オープン・ソース車載通信ミドルウェアの実用性を実車で確認 ――自動車制御用ソフトウェアの実証実験

組み込みネット編集部

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レポート 2006年11月28日

 2006年11月27日,電装機器メーカであるアイシン精機の豊頃試験場(北海道中川郡豊頃町)にて,自動車制御用組み込みOSと通信ミドルウェアの実車を用いた実証実験が行われた(写真1).名古屋大学とソフトウェア開発会社であるヴィッツが中心となって設立した地域新生コンソーシアムが研究事業として開発したミドルウェアを,アイシン精機と東海理化電機製作所がそれぞれECUに組み込んだ.そして,これらを実車に搭載し,開発成果物が実用可能なものかどうかを確認した.

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[写真1] 実証実験に使用された中型トラック・バス
アイシン精機が保有している評価用車両.1999年製で,ディーゼル・エンジンで駆動する.後輪駆動車用5段変速のAT(自動変速機)制御用ECUを搭載している.

 オープン・ソース・ソフトウェアである組み込みOS「TOPPERS/OSEK Version 1.1」と本コンソーシアムが開発したCAN通信ミドルウェアを組み込んだAT制御用ECUを中型トラック・バスに搭載し,実際に走行させて,ギアが切り替わる様子などを確認した(写真2).また,TOPPERS/OSEK Version 1.1と本コンソーシアムが開発したLIN通信ミドルウェアを組み込んだキーレス・エントリ・システムの制御用ECUを乗用車に搭載し,システムが動作する様子を確認した(写真3)

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[写真2] AT制御用ECU(写真右)とECUの内部情報のモニタ画面(写真左)
ECUのデバッグ用端子などから情報を取得し,ドイツVector Informatik社のネットワーク分散システム用解析ツール「CANoe」を使って値をグラフィカルに表示した.なお,ECUに組み込んだTOPPERS/OSEK Version 1.1はTOPPERSプロジェクトがすでに公開しているソフトウェアである.保護機能は実装されていない.

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[写真3] キーレス・エントリ・システムの実証実験
本コンソーシアムが開発したLIN通信ミドルウェアを組み込んだECUを用意し,乗用車に組み込まれているキーレス・エントリ・システムの制御用ECUと差し替えて実験を行った.

 今回の実証実験は,2005年8月~2007年3月に実施されている自動車統合制御用組み込みOSに関する開発プロジェクトの成果を確認するものとして行われた.このプロジェクトは,経済産業省の平成17年度 地域新生コンソーシアム研究事業として採択されたものである(管理法人は名古屋都市産業振興公社).具体的には,メモリ保護や時間保護などの保護機能を備えた組み込みOS(TOPPERS/OSEKをベースに開発)やCAN通信ミドルウェア,LIN通信ミドルウェア,開発したソフトウェアの信頼性を確認するための検証ツール群などを開発する.CANやLINの通信ミドルウェアについては,OS上で動作するものと,OSを利用せずに動作するものの両方を用意した.2007年3月に向けてプロジェクトは進行中だが,現時点で開発が完了しているソフトウェアの成果を確認するために実験を行った.

 本コンソーシアムには,名古屋大学やヴィッツ,サニー技研,東海ソフト,豊通エレクトロニクス,名古屋市工業研究所,アイシン精機が参加している.また,アドバイザとしてトヨタ自動車と東海理化電機製作所,アイシン・エィ・ダブリュが,オブザーバとしてルネサス テクノロジなどが参加している.

 なお,アイシン精機は,本プロジェクトの成果物であるCAN通信ミドルウェア(OSを利用せずに動作するもの)を,2007年に出荷するECUに組み込む予定だという.


関連リンク:
名古屋都市産業振興公社の発表資料(自動車統合制御用組み込みOSの開発プロジェクトを開始したことについての発表,2005年8月3日公開)

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