計測機能と無線通信機能を併せ持つ機器の展示に注目集まる ―― Sensor Expo Japan 2009レポート

北村 俊之

tag: 電子回路 Interface

レポート 2009年4月13日

  センサ技術に関する専門展示会「Sensor Expo Japan 2009」が,2009年4月8日~10日の3日間,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催された(写真1).本イベントは,センサやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems),その応用技術,応用機器,ネットワークについての専門展示会である.産学連携を促進する目的で研究機関の試作品や成果を紹介する「次世代センサフォーラム展示コーナー」や,最新技術を紹介する次世代センサ総合シンポジウム,各種専門技術セミナも企画された.併催は「センサネットワーク技術展(S-NET)」,同時開催は,「JAMA2009 総合検査機器展」「TEST2009 第10回総合試験機器展」,「国際セラミックス総合展2009」.主催はフジサンケイ ビジネスアイ.


[写真1]会場受付の様子

●3点計測法で位置を測定する通信ユニットを展示

 オーエステクノロジーは通信ユニット「OST-ZBT1」を展示した(写真2).米国Texas Instruments社製の位置検出モジュールを搭載しており,RSSI(受信信号強度)の3点計測やリアルタイムな位置検出を行える.位置情報を提供するリファレンス・ノードと,位置を特定するブラインド・ノードが通信を行い,3個以上のノードから電波強度を取得する.ブラインド・ノードに搭載された位置検出モジュールは電波強度を距離情報に変換し,3点計測法で自身のX/Y座標を算出する.

 本通信ユニットを利用したシステムとして,病院や介護施設における"見守り"システム,トンネル坑内などの入出状況管理システムなどがあるという.開発ツールとして,Texas Instruments社の「Smart RF Studio」と「Z-Location Engine」,米国Daintree Networks社の「Sensor Network Analizer」,スウェーデンIAR Systems社の「IAR EW8501」を用意している.


[写真2]右から2番目のボードがオーエステクノロジーの「OST-ZBT1」

●無線機能を備えた温湿度計測システムをデモ

 東電ユークエストは,室内の温度や湿度などを計測し,IEEE 802.15.4無線通信によって情報を転送するシステム「EcoQuest」のデモンストレーションを行った(写真3).無線通信のチャネル設定が行えるので,無線LANとの電波干渉を回避できる.また中継機を置くことで,無線が直接届かない場所でも計測データを収集できる.各計測装置に搭載する無線モジュールは,長期間の電池駆動が可能.例えば温湿度計のために2個の専用リチウム電池を使用し,1分間に1回の頻度で計測と無線通信を行った場合,電池を交換しなくても8年間の連続稼動を実現できるという.

 データ収集装置は,BACnet(Building Automation and Control Networking)プロトコルに対応する.BACnet対応のBEMS(Building Energy Management System;ビル・エネルギ管理システム)であれば,すぐにデータを取得できる.またSCADA装置(データベースおよびモニタリング機能)が付いており,計測データの確認を容易に行える.KDDI通信モジュールを内蔵した通信ボックスの出荷も予定している.これを利用すると,KDDIのau携帯電話ネットワークなどを使用して,遠隔地のサーバに計測データを送信できる.



[写真3]東電ユークエストの「EcoQuest」

●レーザ・ビームの位相差から絶対距離を算出

 サンテストは,レーザ式距離計「LE200シリーズ」を展示した(写真4).本距離計は,非接触で長距離を測定できる一種の光学式センサである.可視赤色のレーザ光源,受光素子,演算・インターフェース用電子回路からなるセンサ本体と,反射板から構成されている.センサは,変調されたレーザ・ビームを出力し,レーザ・ビームは測定対象に取り付けられた反射板で反射する.送受信したレーザ・ビームの位相差から,測定対象までの絶対距離を算出するという.

 測定レンジは,0.2m~125mと0.2m~170mの2種類を用意している.また,長さ200mのレールと台車による検査設備を使用して,1品ごとにレンジ全域の出力をリニアライズしているため,高い精度と信頼性を保持しているという.

 反射板の最大移動速度は10m/sであり,閉ループ位置決め制御アプリケーションとしても利用できる.センサからの出力はSSIで,変換器「PU-10」との組み合わせにより,パラレル出力変換も行える.



[写真4]サンテストの「LE200シリーズ」

●デジカメ機能で熱分布を記録できる赤外線サーモグラフィ

 テストーは,物体から放射される赤外線を検出し,それを電気信号に変換する赤外線サーモグラフィ「testo 880」を展示した(写真5).建物の診断や室内温度チェック,電気設備の保守,製造・研究開発のプロセス・モニタなどに利用できる.

 本サーモグラフィは,わずかな温度差を検知できるため,熱分布を鮮明に可視化できるという.また,標準レンズと望遠レンズを交換することにより,用途ごとに最適な熱画像を得ることができる.搭載されているデジタル・カメラ機能を利用すると,可視画像を記録したり,熱分布と可視画像を同時にモニタに表示することが可能.

 3.5インチ型の液晶パネルを備える.最短焦点距離は10cm.0.1℃以下の温度分解能で熱分布を表示する.長時間測定や連続測定にも対応する.データの保存媒体としてSDメモリ・カードを採用する.基本モデル(880-1)とプロフェッショナル・モデル(880-2/880-3)の2機種を用意した.



[写真5]テストーの「testo 880」

●低消費電力マイコンの開発ツールと評価キットを展示

 アーズは,MSP430に対応したIAR Systems社のソフトウェア開発環境「IAR Embedded Workbench for MSP430」を展示した(写真6).MSP430は,Texas Instruments社の低消費電力マイコンである.
 

 本開発ツールは,IAR C/C++コンパイラ,アセンブラ,リンカ,ライブラリ管理ツール(ライブラリアン),テキスト・エディタ,プロジェクト・マネージャ,C-SPY デバッガから構成される.また,MSP430マイコン用のフラッシュROM/PROMに書き込み可能なコードを生成する.アーズが開発したMSP430評価ボード,専用ACアダプタ,Texas Instruments社製のUSB接続JTAG ICE,サンプル・ソースなどを同梱した「MSP430用評価キット」も用意する.



[写真6]アーズの「IAR Embedded Workbench for MSP430」




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