スプーンで動く飛行船が学校にやって来た ――東京都立 大泉高等学校 マジカル・スプーン公開授業

組み込みネット編集部

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レポート 2007年2月22日

 2007年2月14日,東京都立 大泉高等学校(東京都練馬区)にて,コンピュータによる情報処理を理解するための教材「マジカル・スプーン」を使った高校2年生向けの授業が行われた(写真1).高校生が2人1組になってスプーンを叩き,飛行船の操縦に挑戦した.

 マジカル・スプーンとは,金属のスプーンをたたき合わせることによって発生する超音波を入力信号とし,信号の組み合わせによって無線で飛行船を操縦する教材および教育プログラムである.実機の飛行船のほか,パソコンの画面上で入力された命令を表示するシミュレータも用意されている.本教育プログラムは,情報教育の充実を推進している学会「教育システム情報学会」と,組み込みソフトウェアの人材育成を図るNPO法人「組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会(SESSAME)」が共同で運営している.

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[写真1] 公開された授業の様子
東京都立 大泉高等学校(東京都練馬区)で開催された.

●思い通りにならない楽しさ?! 40人が授業に集中

 マジカル・スプーンを使った授業は,「情報を符号化してコンピュータに伝える」ことを学ぶ実習(3時間相当)として行われた.この日の授業は,実習の3時間目に相当する.1時間目は飛行船の動作の理解や必要な命令,命令への符号の割り当て(エンコード)を学習した.2時間目はシミュレータを使い,操作を体験するとともに,符号の割り当て方式の改良を検討した.3時間目は,学生が2人1組になり,スプーンによる飛行船の操縦を試みた.

 授業では,まず教員が飛行船の実機を見せながら動きと操縦コースを説明した.取り扱い上の注意を与えた後,グループごとに飛行船の操縦に挑戦させた(写真2).最初のグループが信号を入力し,飛行船が上昇すると,学生の間から「おおーっ」と歓声が上がった.飛行船は本体が軽いため,慣性が強く働く.また,空調などによるわずかな風の影響も受ける.そのため,なかなか思い通りに操縦できないようだった.飛行船がゴールに近づくと,見ている生徒からも賛嘆の声が上がり,1クラスの生徒40人が飛行船に集中していた(写真3)

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[写真2] スプーンを叩いて飛行船に信号を送る
信号を入力するためのスプーンの叩き方にもこつが必要で,口で「うん,ぱっ」などと確認しながら叩く,連打するなど,それぞれの工夫が見られた.

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[写真3] シミュレータで入力の練習を行う学生たち
次に操縦するチームが,廊下に設置されたシミュレータで練習していた.「手をたたいたほうがうまく入るかも?」,「こういうふうにしたほうが入りやすいらしいよ?」といった会話が交わされていた.

 授業を担当した大泉高等学校 情報科教諭の田崎丈晴氏は,コンピュータの動作原理について理解を深めるという授業のねらいのほか,「好奇心の目で飛行船を見てほしい」という思いを抱いている.平成15年度から高等学校の教育カリキュラムに組み入れられた「情報」の授業は,現在のところ受験勉強には関係のない科目として軽視されがちだという.また,「何を教えればよいのか分からない」という教員も多いようだ.田崎氏は,実習(体験的な学習)を取り入れることによって学生の興味を呼び起こしたいと考えている.「学生は,エレクトロニクス分野や情報分野に関心がないのではない.ただ,知らないだけだ.これらに接する機会を与えて,興味を持つ学生を発掘したい」(田崎氏).


<ミニ・インタビュー> 情報教育の現場から

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田崎丈晴氏
東京都立 大泉高等学校 情報科教諭
かに座,B型
学生時代の専攻:学部・院ともに音声信号処理(でも出身は経営工学専攻)
blog:http://www.ska-world.net/study/

―― 子どものころ憧れたもの,熱中したものは?

中学生のころ,田宮模型のラジオ・コントロール・カーに熱中していました.オフロード・カーだったのですが,地面のコンディションに合わせてサスペンションの硬さを調節したり,弟のラジコン・カーを相手にレースしたりしていました.

―― 情報科の先生になろうと思った理由は?

情報科が扱う分野の幅はとても広いので,「情報」をキーワードに横断的な学びが展開できるところに魅力を感じました.

―― 今の仕事に就かなかったら,何をしていた?

今の仕事も「たまたま」の縁でしていますので,縁がなかったら,別の「たまたま」出会った仕事に就いていることでしょう.

―― 授業で取り上げた題材で,面白いと思ったもの,反応が良かったものは?

プレゼンテーション(年度によりテーマは異なる)では,生徒の個性を見ることができて楽しいです.また,今年は学研・大人の科学の「プログラムロボット」を使ったロボット・コンテストをはじめて実施しましたが,生徒の反応は良かったと思います.

―― 生徒さんにとって,情報の授業は何に役立つのでしょう?

何かの役に立つ授業という意識は持っていませんが,問題解決が必要な場面や,ものを見る「眼」が必要な場面で,リテラシを活用してもらえたらうれしいですね.

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