プロセッサ最新テクノロジ2015 シリーズ3

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2015年9月18日

進化し続けるUSBを徹底サポート

NXPのUSB Type-Cソリューション

 USBは登場以来約20年の歴史をもち,大きな進化を遂げてきた.もともとはパソコンと周辺機器のための比較的低速なシリアル・インターフェースだったが,データレートの高速化,供給電力の増大,周辺機器間の直接接続などによって,広範囲に活用される汎用インターフェースとしての地位を確立してきた.そのUSBにType-Cが追加され,いよいよUSBの新時代の幕が開いたと言える. NXPセミコンダクターズ(以下NXP社)では,USBとType-Cコネクタの先進性に早くから着目し,チップからソフトウェアまで高い技術力でトータルにサポートする体制をいち早く提供している.今回は,来日したNXP社のゼネラルマネージャーであるCooney氏にUSB Type-Cソリューションについてお話をうかがった.

 



 
Grahame Cooney 氏
NXP SemiconductorsSecure InterfacesGeneral Manager

 

1.Type-Cで大きく変わったUSB


● データ転送レートの進化


 USB(Universal Serial Bus)は,もともとはパソコンと周辺機器を接続するための汎用インターフェースとして1996年に作られたものだ.当初のUSB1.0/1.1は12Mbpsと1.5Mbpsの低速レートで,モデム,プリンタ,キーボードなどから普及した.2000年のUSB
2.0では480Mbpsが登場し,CD-ROM,HDDやUSBメモリなどの大容量ストレージ,デジタル・カメラ,無線LANなどのUSBドングルに広く普及した.また,デジタル・カメラとプリンタなど,周辺機器同士を直接接続できるUSB On-the-Goの規格が作られて,パソコン以外の機器にも普及していった.2008年のUSB3.0では5Gbpsが登場し,ストレージの大容量化や高速化への対応,ビデオ画像の転送が可能になった.最新規格のUSB3.1では10Gbpsに進化している.


● 電源供給という役割が拡大
 USB1.0/1.1/2.0では最大500mA,USB3.0では最大900mAの5V電源を供給する能力をもち,マウス,USBメモリなど外部電源不要の周辺機器を簡単に実現できた.USB規格の本来の想定からは外れるが,充電器などUSBをダイレクトな給電に利用するアクセサリ機器が次々に登場した.
 特に,携帯電話機ではバッテリ充電の標準コネクタとしてMicro USBが採用され,充電器の共用化も可能になった.それに対応して,充電電流を1.5Aに拡張可能なUSB Battery Charging(USB BC)規格が作られた.さらに,USBをより広範囲の機器の電源として利用可能なUSB Power Delivery(USP PD)規格も作られて,最大で100W(20V/5A)の電源供給が可能になった.このように,USBはデータ転送と電源供給の両面で大きな進化を遂げてきた(表1)

 


表1 USBのデータレートと供給電力の進化


● 規格を一本化し,相互認証に重点


 一方で,USBは後方互換性を重視し,低速なデバイスやケーブルと共存してきた.それは大きな利点だが,使いにくくなったのは否定できない.
 特に,コネクタとケーブルについては,サイズの違い(Standard/Mini/Micro),ホストとデバイスの機能の違い(A/B/AB),バージョンの違い(1.1/2.0,3.0/
3.1)で使い分けが必要だ.さらに,一般ユーザには電力供給能力の違いはきわめて分かりにくい.また,コネクタの表裏の向きが分かりにくいなどがある.
 これらの問題を解消するために,USB3.1で新しいType-Cコネクタが規格化された.その特徴は,(1)サイズや形状を1種類に統一,(2)ホスト(パソコン)側とデバイス(周辺機器)側で同じコネクタを使用,コネクタの裏表をなくした,(3)ホスト/デバイスの機能やケーブルの電流容量を自動的に相互認証できるなどである.従来は,これらの問題を物理的な形状の違いで解決していた.USB Type-Cは,インテリジェントな相互認証が必要な新時代のインターフェースと言える.

 

2.NXP社が提供するトータルなUSB Type-Cソリューション


 USB Type-C は,1個の小型コネクタにデータ,ビデオ,パワー伝送を統合した高度なコネクタだ.データレートは最大10Gbps,供給電力は標準15Wと大きく,アナログ・オーディオ信号やDisplayPortなどのビデオ信号も収容できる.さらに,e-Markerを内蔵したUSB Type-Cケーブルを使えば,同じコネクタを使ってより高速なデータレートに対応可能で,供給電力は最大100Wとなり,大容量電源にも対応できる.


● 接続相手をしっかり認証する能力が必要


 Type-Cコネクタはホスト側とデバイス側の区別がなく,接続の自由度が高い.USB PDでは,デバイス側からホスト側への電源供給(ロール・スワップ)が可能になったり,供給電圧と供給電流の選択範囲が広がるなど,接続相手の確実な認証が必要になっている.さらに,ケーブル自体も対応するデータレートや供給電力を満たしているかどうかの認証が必要になってきた.
 USB Type-Cを機器に実装するには,アナログ,ロジック,マイコンからソフトウェア,認証技術にわたる幅広い技術力が必要だが,それらをすべて持っているセット・メーカは少ないだろう.


● 総合メーカならではのソリューション


 そこで,NXP社では,Type-Cコネクタに必要となる数々の機能を,チップやソフトウェアとしてセット・メーカ向けに提供している.
 たとえば,図1のようにフルスペックのUSB Type-Cを実現するには,USB PDの物理層プロトコルを実行するPD PHYや電力供給を安全にオン/オフし,保護機能を提供するロード・スイッチ,5〜10Gbpsの高速データ転送を制御する高性能スイッチやシグナル・コンディショナ,静電気などからシステムを保護するI/Fプロテクタなどが必要だが,すべてNXP社から供給可能だ.

 


図1 USB Type-Cコネクタシステム・ソリューション


 さらに,NXP社はセキュリティ技術の強みを活かし,相手機器との認証を行う技術を搭載したデモシステムを提供している(図2).これにより,高電圧を不用意に伝送するなどの事態を避けることが可能だ.
 また機能を省略したりスペックを落としたサブセットのシステムにも柔軟に対応可能だ.たとえば,USB Type-Cコネクタで必要な最小機能のCC(Configuration Channel)ロジックについても,1チップによるシンプルなサポートを提供している.

 


図2 認証実験ができるデモボード


● セキュリティ・コントロールは世界トップ・クラス


 NXP 社はもともと,電子パスポートや交通系IC カードなど超低消費電力でのセキュリティ・コントロール技術では世界トップの実績をもっており,USB Type-Cに最適なセキュリティ・ソリューションを提供できる数少ないメーカーの一つと言える.


● 1本ですべてをまかなう時代がくるかも


 USBはパソコンと周辺機器のインターフェースという枠を大きく超えて,さまざまな組み込み機器の間でさまざまなデータや電力を相互にやりとりできる総合的なインターフェースになっている.Type-Cコネクタが普及すれば,その傾向はさらに強まり,あらゆる機器を1本のUSBケーブルだけで接続できる時代がやってくるかもしれない(図3).NXP社ではそのような将来を見据えて,USB Type-Cのトータルなサポートを進めていくという.



図3 USB Type-Cエコシステム&ソリューション


 

 ------------ 第3話 終了 ------------

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