ET2013_ 山田実行委員長インタビュー

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2013年10月23日

 

今年のテーマは「Be Connected with ET」
組込み技術+「つながる」で応用分野が拡大
Embedded Technology 2013の見どころを実行委員長に聞く


  一般社団法人 組込みシステム技術協会(JASA)が主催する「Embedded Technology 2013(以下,ET2013)」が11月20~22日にパシフィコ横浜において開催される.今回のET2013は,「Be Connected with ET」(「組込み技術+「つながる」=応用分野が拡大)をテーマに掲げ,さらに昨年から提唱している新成長分野への掘り下げ方がより深まった.
そこで,今回のET2013の見どころについて,実行委員長の山田 敏行氏にお話をうかがった.

 

 
ET2013実行委員会 実行委員長
横河ディジタルコンピュータ株式会社
山田 敏行氏

 

要素技術単品の時代は終わった「つながる」でシステムに入り込み裾野を広げる

今回のテーマの背景にあるものは
山田氏:この数年,日本の産業全体に訪れている大きな変化なのですが,どんなに優れた技術をもっていても,もう個別製品,個別技術でやっていくのは厳しいということがあります.私ども組込みの業界で言えば,良い部品やモジュールをプロダクトとして供給していればお客様に評価してもらえる,使ってもらえるという時代ではなくなっています.その中で,組込み技術の総力をあげて,一つ上のレイヤーを目指さなければなりません.
 

一つ上のレイヤーというのは...
山田氏:単なる個々の部品ではなく,それらを組み合わせたシステムを強く意識しよう,単なる要素技術ではなく,それらを組み合わせたアプリケーションを強く意識して提供していこうということです.
 

具体的にはどんなことがあるのでしょうか
山田氏:まず,ET2013の基本テーマとして「Be Connected with ET」(「組込み技術+「つながる」=応用分野が拡大)を提唱しています.これまで組込みが個別に提供してきた技術や装置に加えて,IOT(Internet of Things)やM2M(Machine to Machine)などの「つなげる技術」を活用することによって,アプリケーションを高度化したり,今までにない新しいアプリケーションを作ることができます.そこでは,これまであまり組込みになじみのなかった新しいお客様を迎えなければなりませんし,単にプロダクトを売るだけでなく,設計,開発,サービスをトータルで提供していくことが必要です.そこで具体的な取り組みを見せるために,設計開発サービスゾーンを新設しました.
 

展示会場での注目点は
山田氏:展示では,ETテーマゾーン「Be Connected with ET」と,設計開発サービスゾーンの二つを設けて(図1),これらのポイントをアピールしていきます.また,カンファレンスでも2日間にわたって「Be Connected with ET」トラックを開催し,IOTやM2Mなどの「つなげる技術」を紹介していきます.



図1 ETテーマゾーンでは展示のほかに,出展社のミニプレゼンテーションも実施される

 

 

「新成長産業の応用6分野」の講演も増強


それ以外のテーマは
山田氏:スマートエネルギー,モバイル/クラウド,スマートヘルスケア,オートモティブ/交通システム,ロボティクス,スマートアグリという「新成長産業の応用6分野」にフォーカスし,これらのアプリケーションの実現に向けた解決手段を提案していきます(図2).「応用6分野」は昨年のET2012でもテーマとして打ち出していましたが,初めての試みで物足りないところもありました.今年はここをしっかり押さえていこうということで,新しい試みを行っています.
 

例えば,どんな試みでしょうか
山田氏:カンファレンスの中で特に注目度が高い基調講演では,これまで組込み業界からの情報発信を中心と行ってきたのですが,ET2013ではアプリケーション側であるオートモティブ,スートヘルスケア,スマートエネルギーのメーカの方に講演していただくようにしました.また,スペシャルセッションとして,応用6分野の関連団体の方の講演もお願いしています.さらに,展示会の来場者と出展者の間でより有意義なコミュニケーションを実現するために,ETビズマッチプログラムを新たに導入しました.
 

 



図2 新成長産業の応用6分野

 

新サービスのETビズマッチプログラムとは
山田氏:これまでは,来場者の方に出展者のブース,展示品を見ていただいて,そこで興味をもったら初めて商談に進んでいました.今回新たに導入したシステムは,来場者,出展者がマッチングメンバとしてプロフィールを登録しておき,展示会開催前にメンバ同士がインタラクティブ検索,リコメンドなどの機能を使って互いに役立ちそうな相手を見つけることができます.さらに,事前に商談のアポイントを取ることで,半個室ブースなど専用の施設(図1)を利用できますし,互いに資料などを準備して密度の高いコミュニケーションを実現できます.

 

「応用6分野」それぞれのポイント


「新成長産業の6分野」のそれぞれの現在について,もう少し詳しく教えてください
山田氏:まずスマートアグリですが,地球レベルで見ると人口は爆発的に増え続けていますし,農地面積の拡大は難しくなっています.限られた農地の生産効率を高める食糧問題はきわめて重要な課題で,これまでは主に農地を集約,大規模化するとともに,大型農業機械や灌漑施設によって農業生産力を高めてきました.これからは,それらの機械,施設を少ない人手でより良く稼動させるために,遠隔監視やネットワークの技術で広大な農地の状況を瞬時に把握,管理することが重要になります.いよいよ食糧問題の解決に組込み技術が活躍するときがやってきたと言えるでしょう.
 

ロボティクスについてはいかがでしょう
山田氏:これまでは主に産業用ロボットとして工場や作業現場などで生産の自動化や効率化,人間にとって危険な作業を代替する役割も果たしてきました.それに対して,現在最も注目されているのは,人間の生活を直接サポートするさまざまなサービスロボットです.個々の要素技術であるマイクロコンピュータ,センサ,ソフトウェアなどが進化によって,ロボットが一般の人と直接コミュニケーションして意思を伝え合えるようになったり,どんな状況でも安全性を確保できるようになってきたことが大きいでしょう.
 

オートモティブ/交通システムについては
山田氏:要素技術の進歩による安全性の確保というのは,このオートモティブ/交通システムについても同じことが言えます.というよりも,機能安全や先進安全自動車(ASV)などの技術を通じて,自動車は安全性についての先頭に立っていると言えるでしょう.個別の安全技術はこれまでも少しずつ市販車に搭載が進んできましたが,現在はITSなどインフラとの協調による予防安全も実用化されようとしています.また,他方では省エネ,電動化の方向にも引き続き進化を続けています.これらを踏まえて,トヨタ自動車株式会社に「進化し続ける車載電子システム」というテーマで基調講演をお願いしました.
 

スマートエネルギーについてはいかがですか
山田氏:自動車もそうですし,モバイル/クラウド,ロボティクスなどほとんどの分野で,もちろん省エネは重要なポイントです.このスマートエネルギーの分野では特に,スマートハウスすなわち家作りの省エネや,スマートシティすなわち町作りの省エネにフォーカスしています.大きな省エネの効果をあげるには,大きなシステム,インフラでの省エネを考えていかなければなりませんし,組込み技術としてもそのようなシステム,インフラの構築に貢献していくことが必要です.これらを踏まえて,株式会社村田製作所に「次世代スマートハウス向けエネルギーシステムへのチャレンジ」というテーマで基調講演をお願いしました.
 

モバイル/クラウドについてはいかがでしょう
山田氏:携帯電話,タブレット,パソコンなどの携帯端末が通信,ネットワークを介してつながるという状況はすでに揃っていて,そこから何をするかが重要です.これまで,日本ではモバイル/クラウドの利用はインターネットでのB2C(企業対消費者の商取引)が注目されることが多かったのですが,これからはB2B(企業対企業の商取引)に大きく進んでいくことが必要でしょう.そのためには,通信インフラの高度化やセキュリティが一段と重要になってくると思います.
 

スマートヘルスケアについてはいかがですか
山田氏:患者が在宅で医療サービスを利用できる遠隔医療,ネットワーク医療は,これまでも少しずつ医療現場に取り入れられてきました.今後は,より広い範囲でのシステム,インフラの構築が必要になってきます.特に,日本では高齢化社会に備えて,病気になってから治療するのではなく,病気にしないための予防医療,予防システムが求められています.そのためには,日常生活の中で健康状態をセンシングし,データをクラウドに蓄積して把握,管理する健康監視システムが重要になるでしょう.これらを踏まえて,オムロンヘルスケア株式会社に「生体センシング技術が切り開く次世代スマートヘルスケア」というテーマで基調講演をお願いしました.

 

 


写真 昨年のカンファレンスの様子

 

お客様の先にある課題を知るべき


今年もカンファレンスは全て無料ですか
山田氏:はい,ETの大きな特色として,豊富で充実したカンファレンスを無料で受講できます.今年も150セッション以上のカンファレンスをすべて無料で受講できます.さらにテクニカルセッションを特別に無料にします.また,従来はカンファレンス会場は展示会場と完全に分かれていましたが,今回は展示会場内でもいくつかのカンファレンスを行うので,よりライブ感のあふれるカンファレンスになると思います.また,今回もEDSFair2013と同時開催しますので,ハードウェア設計技術/ツールに関心のあるお客様はぜひご覧いただければと思います.
 

最後に,ご来場者へのメッセージをお願いします
山田氏:最初にお話したように,組込みは部品になってはいけない,より大きなシステム,高度で複雑なシステムに関わっていくことで付加価値を見出していかなければならない時代です.そのためには,私ども組み込み業界も,お客様のニーズや課題をよく知り,アプリケーションに特化し差別化したサービスを提供していくことが重要です.組み込みでは受託設計サービスも提供していますが,ここでもアプリケーションに特化した技術を磨くことによって,お客様に具体的な提案をしていけることを目指しています.このET2013を通じて,お客様との連携を深め,より良いサービスを提供することで,ご来場いだいたお客様に満足していただける展示会にしたいと思います.
 

今日はどうもありがとうございました

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