あの事故はなぜ起きたのか!! (4) ―― How to リスク分析

川原 卓也,櫛引 豪

ここでは,製品およびシステムのリスクを定量的に分析する方法について説明する.製品の十分な安全を確保しつつ,いかにして製造コストを抑えるかが,競争に勝つための鍵となるだろう.(編集部)

● リスクの分析はコスト・ダウンにつながる

 皆さんが設計した製品,またはそれを利用したシステムの"リスク分析"はなぜ必要なのでしょうか.安心,安全な製品またはシステムを設計するためでしょうか.機能安全に関する規格の中で,リスク分析を要求しているためでしょうか.どちらも間違いではありません.しかし,リスク分析の最大の効用は,コスト・ダウンの実現です.

 安全な製品を製造することは,メーカにとって当然の責務でしょう.リスクにつながる欠陥は,ユーザの生命だけでなく企業自身の存続をも脅かしかねません.だからといって,絶対安全を掲げて湯水のようにお金を費やしたのでは経営が成り立ちません.少なくとも家電や自動車などコンシューマ向け製品については,安全性と製造コストの両立こそが,メーカにとって他社への優位性を保つ手段となるでしょう.製品の十全な安全を確保しつつ,いかにして製造コストを削減するかが課題となり,必要とされるのが,数値に基づく定量的なリスク分析です.

● 踏切における事故を例にリスクを分析する

 本稿では鉄道の踏切(図1)を例にとってリスク分析の概要を示します(1).踏切事故にもいくつかの種別があります.ここでは,踏切内立ち往生,つまり,落輪やエンストなどのトラブルで自動車が踏切内に停滞して列車と衝突する事故を取り上げます.本来であれば,潜在危険分析に基づいて危険事象に至る事故シナリオをくまなく同定する必要がありますが,ここでは,既にそれが実施されているものと仮定します.このようなトラブルに備えて踏切には,以下のような安全関連系(安全装置)が配置されています(2) (3) (4)

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図1 踏切システムの概要

  • 障害物検知装置;踏切の片側に赤外線発光器を,反対側に受光器を配置して,障害物などで赤外線が遮られると特殊信号発光機を点滅させます.また,ATS(Automatic Train Stop;自動列車停止装置)設置区間内では列車を自動停止させることが可能です.
  • 支障報知装置;手動ボタンを押すことで,特殊信号発光機を点滅させ,また,ATS設置区間内では列車を自動停止させることが可能です.
  • 特殊信号発光機;障害物検知装置または支障報知装置の作動に伴い点滅することで,支障を列車乗務員に報知します.
  • ATS;障害物検知装置または支障報知装置の作動に伴い「踏切(閉そく)区間」内への列車の進入を禁止します.
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