組み込み系の人材育成やパートナシップ促進の取り組みをアピール ―― ET West 2008レポート(2)

組み込みネット編集部

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レポート 2008年6月12日

 ここでは,2008年6月5日~6日に開催された「Embedded Technology West(ET West;組込み総合技術展 関西)2008」で展示・紹介されていた製品やサービスについてレポートする.独立行政法人 産業技術総合研究所やNPO法人 国際情報科学協会などが,組み込みシステム開発に関する人材育成やパートナシップ促進の取り組みを紹介した.

●組み込みソフトウェアの検証施設を関西に整備

 産業技術総合研究所は,組み込みソフトウェアの検証試験などを実施する中核施設を関西センター内に整備する(写真1).具体的にはクラスタ・コンピュータなどを置き,組み込みソフトウェアの検証用ツールなどを利用できる環境を企業や研究機関などに提供する.

 これまで同研究所は,関西センター内に設置した「システム検証研究センター」において,形式手法と呼ばれる数理的技法を中心にシステム検証技術の研究を進めてきた.今回の施設整備は,その活動を広げるためのもの.今後は,産学官で連携を取りながら,検証技術の先進的な研究や技術移転を進める計画である.

 合わせて2008年7月から,組み込みソフトウェア技術者を養成するための研修プログラム「組込み適塾」を組込みソフト産業推進会議と共同で実施する.これは,コンピュータ・アーキテクチャ,組み込みソフトウェア設計,テスト,モデル検査など,総合的な知識や技術を備えた人材を育成するためのものである.約2カ月半の期間をかけて,合計26日間の講義を行う.

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[写真1] 産業技術総合研究所のブース
組込み適塾や中核施設についてのパネルを展示していた.

●組み込みソフトの悩み,なんでも受け付けます

 会場内には「組み込みソフトよろず相談所」というパビリオンが設置されていた(写真2).これは,組み込みソフトウェア開発に関する相談をパビリオンで受け付けておき,それに対する回答を連携パートナ企業から後日返すというもの.NPO法人である国際情報科学協会が企画した.今回のパビリオンにおける連携パートナ企業は,NECシステムテクノロジーシリコンソーシアム日本ネストハーテックの4社.

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[写真2] 組み込みソフトよろず相談所の様子
連携パートナ企業が,自社を紹介するプレゼンテーションを行っていた.

 組み込みソフトよろず相談所はもともと本展示会のために企画されたものだったが,本パビリオンが好評だったため,今後も継続して活動していくことを検討している.連携パートナ企業は特に4社に限るわけではなく,さまざまな企業にそれぞれの得意分野を持ち寄って参加してほしいという.

●無償ツールで形式手法VDMを後押し

 CSKシステムズ西日本は,形式手法の一つである「VDM(Vienna Development Method)」についての展示・デモンストレーションを行った(写真3).同社は2005年に,VDMに基づいた開発を支援するツール「VDMTools」の知的所有権を取得し,現在,無償で配布している.同社はVDMの普及・啓蒙を推進しており,2006年1月に設立されたVDM研究会の活動を支援している.

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[写真3] CSKシステムズ西日本のブース
興味深く説明に耳を傾ける人でごったがえしていた.

●直流モータを制御する搬送コントローラを展示

 東洋電機は,工場内の搬送システムなどで使われる省配線型搬送コントローラ「MRC-410」を展示した(写真4).1枚のコントローラで直流モータを四つ制御できる.直流モータは日本国内ではあまり使われていないが,交流モータと比べてコンパクトで出力が大きく,インバータも不要.直流電源を設置する必要はあるが,総合的に見ればコスト低減が期待できるという.

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[写真4] MRC-410のデモンストレーションの様子
本コントローラを使用して,搬送のデモンストレーションを行っていた.物品同士がぶつからないようにセンサで監視しながら,一つのコントローラで四つのモータを制御していた.

●ベクタ・グラフィックス専用回路を組み込んで高速表示

 NECは,組み込み機器向けのグラフィックス専用コントローラIPコア「IWAYAG」のデモンストレーションを行った(写真5).パス生成や座標変換,ラスタライズ,ペイント処理,イメージ・キャッシュなど,ベクタ・グラフィックス映像の処理を本コントローラIPコアで実行できる.CPUの性能に左右されず,滑らかにベクタ・グラフィックスを表示可能.現在,Flashコンテンツへの対応を進めている.

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[写真5] IWAYAGのデモンストレーションの様子
参考出展として,本コントローラを利用したFlashコンテンツの再生を行っていた.

●組み込み機器開発向けのDSP搭載ボード

 ロイノスはDSPボード「ml-C6713Compact」を展示した(写真6).計測装置や画像処理装置などに利用できる.外形寸法は120mm×67mm×20mm.
Texas Instruments社の浮動小数点演算DSP「TMS320C6713-300」やIEEE 1394入出力,160本のディジタルI/O,64MバイトのSDRAM,8MバイトのフラッシュROMを搭載する.さらに,データ用FIFOやDSPとほかのチップの間をインターフェースするためのFPGA「XC2V500」(Xilinx社製)などを搭載する.本DSPボードの機能拡張用基板として,分解能が12ビットまたは14ビット,サンプル速度が250K~600Kサンプル/sのA-D変換ボード,4K×16ビット幅のFIFO搭載ボード,3ポートのIEEE 1394インターフェースを搭載したボードなどを用意する.

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[写真6] ml-C6713Compactの外観

●配線を2層で引き出せるBGAパッケージ

 日本アルテラは,2層基板で配線が可能なBGAパッケージを展示した(写真7).ピン間が0.5mmでピン数が68,100,144,256のBGAパッケージから配線を2層で引き出すことができる.本パッケージを採用しているのがMAXIIZ CPLDファミリの「EPM240Z」や「EPM570Z」などである.会場では,EPM240Z M100(6mm角,0.5mmピッチ,100ピンBGA)を搭載した両面基板を用いて製作したディジタル時計を展示していた.

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[写真7] 配線を2層で引き出した様子

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