自動化ツールと情報技術の変革が大規模ソフトウェアの開発を支える ―― MATLAB EXPO 2013 Japan

福田 昭

tag: 組み込み 半導体

レポート 2013年11月 8日

●車載向けECUソフトウェアの品質をコード解析で高める

 午後の技術講演トラックを粗く分類すると,MathWorksによる講演と,ユーザ企業による講演に分かれている.ユーザ企業による講演の中でも,アルプス電気による,ソフトウェア品質を効率良く改善する取り組みが非常に興味深かったので,概要を紹介する.

 具体的には,アルプス電気 技術本部M3技術部第2Gの宇治川 尚悟氏が,「車載向けECUのコード解析とモデルベース開発への取り組み」と題して講演した.

 自動車には,様々な電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)が搭載されている.アルプス電気では主に,ボディ制御系ECUとインフォテインメント系ECUを開発しているという(写真5).自動車エレクトロニクスの世界ではよく知られていることだが,自動車1台が搭載するECUの数量とソフトウェアの平均的な規模は,年ごとに増加している.このため,ソフトウェアの開発コストと検証コストを抑制しつつ,品質を維持することが年ごとに厳しくなってきた.

 

写真5 アルプス電気における自動車エレクトロニクス市場への取り組み

 

 そこでアルプス電気では,技術者有志によるコード解析の作業グループ(コード解析WG)を2008年11月に立ち上げ,継続的な活動を積み重ねてきた.設計者チームとは別にコード解析のWGを設けることで,設計者によるソフトウェア検証の負荷を軽減するとともに,ソフトウェアの品質を高い水準に維持することが目的である(写真6).具体的には,検証ツールの利用による検証作業の削減,顧客の要求水準に応じた開発プロジェクトのサポート,ソフトウェア品質の可視化などに取り組んできた.

 

写真6 コード解析作業グループ(コード解析WG)の目標

 

 コード解析と一口に言っても,様々な項目がある.アルプス電気では,独自開発のツールを含めた複数の解析ツールを用途別に使い分けてきた.なお,MathWorksのツール群の中では「Polyspace」をランタイム・エラー(プログラム実行時に発生するエラー)の検出に活用している.

 組織内の役割分担では,各開発プロジェクトを担当する設計チーム,コード解析の専任チーム,コード解析WGが連携することで,成果を挙げてきた(写真7).具体的には,高位設計ではコード解析の専任チームが解析を実行し,低位設計では設計チームがコード解析を実行する.コード解析WGは各プロジェクトにおける改善案を専任チームから吸い上げるとともに,設計チームに対して解析技術の教育を実施する.

 

写真7 組織内におけるコード解析の役割分担

 

 ここでコード解析の専任チームを設けたのは,以下のような利点があるからだとした.まず,解析ノウハウ(解析ツールの活用技術)が蓄積される.それから市販ツールのライセンス数を節約できる.さらには市販ツールの選定基準を一定の水準以上に維持しやすい.そして,設計チームからの改善要求や解析傾向などを分析することで,コード解析WGとともにコード解析技術を改良を円滑に実行できる.

 具体的には例えば,設計レビューのチェック・リストを見直し,コード解析で代用できる項目はチェック項目から外すことにした.その結果,全体の約30%を超えるチェック項目を削減できた.レビュー時間が大きく短縮されるとともに,設計者のスキルに依存しない安定した検証を実行できるようになった.

 

ふくだ・あきら
フリーランス・テクノロジ・ライタ
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