Web2.0,Ajax,リッチ・コンテンツ,クラウド時代の必須技術を学ぶ ―― 『Flash Math & Physics Design』

大野 典宏

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書評 2009年4月24日

Web2.0,Ajax,リッチ・コンテンツ,クラウド時代の必須技術を学ぶ

『Flash Math & Physics Design ――ActionScript 3.0による数学・物理学表現[入門編]』
著者: 古堅 真彦
出版社: ソフトバンク クリエイティブ
ISBN-10: 4797351411
ISBN-13: 978-4797351415
400ページ
発売日: 2008年12月25日
価格: 2,800円(税抜き)
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ちょっと前まではWebサイトをデザインすると言うと,HTMLを書いて,必要ならPerlでCGI(Common Gateway Interface)を作り,時々JavaScriptやアニメーションGIFを作り込むだけでよかったのですが,今ではそうもいきません.Web2.0という名称でWebサービスがリッチかつインタラクティブになり,クラウド・コンピューティングという概念が出てきて,デザインと機能の両方に気をつかわなければならなくなりました.

 今はそのための技術を総称してAjaxと呼んでいます.Ajaxは,元々はJavaScriptとXMLの組み合わせで動的なページを実現できるというメソッドを称する言葉でしたが,今となってはそれだけでは済ませられません.

 PHPによる動的なWebサイト生成,インタラクティブなUI(User Interface)を実現するJavaScript,きれいなレイアウトを実現するためのCSS,データ・ベースに接続するためのSQL,そしてもちろんCGIを実行するためのPerl,Ruby,Pythonなどのスクリプト言語,さらには拡張機能を利用するためのXML,それからエンタープライズ分野では必須となるサーブレットとして使われたり,スモール・サイズのアプリケーションを提供するためのJavaなど,もう複雑きわまりないものになっています.

 そして頭が痛いのは,FlashやSilverlightといったリッチ・インターネット・アプリケーションの台頭です.

 これから,クライアントのプラットホームをOS環境に頼るのではなく,Webブラウザをプラットホームにしようという試みを本当に実現しようとすると,Webブラウザ上で簡単かつ軽量にサービスを実行できる手段が必要になります.ですから,FlashやSilverlightは「必須の技術」となるでしょう.

 実際,Flashで実現されたオンライン・ゲームやアニメーションはWeb上にあふれています.ちょっと凝ったWebサイトだと,Flashのアニメーションやムービーが当たり前という事態にまでなっています.

 さて,そのリッチ・インターネット・アプリケーションを実現する手段としてすでに標準となっているFlashですが,使いこなすためにはActionScriptという記述言語を習得しなければなりません.面倒くさい話ですが,相手は「何かをいちいち命令してやらない限り何もできない」というアホな物体(一般にコンピュータと称する)なので,あきらめてください.

 で,Flashを使ってMADやビックリ画像を作って遊んでいるだけなら問題ないのですが,「見栄えのする,しっかりしたコンテンツ」としてのFlashを作ろうとすると,「当然のごとく」数学や物理の知識が必要になります.好きだとか嫌いだという話ではなく,嫌だとは言えない話なのです.覚悟を決めてください.

 以前にも書きましたが,そもそも「自分はアーティストだから,デザイナだから数学なんて関係ない」と思っている人がいたら,それは「大いなる勘違い」でしかないのです.3次元パースをとれない人が絵を描けるでしょうか.標準の用紙の縦横比が1:ルート2になっており,ふたつに折っても1:ルート2の比率が維持されるため,大きな用紙を折り重ねて製本できることを知らない人が書籍のデザインを行えるでしょうか.黄金律を知らない人が工業デザインをすることは不可能だし,平均律を知らない人が作曲を行うのは不可能なのです(いや,もしかしたら可能かもしれませんが,でも,直感的に理解しているか,まったくの勘違いかのどちらかだろう).

 確かに,いずれ,FlashもWYSIWYG(作成・編集時に最終的なアウトプット・イメージを確認できるようなユーザ・インターフェース)になって便利に作ることが可能になるかもしれません.でも,物体が回転する時にどう見えるか,それが分かっていないと,「不自然かつ不可思議な動きをするアニメーション」としか認識されないでしょう.三角関数の計算は必須なのです.

 まあ,脅かすようなことばかりを書いてしまいましたが,「案ずるより産むが安し」というのは不変の真理です.やってみれば案外と簡単なので逆に驚くでしょう.

 実際,本書では「リアルに見せるアニメーション」の原理を,数式を使うことなく,図面とプログラム例だけで解説しています.しかも,コードをダウンロードすることができるので,自分で試してみて,少しずつ改造してみることで徐々に理解できることでしょう.

 これからはブラウザが標準的なプラットホームになることは間違いありません.そのうち,IDEのような統合開発環境ができるかもしれませんが,今は個別に作り込むしか手段はありません.勇気を持って,試行錯誤を繰り返しながら,徐々に覚えていってみませんか.結果がすぐに見えるので楽しいですよ.


大野 典宏
Project NR
norihiro.oono@gmail.com

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