EMCやノイズ対策でコンデンサやバリスタの高性能化と小型化が進展 ―― EMC JAPAN 2009レポート
●電磁放射雑音を吸収するフィルム
不要な電磁放射雑音を吸収するフィルム・シート「バスタレイド」の開発企業であるNECトーキンは,バスタレイドの応用事例を展示していた(写真7).ノート・パソコンやRFIDタグなどである.例えばノート・パソコンに内蔵した非接触ICカード「Felica」のポート周囲に,バスタレイドを貼り付ける.RFIDタグでは,バスタレイドの使用によって通信距離が伸びることを液晶モニタで説明していた(写真8).
[写真7] ノート・パソコンにバスタレイドを採用した事例
[写真8] バスタレイドによりRFIDタグの通信距離が伸びることを紹介したデモンストレーション
45mmだった通信距離が,バスタレイドの導入によって130mmに伸びた.
さらに,光ディスク装置のピックアップとメイン基板を結ぶフレキシブル・ケーブルにバスタレイドを張り合わせ,バスタレイドが屈曲の繰り返しに耐えることを示していた.またハロゲン・フリー・タイプのバスタレイド「バスタレイドEFW」を参考製品として展示した(写真9).
[写真9] バスタレイドを貼り付けた光ディスク装置の光ピックアップとメイン基板を結ぶフレキシブル・ケーブル
光ピックアップの動きによる,曲げ伸ばしの繰り返しに耐える.
●対策部品の選択手法と使用方法をテーマごとに説明
主に雑音対策部品の選択手法や使用方法などを展示していたのが,太陽誘電である.例題となるテーマを設け,測定セット・アップや液晶ディスプレイなどを使って説明員がソリューションをていねいに説明していた(写真10,11).テーマは例えば「DC-DCコンバータ雑音によるワンセグTVの受信感度劣化問題」,「電源ラインの高周波ノイズ対策」,「そのパスコン0.1μFでいいのですか?」といったもので,機器設計者が興味を引きそうなテーマを考えたことがうかがえて興味深かった.
[写真10] テーマ:「DC-DCコンバータ雑音によるワンセグTVの受信感度劣化問題」
[写真11] テーマ:「電源ラインの高周波ノイズ対策」
●不要な電磁放射の強さを可視化するシステム
このほか,不要な電磁放射の強さを可視化するシステムをノイズ研究所が展示していた.「簡易型電磁界可視化システム」と呼んでいる(写真12).黄色い樹脂製の球体内部にアンテナを収容し,電磁放射の強度を測定する.カメラで黄色い球体を認識し,電磁放射の強度をディスプレイに丸いマークで色を表示する.色の表示は撮影画像に重ねて表示される.電磁放射が強い個所は赤色で示されるので,不要な電磁放射の発生源を探れる.システムの詳細な仕様は決まっていない.具体的な用途や要望などを探るためにシステムを試作して展示した.
[写真12] ノイズ研究所の「簡易型電磁界可視化システム」
黄色い球体(アンテナを内蔵)を右側のカメラで認識し,アンテナで測定した電磁強度(円形の色表示)とカメラの撮影画像を重ねあわせてノート・パソコンの液晶ディスプレイに表示していた.
ふくだ・あきら
テクニカル・ライタ/アナリスト
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