"ぶつからないクルマ"の品質向上は想定・実験・調整の繰り返し ―― ソフトウェア品質シンポジウム 2012(SQiP 2012)(1)
2012年9月12日~14日,東洋大学 白山キャンパス(東京都文京区)にて,「ソフトウェア品質シンポジウム2012(SQiP 2012)」が開催された(写真1).主催は一般財団法人 日本科学技術連盟.招待者や登壇者を含めた参加者数は545人.
写真1 SQiP運営委員会 委員長の野中 誠氏が参加者のプロフィールを紹介
品質管理・品質保証職の参加者の割合が高い.野中氏は,品質を良くしたいと考えるすべての開発者に参加してほしい,と述べた.

本シンポジウムは,ソフトウェア品質に関連する実践的な技術や経験,研究成果の発表と意見交換の場であり,1981年から毎年開催されてきた(ただし2000年は開催なし).当初は「ソフトウェア生産における品質管理シンポジウム」と称していたが,第24回(2005年開催)から「ソフトウェア品質シンポジウム」と改称している.
SQiP(スキップと発音)とは,日本科学技術連盟の下に設置されたソフトウェア品質向上のための推進組織「Software Quality Profession(SQiP)」の名称でもある.この組織は,1980年,品質管理(当時のTQC;Total Quality Control)とソフトウェア工学をうまく融合させてソフトウェアの品質改善を推進するために,「SPC(Software Production Control;ソフトウェア生産管理)研究委員会」として設立された.2007年8月に「ソフトウェア品質委員会(SQiP;Software Quality Profession)」と改称し,ソフトウェア品質を良くしたいと思う人がだれでも参加できるオープンな場として活動している注1.また,Professionという言葉には,ソフトウェア技術職を専門性の高い誇れる職業として位置付けたい,という思いが込められている.
注1:例えば,主にメーリング・リストで交流できる「SQiPコミュニティ」なども運営している.
ソフトウェア品質というと「QCD(品質,コスト,納期)」のバランスがよく言われるが,SQiPでは,顧客の要求を満たすことや組織の問題についても取り扱っている.本シンポジウムは,「派生開発・再利用」,「派生開発・アジャイル」,「レビュー」,「メトリクス」,「リスクマネジメント」,「CMMI・プロセス監査」,「テスト」などと分類されたセッションが用意され,研究発表や事例発表が行われた.また,パネル・セッションや,特定のテーマに興味を持つ人が集まって議論する場「SIG(Special Interest Group)」も設けられていた.
●アイサイト開発担当者,苦節20年を愉快に語る
基調講演として,富士重工業 スバル技術研究所 担当部長の樋渡 穣氏が「スバルの知能化と"ぶつからないクルマ?"アイサイト」と題した講演を行った(写真2).アイサイト(EyeSight)とは,衝突防止や追従走行,誤発進防止などの機能を備えた運転支援システムである.2010年に「新型EyeSight」を発売してヒット商品となったが,基礎研究を含めると約20年の紆余曲折があったという.
写真2 基調講演を行う富士重工業 スバル技術研究所 担当部長の樋渡 穣氏
