ARMコアの出荷が10年で16倍に成長,コンピューティングの主役はパソコンからモバイルへ ―― ARM Technology Symposium 2012 Japan
●制御機器のCPUでは動作時消費電力の低減が重要
プロセッサに対する熱設計の要求も,制御機器では特有のものがある.まず,使用温度がやや高い.制御盤内部では55℃,制御盤に格納したFA(Factory Automation)機器の内部では85℃が要求仕様となる(図5).プロセッサの発熱(消費電流)を抑えるとともに,pn接合の許容温度を高め,熱抵抗の低いパッケージを採用する必要がある.
図5 制御機器におけるプロセッサの使用温度環境
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また消費電力については,リアルタイム制御を主体とするので,プロセッサの負荷は常に最大状態に近い(図6).このためモバイル機器とは違い,待機時消費電力ではなく,動作時消費電力の低減が主体となる.言い換えると,最大負荷状態と最小負荷状態でARMコアを切り換える「big.LITTLE」のような手法は,リアルタイム制御には適していない.
図6 民生アプリケーション(左)とリアルタイム制御アプリケーション(右)におけるCPU負荷
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午前の全体講演では最後に,プロダクト・キーノート・スピーチとしてARM社(本社)Embedded Processor担当バイス・プレジデントのKeith Clark氏が講演した(写真5).講演では,ローエンドのCortex-M0+コア,機能安全に向けたCortex-R5コア,次世代モバイルやサーバなどに向けたCortex-A57/A53コアを紹介した.
写真5 英国ARM社Embedded Processor担当バイス・プレジデントのKeith Clark氏
●スマートフォンでゴルフのスイングを解析
展示会では,ゴルフのスイングを解析するアプリケーションの展示が興味深かった.STマイクロエレクトロニクスが展示していた(写真6).3次元の動きセンサとAndroidスマートフォン用アプリケーションを組み合わせている.3次元の動きセンサをゴルフのクラブに取り付けて実際にスイングすると,スイングの軌道がスマートフォンの画面に表示される.3次元の動きセンサには,STマイクロエレクトロニクスのCortex-M3コア内蔵マイコンが搭載されている.センサとスマートフォンの間はBluetoothで通信する.
写真6 ゴルフのスイングを解析する3次元動きセンサ
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また,ローエンドのCortex-M0+コアを搭載したNXPセミコンダクターズのマイコン「LPC800シリーズ」も来場者の注目を集めていた.パッケージのピン数を20ピンと少なくして実装面積を削減するとともに,入出力ピンのレイアウト(ピン割り当て)を自由に割り当てられるようにすることで設計の柔軟性を高めた(写真7).電源ピンと接地ピンを除く18ピンを自由にレイアウトできる.レイアウト情報はパソコンで設定し,マイコンのフラッシュROMに書き込む.
写真7 入出力ピンのレイアウトを自由に変更できるマイコン
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ふくだ・あきら
フリーランステクノロジーライター
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