家庭用風力発電機やiPhone用ワイヤレス充電器などに注目集まる ―― ENEX 2011レポート

福田 昭

tag: 電子回路

レポート 2011年2月10日

●厚さが0.17mmしかないリチウムイオン電池を展示

 エネルギー貯蔵の重要な手段である電池関連では,0.17mmときわめて薄い全固体型リチウム(Li)イオン2次電池が来場者の関心を集めていた.東京エレクトロンデバイスが展示した超薄型電池「THINERGY」である(写真6).開発と製造は,米国の2次電池開発企業であるInfinite Power Solutions社による.

写真6 超薄型電池「THINERGY」のサンプル

 

 THINERGYは,外形寸法がきわめて薄いほか,充放電サイクル数が1万回以上と多い,自己放電比率が1年間で1%以下と小さい,動作温度範囲が-40℃~+85℃と広い,といった特徴を有する.ただし容量は0.1mAh~2.5mAhとかなり少ない.このため,当面は,非接触カードのディスプレイ駆動用電源といった小容量で済む用途を考えている.

 展示ブースでは電池サンプルのほか,無線通信モジュールを展示していた(写真7).無線通信モジュールはプリント基板の片面に振動センサとTHINERGY,もう片面に太陽電池セルのアレイを搭載したもの.太陽電池で発電した電力をTHINERGYに貯蔵し,独立した無線通信ノードとして機能させる.

写真7 「THINERGY」を搭載した無線通信モジュール
裏面には太陽電池セルのアレイを搭載している.

 

●ワイヤレス充電の標準規格「Qi」に準拠したシステムが登場

 エネルギー輸送技術では,ワイヤレス充電の標準規格「Qi(チー)」に準拠したiPhone4用のワイヤレス充電システムを日立マクセルが展示していた(写真8).2011年4月25日に一般消費者向けに販売を始める予定である.本充電システムは,給電用パッドとiPhone4用受電アタッチメントから構成される.給電パッドには,同時に2台の受電機器を載せられる「WP-PD10.BK」と,1台だけを搭載する「WP-PD10S.BK」がある.受電アタッチメント「WP-SL10A.BK」はiPhone4専用であり,同期および充電用のコネクタに取り付けて使う.

写真8 ワイヤレス充電規格「Qi」に準拠したiPhone4用ワイヤレス充電システム

 

 なお,開発と製造には半導体商社のエム・シー・エム・ジャパンが協力した.同社は,ワイヤレス充電技術の開発企業でQi規格の策定を主導した香港のConvenientPower社と,日本国内における総代理店契約を結んでいる.エム・シー・エム・ジャパンは日立マクセルの隣に展示ブースを設け,ワイヤレス充電規格Qiをアピールするとともに,その応用製品である給電パッドやiPhone3GS用受電アタッチメントなどを展示していた(写真9).

写真9 ワイヤレス充電規格「Qi」に準拠したiPhone用充電システム
手前がiPhone用受電アタッチメント,その奥が給電パッド,さらに奥が給電パッドの内部(コイルアレイ).

 

 ConvenientPower社の給電パッドはコイル・アレイ方式と呼ぶ,複数のコイルをアレイ状に並べた給電技術を採用している.単一のコイルを給電に使う従来技術に比べると,給電の位置合わせが非常に簡単になる.なおQi(チー)とは,中国語で「気」を意味する.

 

●家電の省エネルギーの進化を展示で実感

 このほか,家電の省エネルギー性能の進化を具体的に示した展示が興味深かった.資源エネルギー庁エネルギー政策情報コーナーの展示ブースに,家電の代表であるテレビと冷蔵庫が2組(古い家電製品と最新の家電製品)置かれており,その省エネ性能を比較していた.

 古い家電(テレビと冷蔵庫)では1日当たり約0.66kg,年間で約240kgの炭酸ガス排出に相当するエネルギーを消費するのに対し,最新の家電(テレビと冷蔵庫)では,1日当たり約0.33kg,年間で約120kgとなり,炭酸ガス排出量が半分に減ったことをアピールしていた(写真10).

写真10 家電製品の省エネルギー性能の進化
炭酸ガス排出量が240kgから120kgへと半分に減るとアピールしていた.

 

 古い家電製品の例には,シャープの冷蔵庫「SJ-HL40M」(400リットル・タイプ)とパナソニックの29型ブラウン管テレビ「TH-29FB3」を組み合わせた(写真11).最新家電製品の例には,シャープのプラズマクラスター冷蔵庫「SJ-XW44T」(440リットル・タイプ)とパナソニックの32V型デジタル・ハイビジョン液晶テレビ「TH-L32X2」を採用した(写真12).冷蔵庫は容積が広くなり,テレビは表示画面が大きくなったにもかかわらず,最新の家電では消費電力が大きく下がっている.

写真11 省エネ性能比較用の家電製品(旧タイプ)
冷蔵庫はシャープの「SJ-HL40M」,テレビはパナソニックの「TH-29FB3」である.

 

写真12 省エネ性能比較用の家電製品(新タイプ)
冷蔵庫はシャープの「SJ-XW44T」,テレビはパナソニックの「TH-L32X2」である.

 

ふくだ・あきら
フリーランステクノロジーライター
http://d.hatena.ne.jp/affiliate_with/


 

«  1  2
組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日