自動車業界に見る組み込みソフト開発効率化の取り組み(5) ―― AUTOSARのメソドロジ
連載第5回目では,仮想機能バス(VFB)上のアプリケーションの動作を確認したシステムについて,実際のECUやネットワーク構成に対応したソフトウェアを生成する手順を示します.
●AUTOSARのメソドロジ概要
AUTOSARでは,仮想機能バスからはじまりECU上で動作するソフトウェアの生成までのメソドロジ(方法論)を定義しています.このメソドロジでは,各フェーズでソフトウェア・コンポーネントや基本ソフトウェア(BSW)のXMLフォーマットのファイルを使用し,最終段階でC言語などの実行形式に変換する方式をとります.
[図1]AUTOSARのメソドロジ概要
図1で示したメソドロジの概要は以下の通りです.
1)システム構成(初期値) | どのソフトウェア・コンポーネントやECU,プロトコルを使うかを記述したXML |

2)システム構成(変更済み) | ECUやシステムの制約に基づいてソフトウェア・コンポーネントを組み合わせ,システムを構成したXML |

3)各ECUに対応する機能の抽出 | 構成したシステムをそれぞれECUに割り当てたXML(使用するECUの数だけ抽出する) |
パラメータなどを設定
4)ECU構成記述 | それぞれのECUの各種パラメータ設定を追加したXML |
RTEを生成し,実行形式にコンパイルする
5)ECU実行形式 | 完成したXMLよりRTE(通常C言語プログラム)を生成し,ソフトウェア・コンポーネントや基本ソフトウェアのソースとともにコンパイルされた実行形式 |
●実際のツール上のデータ・フロー
次に実際のツールで扱うXMLファイルなどを見ていきましょう(図2).
[図2]AUTOSARのツール上のデータ・フロー
1)システム構成 (初期値)
前述のシステム構成は,実際には以下のXMLファイルからなります.
- ソフトウェア・コンポーネント――ソフトウェア・コンポーネント群のXML(ポート,コミュニケーションなどの情報)
- ECU――通常,ECUベンダから提供されるECUリソースのXML(メモリ,ペリフェラル,アクチュエータ,センサがあるかなどの情報)
- システム――システムの制約条件(ECUネットワーク,通信方式など)の
RTEのコントラクト・フェーズでは,ECU記述やシステム記述などをダミーで代用します.