ゲーム業界で培った技術を組み込みシステムに応用する―― 「ET アワード2011」受賞企業インタビュー(4) CRI・ミドルウェア

Tech Village編集部

ET アワード2011 ソフトウェア分野の優秀賞は,CRI・ミドルウェアの「省回路型高音声品質サウンド出力ミドルウェア」だった.マイコンとFETだけでクリアな音声出力を実現するミドルウェアについて,同社営業部 組み込み分野 担当部長の石黒 哲夫氏(写真1)に話をうかがった.

写真1 CRI・ミドルウェア 営業部 組み込み分野 担当部長の石黒 哲夫氏

 

―― 受賞された製品の概要を教えてください

石黒氏:ソフトウェア分野の優秀賞を受けた,省回路型高音声品質サウンド出力ミドルウェアは,「D-Amp Driver(ダンプドライバー)」という製品になります.このミドルウェアは, PCM(Pulse Code Modulation)音源に対して汎用マイコンのパルス出力と1個の FET(Field Effect Transistor)だけでクリアな音声出力を再現します(図1).マイコンは,8ビット/8MHzクラスのもので利用できます.また5Vの電圧で3Wの音声出力を実現します.

図1 D-Amp Driverの使用時と未使用時の比較


 

 

―― 受賞されたミドルウェアの特徴をお聞かせください

石黒氏: 一般に,組み込み機器で音を出力する場合,マイコンやD-Aコンバータ,ローパス・フィルタ,A級/B級アンプで回路を組みます. D-Amp Driverを利用するとマイコンとFET(電界効果トランジスタ)のみの,いわゆるブザー回路でこれを実現できます.これにより,ハードウェアのコストを1/10以下に削減できます.また,外付け部品はFETだけなのでICの生産中止などに左右されず,基板の長期利用が可能となります.

 

―― どのような市場を対象としていますか?

石黒氏:アナウンスやガイダンスの音声などを必要とし,低コストで音声再生を実現したい機器に向いていると思います.例えば,白物家電やOA機器,FA機器,産業用機器です.現在,家電メーカやヘルスケア機器メーカ,自動車メーカなどから引き合いがきています.GUIも重要ですが,今後,お年寄りや目の不自由な方のための音声インターフェースも重要になってくると思います.

 

―― なぜ,このようなミドルウェアの開発を思いたったのでしょう?

石黒氏:ご存じの方も多いかと思いますが,弊社は,ゲーム業界でよく知られた会社です.音声圧縮技術を中心とした,ゲーム・サウンド制作ツールの「CRI ADX」を多くのゲーム開発者に利用していただいています.私は,こうしたゲーム用のソフトウェア製品を,組み込み関連企業へ拡販するための営業活動を行っていました.その時にあるお客様から「D-Aコンバータなしで音を出せるようにしてほしい」と依頼を受けました.もともと私はハードウェアが専門だったので,ハードウェアを考えることについては問題ありませんでした.弊社のCTO(Chief Technical Officer)などと相談し,ゲーム機器で培った音声ソフトウェアの技術などを参考にしてD-Amp Driverを約1年半で開発しました.

 併せて,「CRI ADX」の圧縮技術を組み込みマイコン向けに最適化したミドルウェア「かるイイ音」も開発しました.「かるイイ音」は15年以上ゲーム業界できたえられた軽負荷・高音質サウンド再生ミドルウェア「CRI ADX」に搭載されているデコーダ部分を各種組み込みマイコンに最適化したものです.D-Amp Driverと組み合わせて利用します.詳しくは,Interface 12月号,pp.154-161に記事が掲載されています.

 

―― ET アワード2011を受賞して,何か変化はありましたか?

石黒氏:まず,ET アワード2011の9名の審査員に認められたことが大きな実績になると思います.弊社はゲーム業界では知られていますが,組み込み業界では知名度が高いとは言えません.また,D-Amp Driverは新製品なので,実績があまりありませんでした.ET アワード2011受賞製品ということで,ETでは,多くの来場者にブースに立ち寄っていただくことができました.これをきっかけに,組み込み分野のユーザを増やしていきたいと思います.

 

ETアワード2011 審査委員のコメント
デジタル記録された音声を出力する場合に必要とされるローパスフィルタおよびアンプを不要とし,しかも音声の品質を高度に保つ新しい技術を開発したものである.機器の小型化,低コスト化を可能にすることで,音声ガイドの活用が有効な各種医療機器,プリンタ,リモコンなど様々な組込み機器への用途だけでなく,組込み応用製品でない装置などにも音声ガイドを付随させることで利用者品質を向上させるなど組込み技術の拡大といった効果も期待できる.

http://www.jasa.or.jp/et/ET2011/event/etaward.html 

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