ARM Forum 2010 Preview --Key Technology

tag: 組み込み

2010年10月18日

過去最高レベルの高性能,電力効率でモバイル機器,コンシューマ機器,インフラ機器の性能を大幅に高めるARM Cortex-A15

●ARM Cortex-A15 プロセッサを発表

 ARM 社は,2010 年9月9日に過去最高レベルの高性能,電力効率により,現在最新のスマートフォン・プロセッサと同程度の消費電力で,5倍の性能を提供するCortex-A15 プロセッサを発表しました.ワイヤレス基地局,企業向けインフラ製品などにおいて,最新のプロセスとの組合せで最大2.5GHz での動作も可能なCortex-A15 プロセッサは,消費電力や放熱の制限や,コストが削減される中で,効率の良いソリューションを実現します.既にライセンス供与を開始しており,32nm,28nm,そして将来的なプロセス・ルールでの製造を目的としています(図1).

 Cortex-A15 プロセッサは,次世代スマートフォン,タブレットPC,大画面のモバイル・コンピューティング機器,ハイエンドのデジタル・ホーム・エンタテイメント機器から,ワイヤレス基地局,企業向けインフラ製品などのサーバー・アプリケーションまで,多様な新製品の開発を可能にします.

図1 Coretex-A シリーズの相対的な性能

●多様な市場での製品展開を可能

 Cortex-A15 は,MPCore対応で,1~4個のCPU コアを自在に組み合わせできるマルチコア構成となっています.そのため,多様な市場での製品展開を可能とします(図2).
 
 例えばスマートフォンなどの場合,1~2コアで1GHz~1.5GHz で動作し,モバイルPC やデジタル・ホーム・エンタテイメントの場合は,2~4 コアの構成で1GHz~2GHz の処理速度となります.さらに,ホームサーバやWeb2.0 サーバ用途としては,4 コアの構成で1.5GHz~2.5GHz となり高いメデア性能と集中的なストリーミング処理が可能とまります.また,高性能かつ高信頼性が必要なワイヤレス基地局などでは,複数のCortex-A15 クラスタ構成により4~8 コア,さらにそれ以上の構成で,1.5GHz~2.5GHz の速度で,電力効率の高い非対象なマルチプロセッシングが期待できます.

 Cortex-A15 は,OS の仮想化,ソフトエラー・リカバリ,より広いメモリ空間,システム・コヒーレンシに対応する効率的なハードウェア・サポートを追加することにより,ARM Cortex-A シリーズの機能を拡張しています.ARM が20 年以上にわたって蓄積した低消費電力設計の知識と,数々の新しい先進的な高性能テクノロジーが組み合わされたCortex-A15 プロセッサは,コンピュータ業界の高エネルギー効率のロードマップを大きく前進させ多様なアプリケーションの可能性を提供します.

図2 Coretex-A15 のコア数による相対的性能

グラフィックス性能とコストのバランスに優れたARM Maliグラフィックスファミリ

 ARM Mali グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)ファミリは,2D や3D を利用した表現豊かなWeb表示から,高解像度スクリーンでの極めて高度なゲーム・ユーザ・インターフェースまで,あらゆる組み込みグラフィックス・ニーズに対応する,世界最小で幅広いアクセラレーション・ソリューションで構成されています.このトータル・グラフィックス・システムIP ソリューションにより,パートナー各社は多様なコンシューマ機器に対応する高品質かつ最先端グラフィックス製品を短期間で提供することが可能になります.業界標準となるOpenGL ES2.0 やOpenVG1.1 などに常に準拠したソリューションは,モバイルから大型の高品位ディスプレイにも対応し,システムレベル設計により実証されたMali は,製品化期間における「リスク低減」にも貢献します.ARM 社によるシステムレベルIP(バス,キャッシュ,CPU,GPU など)を組み合わせることにより,組み込み機器にとって重要な消費電力,性能,実装面積を実現し,検証済みのソフトウェア・ドライバは,Mali 製品群で互換性を持たせるように並行して開発されています.バス・トラフィックを最小化するよう最適化されたデータ構造とアルゴリズムを装備したタイルベースのレンダラーを実装することにより,GPU として最も電力消費の要因の1 つにあげられるメモリ帯域幅を効率的に使用できることも,低コスト・リスク低減に貢献しています.

ARM 社純正ソフトウェア開発ツール

 組み込みソフトウェアの開発には,「ソフトウェア編集,ビルドおよびデバッグ・ツール」,「デバッグ/トレース・ハードウェア(ICE など)」,「ハードウェア・プラットフォーム」が必要となります.ARM では,ARM プロセッサを使用して開発しているユーザに表1 の純正ソフトウェア開発ツールを用意しています.

表1 の純正ソフトウェア開発ツール

ソフトウェア編集,ビルド及びデバッグ・ツール RealView Development Suite(RVDS)
Development Suite 5(DS-5)
デバッグ/トレース・ハードウェア RealView ICE(RVI)
RealView Trace2(RVT2)
ハードウェア・プラットフォーム(評価ボード)
DSTREAM
VersatileExpress


●ARM 社純正のソフトウェア開発統合環境

 RealView Development Suite(RVDS)はすべてのARM プロセッサに対応したARM 社純正のソフトウェア開発統合環境で,最新バージョンのRVDS 4.1 はスタンダード・エディション,プロフェッショナル・エディションを提供しており,主な違いとして,プロフェッショナル・エディションは,豊富なシミュレータ(モデル)の種類をサポート,NEON ベクターコンパイラのサポート,プロファイラ(解析ツール)をサポートしています.また,RVDS はARM 社オリジナルのコンパイラ, RealView Compilation Tools (RVCT)をバンドルしています.RVCT はARM プロセッサに最適なコンパイラで,パイプラインに適したチューニングができるため,優れたパフォーマンスを実現でき,コンパイルしたコード・サイズを最小限にできます.

●Linux アプリケーションの次世代開発環境

 Development Suite 5(DS-5)はLinux/Android OS 上のアプリケーション開発を効率化するための次世代開発環境で,RVDS が持たないLinux アプリケーションのデバッグやAndroid ネイティブコードの開発環境をご提供しています.また,カーネルからドライバ,アプリケーションまで統一した統合環境で開発することができます.現在,アプリケーションエディション・Linux エディション(2010 年12 月発売予定)を提供しており,主な違いとして,アプリケーションエディションはLinux/Android OS 上のアプリケーション開発,Linux エディションはそれに加えて,カーネルやドライバの開発をサポートしています.そのため,JTAG 経由のデバッグや,トレースも可能となります.

 また,Streamline というパフォーマンスアナライザの機能も備えており,ソフトウェアのホット・スポットを検出することにより,システム全体の性能を解析し,改善することができます.

●ARM 社純正ICE

 RealView ICE(RVI)写真1 はデバッグ用ICE ボックスで,RealView Trace2(RVT2)はトレース・ボックスです,RVDS のデバッガにつなげてデバッグ/トレースが可能です.DSTREAM(写真2)はICE とトレースが一体化した新製品で,RVDS, DS-5 のデバッガにつなげてデバッグ/トレースが可能です.

写真1 RVI/RVT2 の外観 写真2 DSTREAM の外観

●ARM 純正ハードウェア開発環境
 

 Versatile Express ファミリのボードは,SoC(System on a Chip)向けの豊富なプロトタイピング・システムで,エミュレーション・ベースボードやプラットフォーム・ベースボードは, 組み込みアプリケーションに一般的に使用される大容量のメモリと数多くのペリフェラルを備えています. これらのベースボード(マザーボード)にコア・タイルをスタックすることによって,ARM プロセッサの評価が可能です.また,ロジック・タイルをスタックすることによって, カスタムペリフェラルを実装可能です.ユーザ独自のペリフェラルを追加する際に参照できる,サンプルRTL やFPGA ビットファイル等のサンプル・ソフトウェアも付属しています.

 

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