自動車業界に見る組み込みソフト開発効率化の取り組み(5) ―― AUTOSARのメソドロジ

兼平 靖夫

tag: 組み込み

コラム 2009年4月13日



2)システム構成(変更済み)

 1)のファイルからソフトウェア・コンポーネントを組み合わせシステムを構築していきます.出力として,

  • システムの構成記述(変更済み)――実際に使用するシステムを記述したXML
  • 通信マトリックス――ネットワークのXML

が生成されます.通信マトリックスには,使用するネットワーク(例えばCAN,FlexRayなど)のフレームやタイミングなどの情報が記述されています.

3)各ECUに対する機能の抽出
各ECUに対応するソフトウェア・コンポーネントが抽出されていきます.

  • ECU構成――ECUへ機能抽出されたXML
  • ソフトウェア・コンポーネントの実装――実装されたソフトウェア・コンポーネントのXML
  • 基本ソフトウェア・モジュール――各基本ソフトウェアのXML
  • サービス――メモリ管理などのサービスのXML(これも基本ソフトウェアの一種だが,ここでは別のものとして記述)

 ここで初めてAUTOSARの(ソフトウェア)階層アーキテクチャでRTEの下層にある基本ソフトウェア層やサービス層のXMLを入力する必要があります.

 AUTOSARではソフトウェア・コンポーネントをアトミック・ソフトウェア・コンポーネントと呼び,必ず一つのECU上に展開されます.抽出した後はECUの個数分ファイルができますので(図3),これ以降の処理はECUごとに実行する必要があります.

0021auto_005_01_f03.gif 

[図3]AUTOSARの階層ソフトウェアはECUごとに1組づつ生成される

4)ECU構成記述

 ECUのパラメータなどを設定していきます,基本ソフトウェアやECUのベンダが初期値として設定されているパラメータや,OSに与えるパラメータの変更などを行い,各ECUの記述を完成させます.

5)ECU実行形式

 ソフトウェア・コンポーネントと基本ソフトウェアがつながれた完成したXMLからRTEを生成します.この生成されたRTEコードと他のソフトウェア・コンポーネントや基本ソフトウェアのソース・コードなどをコンパイルし,実行形式のファイルを生成し,最終的にECUで実行できるソフトウェアが完成します.

 仮想機能バスに始まり,実際のECUやネットワークごとに機能を分割し,基本ソフトウェアなどの情報を入れて最終的にターゲットのECU上で動作するソフトウェアを生成できることが分かりました.次回はシミュレータやデバッグ・ソフトウェアなどによるソフトウェアの検証や実際のハードウェアを用いた検証について紹介します.

 ECUへの機能抽出を行う際,各ECUにどのソフトウェア・コンポーネントを配置するかは自由であり,これがAUTOSARを利用する上での最大の利点です. 

 

【AUTOSAR用語】
仮想機能バスで動作するためのRTE生成をコントラクト・フェーズと言いましたが,実際に基本ソフトウェアとつながって動作する実動作用のRTEを生成することをRTEのジェネレーション・フェーズと呼びます.

 


かねひら・やすお
ジーンシス・ジャポン代表取締役社長

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