無償ツールで実践する「ハード・ソフト協調検証」(8,最終回) ―― シミュレータやコンパイラの入手方法
無償のSystemVerilog対応シミュレータと無償のFPGA用オンチップ・バス・モデルを用いて,ハードウェア・ソフトウェア協調検証の一手法について解説する連載の最終回である.今回は,本連載記事の中で使用しているHDLシミュレータ「ModelSim AE Starter Edition」や,C言語プログラムのコンパイルに使用できる「MSYS/MinGW」の概要,およびその入手方法などについて説明する.いずれのツールも無償で利用できる.(編集部)
Appendix A さまざまなタイプのライセンスが用意されているModelSim
ModelSim AEは,米国Altera社が提供しているHDLシミュレータです.シミュレータの開発元は米国Mentor Graphics社で,同社のシミュレータ「ModelSim」をAltera社のFPGAユーザ向けに提供しているのがAE(Altera Edition)です.ダウンロードは,以下のWebページから行えます.
最新版のModelSim AEのバーションは6.5bです(2010年1月28日現在).これはMentor社がリリースしているModelSimの最新バージョン(6.5c)とほぼ同じ機能を備えています(図1).
ModelSim AEのうち,ModelSim AE Starter Editionはライセンス・ファイルが不要で(ダウンロード時にユーザ登録が必要),最大1万行までのSystemVerilogのコードをシミュレーションできます.ただし,次の4項目については,残念ながらコンパイル・エラーまたはシミュレーション・エラーになります.
- programブロック
- 制約付きランダム生成(randomize)
- カバレッジ(cover)
- アサーション(SVA:SystemVerilog Assertion)
シミュレータがこうした機能を備えていないのではなく,ライセンスとして使用できないようになっているだけです.従って,これら機能をサポートしているライセンスを持っていれば,コンパイル・エラーやシミュレーション・エラーになることはありません.
有償版のModelSim Altera Editionは945ドル(米国内価格)ですが,ModelSim AE Starter Editionのようなライン数の制限がありません.より高速にシミュレーションしたい場合は,同社のModelSim PE/DE/LE/SEやQuestaSimの利用をお勧めします(共にメンター・グラフィックス・ジャパンから購入可能).これらはModelSim AEとまったく同じ環境で利用できます.
お試しやちょっとした回路への適用については無償のModelSim AE Starter Editionを使用し,適用する回路の規模が大きくなるなど,高速にシミュレーションする必要がある場合はModelSim PE/DE/LE/SE,あるいはQuestaSimを使いましょう.
Appendix B ModelSim AEにはLinux版がある
ModelSim AEにはWindows版だけでなく,Linux版も提供されています.前述の「ModelSim-Altera 6.5bソフトウェア」のページでは,Windows版だけでなくLinux版もダウンロードできます.
サポートしているLinuxは以下の二つで,共に32ビット版のみです.
- Red Hat Enterprise Linux 4 & 5
- SUSE Linux Enterprise 9/10
インストール後は,Windows版と同じGUIで使うことができます.
Linux版を使うメリットは,DPI-CにおけるC言語のプログラムをコンパイルするためのCコンパイラ(GCC)がすぐに使えることです.Windows版の場合は,別途,MSYSとMinGWをインストールする必要があります.