チーム「福岡市役所」に聞く,ETロボコンへの意気込み
291チームが参戦する2008年のETロボコンに,ただ一つ,企業チームでも個人チームでもない「特別」カテゴリのチームが存在する.その名はチーム「福岡市役所」.今年が初開催となる九州地区大会への参戦である.参加の経緯と意気込みを,福岡市 経済振興局 産業政策部 産業拠点推進課長の土井 裕幹氏と,チーム「福岡市役所」のメンバに聞いた.
左から,福岡市 経済振興局 産業政策部 産業拠点推進課 情報産業振興係の桑野 裕史氏,麻生情報ビジネス専門学校 組込みシステム科 2年の大川内 雄一氏,同2年の屋形 悠介氏,福岡市 経済振興局 産業政策部 産業拠点推進課 情報産業振興係長の正田 美加氏.
――参加に至った経緯を教えてください.
土井氏:実を言いますと,私の前任者だった情報システム課長が,とある飲み会の席で,九州の組み込みソフトウェア産業を振興しようと活発に活動されている九州大学の福田 晃先生からETロボコンに出るよう誘われたそうです.それで「出ます」と言った後に異動が決まり,私は「出ることになってるから」と引き継がれた,というわけなのです.4月に異動してきた私の席の後ろには,前任者が私費で買った未開封のLEGO MINDSTORMSが置いてありました.
異動前には,前任者のほかにも係長や係員など,多少プログラミングに心得のある人がいたのですが,今回の異動でみんな別の部署に移ってしまい,引き継がれた私たちは「いったいどうすればよいのか?」と思っていました.そんなとき,ETロボコンの九州地区大会 実行委員長であるコアの今村 彰則さんが,「参加したかったけれど申し込みに間に合わなかった学生さんがいるので,一緒にやってみてはどうか」という話を持ってきてくれたのです.それで,麻生情報ビジネス専門学校の屋形さんと大川内さんに参加してもらい,2人に主力として活動してもらうことになりました.
――ETロボコンが九州地区で開催されるのは初めてなのに,34ものチームが集まりましたね.
正田氏:専門学校や大学などの教育機関が多いからでしょうか.また,企業も"組み込み"で盛り上がっていこう,という雰囲気があると思います.
――九州では,行政が組み込み産業の振興にずいぶん積極的だ,という評判を聞きます.
正田氏:九州は「人口は全国の1割あるのに,産業は1割ない」と言われています.なので,行政がバックアップして産業を振興していかなくては,という思いがあります.
福岡市でも,2007年12月に「福岡市組込みソフト開発応援団」を立ち上げました.これは,今後組み込みソフトウェア開発への参入を希望しているソフトウェア開発企業の社員を対象に,C言語やマイコン,ロボットに関する研修を行っています.研修結果によっては,OJT(On the Job Training)受け入れ企業を紹介できる場合もあります.
――屋形さんと大川内さんは,こういうロボコンに参加するのは初めてですか?
屋形氏・大川内氏:初めてです.
――ETロボコンの準備は,どんなふうに進めているのですか?
屋形氏:基本的には毎日,学校が終わってから17時から19,20時くらいまでロボコンに取り組んでいます.活動は6月から始めたのですが,学校として,8月に開催される小中高校生向けのロボコン「WRO九州・山口予選会」の運営も担当しているため,その準備などもあって,作業はあまり進んでいません.今はまず,ライン・トレースのプログラムを作っています.
大川内氏:それから,実物大のコースを作っています.
――やってみて,苦労している点はありますか?
屋形氏:灰色の検知です.センサの値で見ると,黒い領域と白い領域の中間を「灰色」として検知してしまうので,そういう個所ははじくような処理を追加しようと思っています.
――大会での目標を教えてください.
屋形氏・大川内氏:とりあえず,完走したいなぁ,と....
桑野氏:私たちとしては,出てくれるだけで本当にありがたいと思っています.彼らの参加が決まるまでは,「もう無理です,やめましょう」と言っていたので(笑).本番はもちろん,試走会などにも一緒に参加して,彼らを応援しています.
朝顔による「緑のカーテン」が環境への配慮を感じさせる.