生徒が欲しい「物」,製作プロジェクト 第3回 ―― 高輝度LEDを利用した電飾花瓶の製作
生徒が欲しいものを生徒自身に作ってもらうプロジェクト 第3回である.第1回および第2回で利用したLEDは発光のタイミングを制御するICを内蔵しており,3Vの電源をつなぐだけで自動的に7色に発光した.今回は,第2回で紹介した花瓶をいっそう明るく光らせたいという生徒の要望に応えるため,高輝度LEDを利用した.赤,青,緑の各LEDの明るさは,PICマイコンで制御した.(編集部)
前回のLEDイルミネーション付き花瓶の製作で気分の乗った生徒は,もっと明るいLEDを利用して花瓶を飾りたいと言い出しました.そこで,赤,青,緑の高輝度LEDを利用することにしました.
ただし,今回利用するLEDは,今までのように自動では点滅しません.また,駆動電圧も青色LEDや緑色LEDの順電圧が3Vより高いため,今までのように単3乾電池2本では動作しません.この2点を考慮して作ったものが写真1です.
●高輝度LEDの入手先
今回使用した,順電流が35mAと大きい高輝度LED(写真2)の型名は「EP204K-35G1R1B1-CA」(台湾PARA Light Electronics社製)です.名古屋・大須 アメ横ビルのタケイムセンにて,210円で購入しました.同封されている説明書によると,各LEDの駆動に必要な電圧は赤2V,緑3.5V,青3.5Vとあります.
右側はプロジェクトの第1回および第2回で利用した7色に光るLED「OSTB5131A-IC/ID」.
●PICマイコンを利用して点灯順序を制御
LEDを順序よく点滅させる制御回路を,どのように作るべきか迷いました.今回は,マイコン実習の授業で利用しているPICマイコンを利用することにしました.筆者らの学校のマイコン実習では「PIC16F84F」を使っているのですが,発振用素子などの部品点数が増えるので,ここでは「PIC12F629」を利用します.PIC12F629は小型の8ピン・マイコンです.タケイムセンにて200円ほどで購入しました.なお,マイコンの端子が余っていたのでスイッチを接続してありますが,今回は使っていません.
●各LEDの明るさを制御する回路を製作
PICマイコンを利用した明るさ制御回路を図1に示します.各LEDが輝度を変える際に,徐々に変化するように工夫しました.プログラムによって対応できないことはないのでしょうが,ここでは輝度をゆるやかに変える回路,名付けて「ほんわか約1秒回路」をCR充放電回路で実現しています.当初は充放電時間を1秒にするため,抵抗を大きめに設定していましたが,トランジスタのベース電流が少なくなってしまい,動作しませんでした.そこでトランジスタをダーリントン接続にして,直流電流増幅率(hFE)を高くしました.
ここでうれしい誤算が生じました.ダーリントン接続にすると,トランジスタがON状態のとき,コレクタ・エミッタ間電圧VCEが約1.5Vになるのです.LEDの緑と青の順方向電圧が3.5V(25℃)ですから,合わせて約5V,つまり,LEDの電流制限抵抗は必要ありません.抵抗が必要なのは赤のLEDだけです.回路図の通りに製作した基板が写真3です.今回はユニバーサル基板のはんだ面に部品を配置・配線しました.
●PICマイコンのプログラムを作る
あとはプログラム開発だけです.PICマイコンのGP3端子が"H"になったら,GP0~GP2の出力端子に2~3秒間隔でパターン化したデータを出力します.C言語で書く場合,リスト1のようになります.
コンフィグレーションの設定は,FOSC;INTOSC(GP4:I/O),WDTE;Disable,PWRTE;Enable,MCLRE;Internal,BODEN;Enable,CP・CPD;Not_Protectとしました.クロック周波数はPICマイコンの内部RC発振機能を利用しているため,約4MHzです.
Cコンパイラには体験版のmikro C(mikroElektronika社製)を使用し,PICマイコンの書き込みには秋月電子通商のPICライタを使用しました.
●組み立てて動作を確認
製作を担当した生徒から,作品に透明感を持たせたいという希望がでたので,一緒に100円ショップに行き,透明なプラスチック・ケースとガラス製の花瓶を探してきました.花瓶の底にはLEDの配線を通す穴を開けています.また,プラスチック・ケースの穴あけは難しいので,穴の大きさは必要最小限とし,電源コネクタを通せるだけとしました.基板はプラスチック・ケースの底に置くだけとします.
LEDの端子配置は,図2のようになります.記号で「K」と書いてある端子を各トランジスタのエミッタに接続します.また,記号の「A」と書いてある端子は,電源に接続します.LEDの向きを表すマーカは,分かりづらいので注意してください.
写真4は組み上げた電飾花瓶の外観です.下の台には,アルミ板を上ぶたのように加工して,中に基板が収めてあります.ケースの裏側に電源用コネクタとCdSを取り付けました.あとは花瓶の中にビーズを入れ,樹脂製の光ファイバの束を差します.明るいときに見ると,あまり見栄えのしないイルミネーションですが,暗くなって点灯を始めると,写真1のように変化しました.
次回は,「人が近づくと反応するセンサ」を利用し,プロジェクト第1回で紹介したカンテラの省電力化を図ります.お楽しみに.
ケースの裏側に電源用コネクタとCdSが取り付けてある.花瓶の中にビーズを入れ,樹脂製の光ファイバの束を差し込んで撮影したものが写真1.
愛知県立岡崎工業高等学校 情報技術科
栗田淳一