こんなに違う? AndroidとiOSの開発流儀

山本 隆一郎

tag: 組み込み Interface

コラム 2011年9月 9日

●審査方法

 iPhone普及の立役者の一つがAppStoreです(図4).開発者にとっては低コストで直接世界中のユーザに販売できる絶好の場です.Androidも同じような機能のAndroidマーケットを持ちます(図5).両者の違いで最たるものが,このマーケットの審査プロセスです.誤解がないように述べると,どちらがいい,悪い,ではなく両者は単純に全く異なるのです.

 

図4 AppStore


図5 Android Market

 

 iPhoneの審査が一つのハードルなのは,つとに有名です.AppStoreに申請したアプリは,Apple独自の審査基準で厳格に審査され,プログラムの品質や目的はもちろん,公序良俗に反しないか,著作権に違反していないかなど,多数のプロセスで審査されます.

 審査自体はAppStoreの品質を保つために必要だと筆者も思います.

 また,iOSはC言語ベースのシステムなので,人手で審査を行わないとバッファ・オーバーフローを悪用した不正なプログラムも配布されてしまいます.システム的にも不正なメモリ・アクセスをしないか,電話帳を盗んでネットに配布するような悪さをしないかといったセキュリティ・チェックは必須です.

 制度としては,これは全く問題ありませんが,プログラマが直面するのは,もっと泥臭い実際の審査手続きです.審査は,基本的に米国のApple本社で行われます.日本語のアプリもフランス語のアプリも,世界中の膨大な数の審査を原則として米国で行っています.そのため,申請から審査までのプロセスは英語で行います.登録サイトも英語なら,審査に関する質疑応答のメールも全て英語です.日本法人のメール・アドレスに質問を送っても,本国に英語で質問してください,とつれない返事が来るだけです.日本語のアプリを提出して,どう見ても日本名のAppleの方から返事が来るときも,なぜか英語で進められます.

 これは英語が大好きな方にとっては絶好の機会ですが,そうでない方にとっては面倒なプロセスです.でも仕方なく,辞書を片手に怪しい英語でメール応答を繰り返すハメになります.筆者もその口です.

 こう書くと何だか難しいという印象を受けるかもしれません.しかし,Appleの対応自体はとても親切です.無数の訳の分からないアプリの審査を多数依頼され,しかも筆者のようなでたらめな英文メールでも,忍耐強く,とても親切に,そして迅速に対応していただけます.これを本当に全て人力で行っているのかと思うと,ただひたすら頭の下がる思いです.

 それに対して,Androidはあまりにも簡単で何もありません.実質,アプリの審査はないと言ってさえよく,開発者サイトからアプリのパッケージをアップロードして,あとは少々の情報をサイト上で入力すれば,早ければ数秒~数分後にストアに出ます.そのプロセスは,まるでYouTubeでビデオをアップロードする感覚です.いかにもGoogleらしいやり方です.

 プログラマはプログラムを作るだけでなく,提供方法も考える時代になりました.その観点からも,提供プロセスを知っておいても損はないでしょう.

※   ※   ※

 ここで誌面が尽きてしまいました.あらためて気付きましたが,iPhoneとAndroidの開発流儀の違いは,意外とたくさんあります.次の機会でも紹介したいと思います.ではまた.


やまもと・りゅういちろう


<筆者プロフィール>
山本 隆一郎.トラスト・テクノロジー代表取締役.iPhoneやAndroidの開発とコンサルティングを行う.最新技術のキャッチアップに抜かりはないが,Twitterはクライアントに居場所がばれるのが嫌なのでやらない主義.ARでスタンド使いになれると信じてKinect Hackの毎日を送る.

(この記事は,『Smartphone World』Volume.1に掲載されました)

 

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日