Androidに対応した開発ツールやミドルウェア,ブート・ソフトウェアなどが続々 ―― Embedded Technology 2009レポート

北村 俊之

tag: 組み込み 半導体

レポート 2009年11月24日

 2009年11月18日~20日の3日間,「未来へのイノベーション 最先端組込みテクノロジーの世界」をテーマに組み込み技術の総合展示会「Embedded Technology(ET) 2009」がパシフィコ横浜(横浜市西区)にて開催された(写真1).ETと名称を変更してから今回で8回目を迎える本展示会は,新規に出展する企業50社を含む,384社・団体/724小間の規模で開催された.主催は社団法人 組込みシステム技術協会(JASA).

 併催イベントとして,「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト(ETロボコン)」のチャンピオンシップ大会も実施された.ETの開催初日(18日)に,各地区大会で入賞した40チームによりロボット・カーのタイムを競い合うトライアル・レースが行われた.

 本稿では,来場者の注目が高かったAndroidの動向を中心にレポートする.


写真1 会場受付の様子

 

 

●合い言葉は「Android対応」

 携帯電話機用のOS/ミドルウェア群であるAndroidを搭載したスマートホンは,今後,日本を含む各国の市場で多くの機種の発売が予定されており,その市場規模は拡大すると予想されている.今回の「ET 2009」でもAndoroidに対する来場者の関心は高かったようだ.

 Open Embedded Software Foundation(OESF)という団体は,Androidを組み込みシステムで利用するためのソフトウェア部品の標準化や企業同士の共同開発の推進などに取り組んでいる.OESFには,組み込みシステムの開発会社や半導体メーカなどが参加している.台湾,韓国,中国に支部があり,日本と東アジアの企業の間で情報交換や共同開発などを進めているという.

 OESFのVoIPワーキング・グループに参加しているソフトフロントは,同社のSIP(Session Initiation Protocol)/VoIPソフトウェアをAndroidに移植して搭載したビジネス用の携帯電話を展示した(写真2).キーボードやディスプレイ,タッチ・パネルなどの制御をAndroidで行っている.Androidをベースに開発することにより,電話以外の複雑な機能を容易に実装できた.また,USBやBluetooth,IEEE 802.11(Wi-Fi)など複数のインターフェースに対応するほか,地図サービスや気象情報,メッセージ・サービスなども利用できる.


写真2 ソフトフロントとOESFが共同で開発したビジネス用の携帯電話 

 

 グレープシステムは,Android向け開発環境「iW-Rainbow-G3A-7V」を展示した(写真3).本開発環境では,カーネル以外のほとんどが「Apache v2」ライセンスに対応しており,Android SDK向けのAPIセットやEclipseを使用できる.通信方式は,通信事業者(キャリア)の電話網やIEEE 802.11,Bluetoothなどに対応する.通信の接続状態を常時管理する「Connectivity Manager」を備える.

 Androidは画面上にブラウザがバンドルされたタッチ・パネル向きのユーザ・インターフェースになっており,Googleマップなどのアプリケーションに直接アクセスできる.また,独自の仮想マシン(VM)を利用してJavaアプリケーションを実行できるので,既存の組み込みLinuxの資産を活用しやすいという特徴がある.


写真3 グレープシステムのAndroid向け開発環境「iW-Rainbow-G3A-7V」

 

 キャッツは,Androidに対応したソフトウェア開発ツール「ZIPC for Android(仮称)」を展示した(写真4).本開発ツールは,ソフトウェアの設計フェーズで利用する.状態遷移表を使用して,Android向けのアプリケーション・ソフトウェアの設計をモレやヌケなく行えるという.状態遷移表は仕様書や設計書として扱え,プラットホームが変わっても流用しやすい.作成した状態遷移表からJavaのソース・コードを生成する機能を備えている.これにより,コードと設計書を別々に修正することで生じる工数の増加や,設計書とコードの不一致による品質の劣化を防げる.

 状態遷移表の上でソフトウェアの実行に伴う状態の遷移を強調(ハイライト)表示することにより,アプリケーションのふるまいをグラフィカルに表現できる.これにより,実機の画面では現れないような異常状態のデバッグを効率良く行える.エミュレータや実機と連携動作させる機能も備えている.


写真4 キャッツのソフトウェア開発ツール「ZIPC for Android(仮称)」

 

 ユビキタスは,Androidを約1秒で起動できるブート・ソフトウェア「QuickBoot」のデモンストレーションを紹介した(写真5).従来のハイバネーション方式では,動作イメージをすべてRAM上にコピーした後で動作を再開させるため,起動に時間がかかっていた.今回展示した同社の独自方式では,実行するプログラムを複数に分割し,起動に必要なデータだけを優先的にRAMにコピーすることで,起動時間を短縮している.また,これにより,メモリ・サイズに依存することなく,常に一定の起動時間を維持できるという.


写真5 ユビキタスの「QuickBoot」のデモンストレーション


 

●USB 3.0ホスト・コントローラLSIが登場

 NECエレクトロニクスは,USB 3.0規格と米国Intel社のxHCI(eXtensible Host Controller Interface)規格に準拠するUSBホスト・コントローラLSI「μPD720200」を搭載したリファレンス・ボードを展示した(写真6).このリファレンス・ボードを使って,USB規格ごとの伝送速度の違いを示すデモンストレーションを行った.

 本LSIのシステム・バスはPCIe Gen2規格に準拠している.また,LS(Low-Speed),FS(Full-Speed),HS(High-Speed),SS(Super-Speed)の各規格に対応したUSBポートを2本備える.USB 3.0で新たに追加されたSS規格を利用すると,最大データ転送速度は5Gbps(HSの約10倍)に引き上げることができる.これにより,大容量化したストレージ・メディアのデータ転送の高速化などを実現できるという.また,バスの給電能力の向上が図られており,デバイスに対して1ポート当たり900mAを供給できる.


写真6 NECエレクトロニクスの「μPD720200」を搭載したボード

 

 

●CompactPCI規格のCPUボードと密閉式ラックを展示

 アドバネットは,軍事用途などに向けた3U CompactPCI規格に準拠したCPUボード,およびCPUボードを搭載できる密閉式のラックを展示した(写真7).

 ラックはファンやポンプなどの稼動部を排除し,筐体そのものから放熱することで,内部を適切な動作環境に保つように設計されている.動作温度範囲は-40~+85℃.対応する振動は15Hz~2,000Hz,衝撃は20G.

 CPUボードは,「Intel EP80579」を搭載したRugged仕様の3U Compact PCI CPUボードとなっており,ANSI/VITA30.1-2002規格に準拠する.ラック内のCompact PCIスロットは四つあり,三つのペリフェラル・スロットのうち,二つのスロットはSATA(Serial ATA)接続用のSSDスロットとしても使用できる.


写真7 アドバネットのCPUボードおよびラック
 
 

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