Androidって何がすごいのか ―― 『Google Android入門』

大野 典宏

tag: 組み込み Interface

書評 2009年1月16日

Androidって何がすごいのか
――全てのモバイル機器が共通化される日

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嶋 是一著
技術評論社
ISBN-10: 4774134627
ISBN-13: 978-4774134628
240ページ
2,280円(税別)
2008年4月
Amazon.co.jpで購入


 「Google携帯」として噂レベルでささやかれていたプロジェクトは,実際にはLinuxをベースにしたオープンなJavaプラットホーム,そしてSDKでした.

 現在,SymbianOS,Windows Mobile,OSX,BREW,Linux+独自のAPIなど,携帯電話のOSに関しては百家争鳴の状態にあります.どれも共通しているのは,SDKの配布に条件を設けることによってアプリケーションの魅力でユーザの関心を引き付け,自らのハードウェア・プラットホームに囲い込もうとしている点でしょうか.

 そこに登場したのが,LiMoとAndroidです.両方ともOSにLinuxを採用し,事実上ユーザによるアプリケーション・プログラムの配布が自由に行えるように配慮されています.ただ,決定的に違うのは,LiMoがミドルウェア・レベルでの取り決めであるのに対し,AndroidはJavaVMやGUIまで含めて決めてSDKを配布しているという点です.また,Googleは,すべての動作環境を,改変に際してソース・コードを公開する必要のないApacheライセンス Ver.2.0で公開すると約束しています.

 つまり,Androidは,携帯電話をはじめとしたモバイル機器をユーザが自由にカスタマイズし,プログラミングし,自分の思い通りにできる可能性を与えてくれるという点で,非常に画期的なプラットホームなのです.

 Googleの開発責任者による,興味深い談話があります.

――Androidは,携帯電話以外にどんなデバイスで使えるのですか?
「限界はありません.このプラットホームは,カーナビからセットトップ・ボックス,ラップトップ・コンピュータ,そしてもちろん携帯電話など,さまざまなデバイスを考慮に入れています.われわれのアライアンス・パートナの一つであるIntelは,Mobile Internet DeviceあるいはMIDと呼ばれる分野のデバイスを持っており,これは携帯電話とパソコンの間のものです.このデバイスは主にインターネットにアクセスするために,大きなディスプレイを持っています」(2007年,アンディ・ルービン氏による談話)

 そして,この談話をそのまま実現するかのように,携帯電話に限らない用途として,低価格のネットブックで昨年の話題をさらったASUSTeK Computer社が,Androidを搭載したEeePCをリリースすると発表しました.

 では,なぜ携帯電話メーカやパソコン・メーカが,他社との差異化が図りにくいAndroidという共通プラットホームへの参入を次々と表明しているのでしょうか.それは,「開発コスト」と「製品開発サイクル」の改善というメリットがあるからです.

 現在,携帯電話の開発費のほとんどがソフトウェアへのものであると言われています.新規のハードウェアを用意するのは,初期投資こそかかりますが,一度設計してしまえば(基板の形を変える必要はあるだろうし,周辺機器へのインターフェースの追加なども必要になるだろうが...)コスト面の問題は大量生産によって解消できます.ただ,年々高度化する携帯電話の機能を継ぎ足してゆく苦労は大変なものになります.

 Androidを採用することで,カーネルはLinuxなのでリコンパイルするだけ,UIやアプリケーションはSDKが用意されています.あとは付け加えたハードウェアを動かすデバイス・ドライバを作るだけで済んでしまうのです.これはメーカにとっても良い話でしょう.

 また,Androidの強みとして,SDKが誰にでも手に入るという点が挙げられます.Javaで開発することにより,携帯電話,パソコン,カーナビなどに好きなアプリケーションを追加できるというわけです.つまり,ユーザにとっては,その機器がAndroidで動いているというだけで自由にカスタマイズできる可能性を手に入れられるわけです.この点が,「差異化が図れない」という指摘以上に,Androidがメーカやユーザを引き付けている魅力なのです.

 さて,これでAndroidが秘めている実力と魅力を分かっていただけたでしょうか.

 そろそろ実際にAndroidを搭載した携帯電話やノート・パソコンが世に出回ってきます.単に人が作ってくれたアプリケーションをダウンロードして使うのも自由なら,SDKを利用して自分で作ってしまうことも自由に行えます.こんなに「やりたい放題」のプラットホーム,面白いオモチャとして使ってみませんか?

 ここで紹介する書籍は,Androidの概略を説明するというだけでなく,SDKの使い方やプログラミングの開発手順を具体的に解説しています.こんな面白くて自由なオモチャを無視することができますか? 絶対に面白いと思いますよ.

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