次世代64ビット対応ISA「ARMv8」や最新コア「Cortex-A7」に注目 ―― ARM TechCon 2011

福田 昭

tag: 組み込み 半導体

レポート 2011年11月 8日

●高性能と低消費を両立させるCPUコア連携

 Cortex-A7コアにはもう一つ,重要な仕掛けが存在する.同じ28nm以降のプロセスで製造するハイエンドのアプリケーションCPUコア「Cortex-A15」とCortex-A7コアの連携機能である(図7).同じSoCにCortex-A7コアとCortex-A15コアを内蔵しているにもかかわらず,ソフトウェアからはあたかも一つのCPUコアが動いているように見せる機能だ(図8).この機能をARM社は「big.LITTLE(ビッグリトル)」と呼んでいる.

 

図7 Cortex-A15コアとCortex-A7コアの連携機能

 

図8 Cortex-A15コアとCortex-A7コアの連携によるエネルギー消費の削減

 

 

 高性能だが消費電力が大きな「ビッグ・コア」と性能はそこそこだが消費電力の小さな「リトル・コア」を組み合わせ,作業負荷に応じてビッグコアとリトルコアを切り換える.例えばスマートフォンの場合,負荷の大きなWebサイト閲覧にはビッグ・コアを使い,負荷の小さなオーディオ再生にはリトル・コアを使う(図9).

 

図9 Cortex-A7コアとCortex-A15コアがそれぞれカバーする性能範囲と消費電力

 

 

 ビッグ・コアとリトル・コアを組み合わせる考え方は古くからあり,それほど珍しくはない.ただし「big.LITTLE」では,実際はマルチコアであるにもかかわらず,OSやアプリケーションなどのソフトウェア側からは,1個のCPUコアが動いているかのようにみえる.この点が従来とは大きく違う.シングル・コアとまったく同じ手法でプログラムを開発できる.

 厳密には,「big.LITTLE」には二つの動作モードがある.「big.LITTLE Switch」と呼ぶ,Cortex-A7コアとCortex-A15コアを切り換えて動かすモードと,「big.LITTLE MP」と呼ぶ,Cortex-A7コアとCortex-A15コアの両方を同時に動かすモードである.

 「big.LITTLE Switch」では,CPUに要求される処理性能が低いときにはCortex-A7コアが動作しており,Cortex-A15コアは動いていない.要求処理性能があるポイントを超えると,Cortex-A15コアが動作を始め,Cortex-A7コアが動作を止める(図9).切り換えに要する時間は条件によって変化するが,20μs(マイクロ秒)以下だという.

 これに対して「big.LITTLE MP」ではCortex-A7コアがずっと動いており,要求処理性能の増減に応じて,Cortex-A15コアを動かしたり止めたりする.この場合は専用ソフトウェア(パッチ)をOSにあてる必要がある.ARM社は2012年の初めには,Linux用のパッチを供給する予定だとしていた.

 

ふくだ・あきら
フリーランステクノロジーライター
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