AUTOSARの階層アーキテクチャの詳細 ―― 自動車業界に見る組み込みソフト開発効率化の取り組み(2)

兼平 靖夫

tag: 組み込み

コラム 2009年1月21日

 連載1回目で説明したように,AUTOSARは階層化されたソフトウェア・アーキテクチャをとっています.具体的には,「アプリケーション層(AUTOSARソフトウェア)」,「ランタイム環境(RTE;Runtime Environment)」,「基本ソフトウェア(BSW)」からなります(図1).これをもう少し詳しく示すと,図2のようになります.今回は,この中身をもう少し詳しく見ていきます.

002_zu1.jpg
[図1] AUTOSARのアーキテクチャ


002_zu2.gif
[図2] AUTOSARのアーキテクチャ(詳細)
(AUTOSAR Technical Overview V2.2.2 R3.1 Rev.001より引用)

●アプリケーションはECUを知る必要がない

 図2の例では,特定のアプリケーションとしてセンサやアクチュエータのアプリケーションなどが接続されています.アプリケーション・コンポーネントは同じAUTOSARランタイム環境(RTE)上に,AUTOSARインターフェース(詳細は後述する)を介して基本ソフトウェアと接続されます.この際に,そのソフトウェアがどのECUで使われるかを意識することなく記述できるのがAUTOSARの利点です.

●サービス層はOS,サービス,通信ソフトからなる

 図1で「基本ソフトウェア」として分類されていた部分は,以下の四つの層によって構成されています.
  • サービス層
  • ECU抽象化層
  • マイクロコントローラ抽象化層(MCAL)
  • 複合デバイス・ドライバ層
 このうち,サービス層はさらに「オペレーティング・システム」,「サービス」,「通信ソフトウェア」から構成されます.それぞれの概要は以下の通りです.
  • オペレーティング・システム:AUTOSARでは特定のオペレーティング・システム(OS)の使用を規定しているわけではありませんが,基本OSとしてOSEK OS(ISO 17356-3)を参照しています.現在使用しているほかのOSも,インターフェースをAUTOSAR準拠にすれば使用することができます.
  • サービス:診断プロトコル,NVRAM,フラッシュ・メモリ,RAM/ROMメモリの管理用基本ソフトウェアからなります.
  • 通信ソフトウェア:LIN, CAN, FlexRayなどの通信フレームワーク,I/Oマネジメント,ネットワーク管理など基本ソフトからなります.
 ECU抽象化層,MCAL,複合デバイス・ドライバ層はそれぞれ独立した基本ソフトウェアです.

●インターフェースは3種類ある

 これまで説明したアプリケーション層と基本ソフトウェアは,それぞれが何種類かのインターフェースで接続されています.特に,AUTOSARランタイム環境につながる部分はすべてインターフェースでつながれています.
 インターフェースには以下の3種類があります.
  • AUTOSARインターフェース:ソフトウェア・コンポーネントの情報をやりとりします.
  • 標準AUTOSARインターフェース:シンタックスやセマンティックがAUTOSARにより標準化されたインターフェースです.特にAUTOSARサービスで使われます.
  • 標準インターフェース:特にソフトウェア・モジュール上で使われるAPI(Application Programming Interface)です.
 次回は,用意された各コンポーネントが,これらのインターフェースを介してどのようにAUTOSARランタイム環境に接続されるのかを見ていきます.
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