚異の性能を発揮する自動車の衝突回避システム~ステレオカメラと立体物認識への応用」,経済産業省情報処理振興課課長の渡邊昇治氏によ る「組込みシステム産業の課題と政策展開」などがあります.
 また,カンファレンスプログラムは,ETテクニカルセッションとIoTテクニカルセッ ションを用意し,それぞれで話題となっているテーマを集めました.パネルセッションでは,19日(木)に「IoT時代に日本は生き残れるか?」,20日 (金)に「どう使う?IoT時代のオープンソース」と題し,IoTの問題点についての検討も行います.出展企業による技術セミナーは,アナログスキルアッ プトラック,設計・検証ツールトラック,EDA-LPBトラック,ハードウェアトラック,プログラマブル・デバイストラック,IoTトラックを用意しまし たので,ご来場者はご自分の興味にあったものを選んで受講いただけると思います.なお,EDA-LPB(Electronic Design Automation-LSI Package Board)については,パビリオンも新設しました.

 

Q:今回からの新たな取り組みとしてはどのようなものがありますか.
山田氏:今回から,「組込みIoTハッカソン」という競技を実施します.ハッカソンとはハッカー・マラソンのことで,日本ではまだなじみがありませんが,海外では すでに頻繁に行われています.ハッカソンは,1999年に開催されたJavaOneが最初だといわれています.与えられた課題を決められた時間内で解決 し,その出来栄えを競うというものです.今回は初めての開催ということで,あらかじめ指名させていただいた参加者に18日(水)の10時頃に課題を発表い たします.そして,20日(金)の会期終了前に審査発表と表彰式を行います.ETロボコンも年を重ねるごとに参加者が増えて盛大になってきましたが,ハッ カソンも将来は誰でも自由に参加できるオープンな競技にしたいと考えています.

 

今年もカンファレンスは
全て無料

Q:新規の来場者に伝えたいことはありますか.
山田氏:初めにお話したように,従来からの組込み
技術にはあまり関心のなかった方々が新設したIoT Technology展には多数ご来場いただけるものと期待しています.IoT Technology展を目的に来られた来場者も,同時開催されるET展をご覧いただいて最先端の組込み技術を知っていただければ,必ず新しい視点が開け てくるはずです.また,ET展/IoT Technology展の大きな特色は,豊富で充実したカンファレンスを無料で受講できることです.今年もカンファレンスをすべて無料で受講することがで きます.是非とも,Embedded Technology 2015/IoT Technology 2015にご来場いただいて,最新の製品に触れてください.さらに,様々なカンファレンスに参加して新たな情報と知識を持ち帰っていただき,新しい成長分 野に挑戦していただきたいと思います.

 


昨年のカンファレンス会場の様子

 

Q:今日はどうもありがとうございました.


>>> カンファレンス事前登録おはこちらから






 

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日