学生設計コンテストで体感型ビデオ・ゲーム「Wih」が優勝! ――無線ネットワーク構築・アプリケーション・コンテスト
2007年2月15日,大阪大学大学院 情報科学研究科(大阪府吹田市山田丘)は,ZigBeeモジュールを用いた無線ネットワーク構築実習の成果を学生が発表する場として,「無線ネットワーク構築・アプリケーション・コンテスト」を開催した(写真1).同研究科の情報ネットワーク学専攻の学生25人が研究室単位で7チームに分かれ,チームごとに発表とデモンストレーションを行った.山岳救助システムや体感型のビデオ・ゲームなど,さまざまなシステムが紹介された.デモンストレーションがうまくいったチームとうまくいかなかったチームがあり,明暗が分かれた(写真2).アイデアや実用性,完成度などの観点で審査が行われた.
本コンテストは,文部科学省が推し進める「魅力ある大学院教育」イニシアティブと呼ばれる人材育成計画の,ソフトウェア・デザイン工学分野のプロジェクトの一つとして行われた.開発環境や無線モジュールなどは,フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンが提供した.
[写真1] 大阪大学大学院 情報科学研究科棟
[写真2] デモンストレーションで四苦八苦する学生たち
●身体を動かして操作できるビデオ・ゲーム「Wih」が優勝
その場で審査が行われ,村上研究室の濱田 和樹氏,森 達哉氏,森田 真之氏による,体感型のビデオ・ゲーム「Wih(Wireless Interface Hockey)」が優勝した(写真3).本ゲームは,ボールを後にそらさないようにはね返し合う対戦型のビデオ・ゲームである(写真4).コントローラとして,ZigBeeモジュールを採用した.2カ所に固定されたルータにおける,コントローラの電波強度からプレーヤの位置を検出する(写真5).実際にゲームをプレイできる完成度が高く評価された.
[写真3] 優勝した森田 真之氏(左),濱田 和樹氏(中央),森 達哉氏(右)
[写真4] Wihのゲーム画面
[写真5] Wihのデモンストレーション(4隅の固定ルータに対するコントローラの位置とゲーム内のプレーヤの位置が対応する)
●土砂崩れをイメージして山岳救助システムのデモに土鍋を使用
東野研究室の池田 和史氏,堺 拓郎氏,村井 渉氏による山岳救助システム「BOW HUMAN」は,アイデアのユニークさなどが評価され,準優勝を獲得した(写真6).本システムは,登山道にアクセス・ポイントを設置し,登山者がアクセス・ポイントを通過すれば安全とみなす.一定時間,どのアクセス・ポイントにも登山者のアクセスがなければ,遭難したと判定する.登山者同士もそれぞれがアクセス・ポイントとなり,すれ違った人の安全を確認できる(写真7).遭難事故を模擬するために土鍋で電波を遮へいするなど,デモンストレーションでもくふうを凝らしていた(写真8).
[写真6] 準優勝の池田 和史氏(左),村井 渉氏(中央),堺 拓郎氏(右)
[写真7] 登山者それぞれがアクセス・ポイントとなれる
[写真8] 登山者が遭難中(土鍋で電波を遮へい)
●苦労はしたが,充実の実習
そのほかには,エレベータの位置特定システムや火災通報システムなどが紹介された(写真9,写真10).直前に徹夜作業を行いコンテストに間に合わせたチームもあり,学生たちは苦労したようだ.実証実験のために,無線機を抱えて校内を歩きまわる学生もいたという.「実習はたいへんだったが,やることが決まっている通常の実習よりも白紙の状態からシステム設計を行う方が面白かった」という意見が多く,充実した実習だったようだ.
[写真9] エレベータの位置特定システムのデモンストレーション,数字がエレベータのある階を表す
[写真10] 火災を模擬して温度センサに使い捨てカイロを当てる