ARM Forum 2010 Preview --ARM MCU 解説
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2010年10月18日
多彩なIP をARM マイコンに搭載することで差別化を実現.
(株)東芝 セミコンダクター社のARM コアを採用したシリーズには,ARM Cortex(TM)-M3 を搭載したTX03 シリーズ(図1)とARM926EJ-S(TM) を搭載したTX09 シリーズがあります.さらに,TX03 シリーズは3V 電源のTMPM320/330/340/360/390 グループと5V 電源のTMPM370/380 グループに分けられています.ここでは,TX03 シリーズの5V 電源系の「TMPM370 グループ」と「TMPM380 グループ」について解説します.
●TMPM370/380 グループの特長
東芝セミコンダクター社は,従来から自社マイコンを開発してきましたが,高位ビットになるとコアの開発やお客様の開発環境への投資が増えてしまいます.そこで,世の中でデファクトになったARM のコアを当社のマイコン・コアのロードマップに追加しました.ARM コアを採用することでIP の開発やお客様へのサポートに投資をする事で当社としての差別化を図っています.
当社は,多彩なIP を持っており,TX03 シリーズには,用途に応じてベクトルエンジン(VE)や多目的タイマ,シリアル通信のEthernet やCAN,ハードウェア化されたHDMI CEC 制御,独立型RTC(Real-Time Clock),高精度A-D/D-A コンバータ,大容量メモリなど豊富なIP が使用されています.また,TMPM370/380 グループは,5V単一電源で動作するというのも大きな特長です.
AC 電源で動作する家電製品では制御回路に5V 電源が使われて,それを制御するマイコンにも5V 動作が求められています.Cortex-M3 プロセッサで5V 単一動作するマイコンは,現時点で東芝セミコンダクター社だけです.
●モータ制御における省エネを促進する「TMPM370 グループ」
TMPM370 グループは,Cortex-M3 を80MHz で動作させ,ベクトルエンジンを内蔵しモータ制御に向いています.エアコンや冷蔵庫といったモータを使用する製品での電力使用量は増え,省エネを実現するために求められているのが効率的なモータ制御です.モータ制御にはさまざまな手法がある中,ブラシレスDC モータのベクトル制御は,効率的なモータ制御に向いています.
TMPM370 グループは,①ベクトルエンジンの搭載,②2 モータへの対応,③周辺アナログ回路内蔵といった特長により,モータを使用する製品の省エネを促進できます.高い演算能力と高速変換可能なA-Dコンバータを内蔵し,多様化するインバータ家電機器に対応しました.また,ベクトル制御で行われる演算処理の一部をハードウェア化したベクトルエンジンを内蔵し,モータ制御によるソフトウェアの負荷を軽減できます.さらに,ベクトル制御のすべてをハードウェア化してしまうと機能が固定化されてしまうのでソフトウェア部分を残すことで,多様なシステムに適応したモータ制御に対応します.
●主に家電のシステム制御ニーズに応える「TMPM380 グループ」
TMPM380 グループは, Cortex-M3 プロセッサを40MHz で動作させることで,主に家電のシステム制御ニーズに応えます.多目的タイマも内蔵しているので,モータ制御やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)制御にも対応します.応用製品として,炊飯器や電磁調理器などのIH(Induction Heating)ヒータにおけるIGBT 制御,電子レンジのインバータでのIGBT 制御,それらの家電製品のパネル操作などがある.さらに冷蔵庫では,インバータ制御のモータ制御やセンサ入力用のA-D コンバータ,メイン制御のセンサ入力用のAD コンバータやシリアル通信,パネル部のLED ドライバやシリアル通信など幅広く活用できます.さらに,マイコン+ドライバIC による最適な提案を行っています.
図1 TX03 シリーズのグループと主なターゲットアプリケーション
※ ARM,ARM926EJ-S,およびARM Cortex はARM Limited のEU およびその他の国における商標および登録商標です.