無料だから使えない?違う.オープン・ソースだからこそ実現できるのだ! ―― 『オープンソースでメシが食えるか!?』

大野 典宏

tag: 組み込み Interface

書評 2009年1月30日

無料だから使えない?
 違う.オープン・ソースだからこそ実現できるのだ!

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恒川 裕康著
秀和システム
ISBN-10: 4798021369
ISBN-13: 978-4798021362
235ページ
1,400円(税別)
2008年11月
Amazon.co.jpで購入


 デスクトップ分野においてLinuxが思った以上に普及していないことから,「オープン・ソースってやっぱり使いづらいのかなぁ」というイメージが広がってしまっているかもしれません.しかし,それは誤解だと思います.サーバ用途では大いに使われているし,組み込み用途でも携帯電話やルータ,AV機器などで積極的に使われているのです.

 実際,今,話題のGoogleがリリースしたAndroidもコアはLinuxですし,その上で動くJavaVMやSDKもオープン化される予定です.また,MacintoshのMac-OS Xに使われているMachとFreeBSDももともとはオープン・ソース・ソフトウェアなのです.Mac-OS Xの場合はハードウェアとともにしか販売されていないこと,FreeBSDの場合にはライセンス上,ソース・コードを公開する必要がないこと,そしてGUI部分が独自に開発したものであること,などの理由によって十分商売になっています.

 そして,ボード単位で販売する商品などの場合,オープン・ソース化してユーザに内部情報を公開し,自由に使ってもらうことができます.しかも,ユーザが手に余るという場合にはサポートという形で対価を得るというビジネス・モデルもあり得るのです.

 オープン・ソースが基本的に「無保証」であるということでユーザが採用を尻込みするような場合もあるようです.しかし,Linuxなどの大規模なプロジェクトの場合,世界中の開発者がテストを行い,バグを洗い出して即時に改良が加えられるので,「安定版」と呼ばれるリリースならば安心して使えるというのが実際のところです.このへんのフットワークの軽さはオープン・ソースならではのことでしょう.同じようなことがWebブラウザのFireFoxでも起きています.ソース・コードやAPIが公開されることで,世界中のユーザが便利なプラグインを開発・公開し,徐々にシェアを増やしています.

 つまり,オープン・ソースの性格が誤解されているのが普及を妨げているだけの話であって,オープン・ソース・ソフトウェアを活用することは十分に商売になるのです.

 それは,特定の商品へのポーティングや実装,アプリケーション開発という形式で仕事を受注するという業務だってあり得るでしょう.また,先にも記したように,たとえソース・コードの公開が義務付けられているものであったとしても,改良・改造するには複雑すぎるため,それをサポートすることで対価を得るという業務も考えられるでしょう.さらには,無料の環境で動くアプリケーション・ソフトウェアだからといって,それが無料である必要はないのです.使い勝手が良い便利なアプリケーションを開発して,それを販売しても構わないわけです.このように,無料,無保証ということがビジネスの邪魔にならないような構造を考えればよい話にです.難しく考える必要はありません.

 一時期,「フリー・ソフトウェアが産業を滅ぼす」とまで言われたことがありました.しかし,実際にはどうでしょうか.フリー・ソフトウェアもオープン・ソース・ソフトウェアも,商用ソフトウェアも矛盾することなく共存していますよね.

 だからといって,誤解しないでほしいのは,「どうせ無料で使えるんだから,全部オープン・ソースにしちゃおうぜ!」などという暴論を述べているつもりはないということです.あくまでも「ソフトウェア・パーツは適材適所,オープン・ソースでまかなえて,それで十分に採算が取れる仕組みが考えられるのなら,使っちゃってもいいんじゃない?」ということなのです.その点は,従来の「ソフトウェアには正当な対価を!」という考え方と対立してしまいます.しかし,ここまで膨らんだオープン・ソース・ソフトウェアの世界が既に存在するのです.これを使わないのはあまりにも非効率な話です.これからは柔軟な発想によって,いろいろなソフトウェアを自在に使い分けて行くことが,効率的なシステム開発への道なのではないでしょうか.

 さて,今回紹介するのは,これからオープン・ソース・ソフトウェアを使って製品を開発をしたいと考えている人のために書かれた指南書です.オープン・ソースとは何か,どこから入手するのか,オープン・ソース・コミュニティとかかわって最新の情報を手に入れるにはどうしたらよいのか,そういった「オープン・ソース・ソフトウェアを正しく理解し,ビジネスとして積極的に使い,かかわっていこう」という方々には一読いただきたい内容が一通り書かれています.

 まずは,怖がることなく,面白い世界で楽しくビジネスに取り組んでいきませんか.

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