マイコンという名のLSIを知る ―― ディジタル機器に不可欠なデバイスの利点と仕組み

宮崎 仁

2.ハードウェアの構成を知る

●マイコンは超小型のコンピュータ

 マイコンとは,マイクロコンピュータの略称です.超小型のコンピュータであることを示しています.

 最も初期のコンピュータは,真空管を1万本以上も使って,部屋を埋めつくすような巨大な装置として作られました.その後,トランジスタが誕生し,さらにIC,LSIへとエレクトロニクス技術が進化したことで,コンピュータは小型で安価なLSIとして実現できるようになりました.初期のマイコンは性能が低く,コンピュータと呼ぶには非力でしたが,現在は性能が低いものから高いものまで幅広く製品化されています.

 マイコンの中で,コンピュータの中心部分(CPU)だけをLSI化したものは,マイクロプロセッサと呼ばれています.マイクロプロセッサとさまざまな周辺回路,周辺装置を組み合わせることによって,小型で安価なコンピュータ装置を作ることができます.この代表的なものがパソコンです(図3).


図3 マイクロプロセッサとパソコン
パソコンは,さまざまなソフトウェアを取り替えて実行できる.ソフトウェアを実行する部分がCPU.

 

 一方,マイコンはさまざまな機器に組み込まれて,機器自体の動作を制御するために使われています(図4).このような用途を総称して,組み込みと呼んでいます.単にマイコンといえば,こちらを指すことが多いでしょう.


図4 マイクロコントローラと組み込み機器
組み込み機器では,マイコンは機器の制御を行う.ここでは,電気炊飯器の例を示している.専用の制御ソフトウェアがマイクロコントローラに内蔵される.

 

 組み込み用途では,マイコンとはマイクロコントローラの略称ともいわれます.また,コンピュータとしてのひと通りの機能を1個のLSIに収めたマイコンは,「シングルチップ・マイコン」とか「1チップ・マイコン」と呼ばれることもあります.

●三つの基本要素と基本単位

 コンピュータは,CPU(中央処理装置),メモリ(記憶装置),I/O(入出力装置)という三つの基本要素から構成されます(図5).


図5 コンピュータの構成
コンピュータは,CPU(中央処理装置),メモリ(記憶装置),I/O(入出力装置)という三つの基本要素から構成される.

 

 いずれもディジタル回路で,通常は'0'と'1'の2値情報だけを扱うことができます.大部分のマイコンでは,8ビット(1バイト)の2値情報を基本単位として,まとめて扱います.

 コンピュータの3要素のうち,ソフトウェアを実行するための基本的な仕組みをつかさどっているのが,CPUとメモリです.

 CPUとメモリは,コンピュータの内部で自動的に動作しています.このため,動作の様子を見ることも手動で動かすこともできません.しかし,ブラックボックスというわけではなく,その動作の仕組みはデータ・シートやハードウェア・マニュアル,ユーザーズ・マニュアルなどによって,ほぼすべてに渡って公開されています.

●メモリの働き

 メモリと呼ばれるデバイスは世の中にたくさんあります.コンピュータの3要素として考えたメモリは,その中で主記憶(メイン・メモリ)と呼ばれるものです.

 主記憶は,コンピュータが現在実行中のソフトウェアを保持するためのメモリです(図6).CPUは主記憶に置かれた命令を順次取り出して実行します.さらに,主記憶には,命令以外のデータを置くこともできます.マイコンの場合,命令用メモリとデータ用メモリを別の領域に分けているものもあります.


図6 メモリの用途
現在使われている大部分のマイコンは,命令とデータをともにメモリにおいて実行する.これをストアド・プログラム方式という.

 

 ソフトウェアをメモリに書き込んで動作させるやり方を,ストアド・プログラム方式と呼びます.回路や配線を変更せずに簡単にソフトウェアを取り替えられるので,ソフトウェアをハードウェアから分離して扱うことが可能になりました.そのかわり,この方式はメモリの容量や応答速度がコンピュータの性能に大きく影響します.

 主記憶以外のメモリに置かれているソフトウェアは,その場で実行することはできません.実行する前に必ず主記憶に転送することが必要です.

 主記憶には8ビット単位の小部屋(記憶場所)がたくさん作られており,各部屋には0番地から順次アドレス(番地)が付けられます(図7).


図7 メモリの構成
アドレスを指定してい,8ビット(1バイト)単位でデータを読み出したり,書き込んだりできる.2番地分(16ビット)や4番地分(32ビット)をまとめて読み書きできるように構成することも多い.

 

 実行したいソフトウェアを主記憶に書き込んでおけば,CPUはこのアドレスに従って順次命令を取り出して実行します.また,マイコンの命令は,このアドレスを直接指定して主記憶にデータを書き込んだり,主記憶からCPUにデータを読み出したりします.

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