週末のAndroid×FPGA勉強会にソフトウェア系の人々が集う ―― 第0回 関西FPGA・DE0勉強会

久保 幸夫

tag: 組み込み 半導体

レポート 2012年1月16日

●残像表示装置などの製作事例やしろうと向けFGPA設計支援ツールなどを紹介

 「(2)DE0-nanoボードとAndroidを繋げちゃう」を発表した@iseroid氏は,FPGAとAndroidをつなぐメリットとして,FPGA側から見るとリッチなUIを実装でき,3GやWi-Fiによる通信機能を追加できる点,逆に,Android側から見ると,スマートフォンではできない多チャネルのI/Oを実現できる点を挙げた.そして,多チャネルのI/Oの活用事例として,Android制御のPOV(Persistent of Vision;残像効果を使用した表示装置)のデモンストレーションを行った(写真4).

 

写真4 DE0-nanoボードを使用したPOV(@iseroid氏が製作)
Androidから制御して動かす.40ピンのGPIOヘッダ1個で微細な表面実装LEDを1列32個並べ,漢字も表示できる.今後,LEDのPWM制御などの改良を構想中だという.

 

 「(5)オープンソースのHDLで画像処理システムを組んじゃう」を発表した@kurihei(栗本 憲一)氏は,オープン・ソース・ハードウェアに関する発表を行った注3.Arduinoなどに代表されるオープン・ソース・ハードウェアの流れが,FPGAのIPコアにまで到来してきていることは興味深い.

注3:同氏は,オープン・ソース・ハードウェアに関する記事をInterface誌 2011年2月号に寄稿している.

 

 また個人的には,大中 庸生氏が発表した「(6)嫁にもできる画像処理スタートアップ」の"嫁にもできる"というキーワードが気になった.これは,初心者(同氏いわく"ずぶのしろうと")の奥さんに,雑誌「ディジタル・デザイン・テクノロジ No.1 FPGA超入門」の付属FPGAボードでシステムを実装させるという,無謀とも思える計画のこぼれ話と,その過程で,煩雑なこと注4は置いておいて,奥さんがやりたいことを実現するために,PTSG(Programmable Timing Sequence Generator)と呼ぶステートマシンを簡単に定義できる環境(要は,ごくシンプルなプロセッサのようなもの)を作ってしまった,というエピソードを披露した.妻子持ちにはいろいろな意味で興味深い講演だった.

注4:奥さんは,付録基板のはんだ付け,回路図,開発環境,HDLなどで苦労していたという.その様子を見て,背景知識のない人でも音楽(DTM)の打ち込みのような感じでFPGAを扱えるようにと考案したのがPTSG(Programmable Timing Sequence Generator)だという.PTSGを使用すると,Altera社の開発環境である「Quartus II」上のIn-System Memory Content Editor機能(メモリの書き換え機能)において, FPGA内に作ったメモリ上のコマンド・テーブルを書き換えるだけで,ステート制御とタイミングをプログラミングできる.なお,これに関するドタバタは,同氏のブログに詳しく記載されている(2010年5月10日の記事「ある公約」以降,「PTSG登場!(その1)」などを参照).

 

 発表の最後に,会場の準備を担当したECCコンピュータ専門学校の吉田 研一(@dietposter)氏が,AndroidとのFPGAを含む各種デバイスとの接続方法のまとめと,日本Androidの会 神戸支部のハードウェアクラブが構想する,これからの方針発表を行った.また,2012年1月28日にも,ADK初心者向けの勉強会「夜子(よこ)まま塾ADK」が同会場にて開催される予定だという.

 最後のわいわい会(懇親会)では,参加者がそれぞれ持参したFPGAボードを机に並べて記念撮影を行った(写真5).

 

写真5 参加者が持参したDE0およびAndroidから制御できる数々のデバイス

 

 最後に,本勉強会を主催した@ksksue(Keisuke SUZUKI)氏に,今回の感想をたずねた.同氏は,「これほど人が集まるとは思いもしなかった.今回はAndroid系やオープン・ソース・ソフトウェア系の人がかなり多い.これまでFPGAはソフトウェア系の人には遠い存在だったが,Androidが風穴を開け,押し広げているように感じる.Androidとハードウェアを連携することに大きな可能性を見出した人たちが,FPGAにも目を向け始めたのではないか.まだ始まったばかりだが,この流れを第1回,第2回と広げていきたい」と熱く語った.

 確かに,ソフトウェア系の人から見ると,FPGAなどのハードウェアの底辺はかなりの壁があり,遠い分野であった.しかし,Androidが突破口となってソフトウェア系の人からも注目されることにより,FPGAなどのハードウェア技術のすそ野が大きく広がり,その応用を期待できる.クラウドにつながるスマートフォンやタブレット,さらに,それにつながるハードウェア・デバイスの連携において,画期的なサービスやソリューションが世に出てきて,停滞気味の世の中に活気を与えてくれることを切に願う.


くぼ・ゆきお@tentenV3

 

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