無線通信も車載もビデオ・アプリケーションへ ――ET(Embedded Technology) 2006

組み込みネット編集部

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レポート 2006年11月29日

 2006年11月15日~17日,パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて組み込み技術に関する展示会「ET(Embedded Technology) 2006」が開催された(写真1).無線通信や車載システムなどと組み合わせたビデオ信号処理のデモンストレーションに注目が集まっていた.例えばサイレックス・テクノロジーは,UWB通信を利用した映像伝送システムのデモンストレーションを行った.

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[写真1] ET(Embedded Technology) 2006の会場風景
ET2006はパシフィコ横浜で開催された.

●UWB通信を利用した映像伝送システムを展示

 サイレックス・テクノロジーは,UWB通信を利用した映像伝送システム「UWB & Ethernet Digital Signage System」のデモンストレーションを行った(写真2).無線部分には,イスラエルのWisair社が出荷しているUWBチップセット「531-502」の評価ボードを用いた.

 本チップセットは,WiMedia Allianceが規定したUWBの通信方式(マルチバンドOFDM)に対応している.531はベースバンドLSI(MAC処理を含む),502はRF ICである.サイレックス・テクノロジーで行った実験では,スループットは約120Mbps,通信距離(見通し)は20mだったという.

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[写真2] 映像伝送システムのデモンストレーションの様子
二つのパソコンから同時に二つの映像を配信しており,それを交互にディスプレイに写し出すというデモンストレーション.

 また,同ブースでは本システムの無線モジュールの試作品が展示された(写真3).現在はUWB通信部のデバイス・ドライバを開発中.出荷時期の詳細は未定だが,2007年中に製品化することを目指している.同社はこうした映像伝送システムの応用として,例えば電子広告や案内板などを考えているという.

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[写真3] UWB無線モジュールの試作品
サイレックス・テクノロジーが展示した.製品化の時期は未定.

●トヨタが採用した白線認識画像処理のデモに人だかり

 NECエレクトロニクスは,車載向けの画像処理用マルチコア内蔵プロセッサ「IMAPCAR(Integrated Memory Array Processor for Car)」を用いたデモンストレーションを行った.本プロセッサは,2006年8月にサンプル出荷が開始されたもので,トヨタ自動車が「レクサスLS460」のプリクラッシュ・セーフティ・システムの画像認識用に採用したことを発表している.本展示会におけるデモンストレーションでは,ラジコン・カーに取り付けたカメラの映像をもとに,白線とセンタ・ラインの認識を行った(写真4)

 デモンストレーションにおける処理は次の通り.まず,ラジコン・カーに搭載したカメラのデータは無線でIMAPCAR評価ボードに転送され,画像認識を行う.デモンストレーションでは,NTSC(National Television System Committee)映像信号に同期させながら画像認識処理を行う割り込みをかけていた(33msごとに1フレームを処理する).そして,画像認識結果のデータを基に,ラジコン制御ユニット(V850E評価ボード)で現在位置やステアリングの情報をラジコン・カーに伝えていた.

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(a) ラジコン・カーによるデモンストレーション

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(b) 認識結果の表示

[写真4] 白線認識のデモンストレーションの様子
(a)はデモンストレーション用のコース.ラジコン・カーにカメラを搭載している.(b)はIMAPCARにより白線(緑色の線)とセンタ・ライン(ピンクの線)の認識を行った結果をディスプレイ表示させた様子.

●DSP評価用ボード上でMPEG-4のソフトウェア・エンコードを実施

 沖情報システムズは,米国Texas Instruments社のDSP評価用ボード「DVEVM(Digital Video Evaluation Module)」を利用したビデオ圧縮・伸張処理に関するデモンストレーションを行った(写真5).沖情報システムズは,MPEG-4のエンコード/デコード・ソフトウェア,およびJPEGのデコード・ソフトウェアを開発した.本ボードは,Texas Instruments社の画像処理用LSI「TMS3206446」やハード・ディスク装置,各種カード・スロット,ビデオ信号入出力ポート,Ethernetポートなどを搭載する.TMS3206446は,ARM9コアとC6000系のDSPコアを内蔵している.OSにはMonta Vista Linuxを採用した.

 本展示会の会場では,MPEG-4の画像をエンコード/デコードしたり,デコードした2系統の画像を重ねて表示するなどのデモンストレーションを実施した.

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[写真5] DVEVMの外観
Texas Instruments社のDSP評価用ボード.同社が提唱するディジタルAV機器向けプラットホーム「DaVinci」の構成要素である.

●マイコン・デバッグの課題を"磁力"で解決

 ルネサス テクノロジは,マイコン用のデバッグ・インターフェースとして磁界結合を用いる技術を紹介した(写真6).シリコン・チップの回路パターンとしてアンテナ(0.6mm角の微小コイル)を形成し,デバッグに必要なマイコンの内部信号の変化を,磁界の変化として外部に取り出す.LSIパッケージの上面とプローブ回路(磁界の変化を読み取る回路)の間は非接触で通信できる.ICEやソフトウェア開発ツールなどの環境は,従来のものをそのまま利用できる.デモンストレーション用の試作チップは,同社のR8Cマイコンをベースに開発した.

 慶應義塾大学理工学部 黒田研究室/石黒研究室と共同開発した.技術の詳細については,2007年2月に開催される半導体関連の国際学会ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)2007にて発表するという.

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[写真6] 磁界結合を利用するマイコン用デバッグ・インターフェースの試作品
左側の黒い箱はUSB接続のデバッガ(ICE).右側の基板に実装したマイコンの上に,フレキシブル・ケーブルの先に付いた磁界プローブを当てている.

●CC-Link規格に準拠したライン・モニタを展示

 ビッツはCC-Link(Control & Communication Link)規格に準拠したライン・モニタ「HM-CC90」を展示した(写真7).CC-Linkは,工場の生産ラインなどにおいて,カメラや制御用パソコン,各種センサ,PLC(Programmable Logic Controller)などを結ぶネットワークの標準規格である.通信速度は最大10Mbps.同じ用途で使われるネットワーク規格に,PROFIBUS-PA やDeviceNetなどがある.

 本ライン・モニタは,CC-Link上を流れるデータを取り込み,タイム・スタンプやフレーム番号,ヘッダ,データ,CRC(cyclic redundancy check),通信速度,総フレーム数などを解析・表示する.本ライン・モニタは,バスに接続するためのモジュールと,パケットを取得して内容をパソコン上に表示するソフトウェア,パソコンに接続するためのPCカードなどから構成される.

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[写真7] HM-CC90の外観
奥の箱は,CC-Linkバスに接続するためのモジュール.手前のPCカードをパソコンに接続して使用する.

●最大30チャネルのRCサーボ・モータが制御できるロボット制御ボード

 トラストテクノロジーは,最大30チャネルのRCサーボ・モータを制御できるロボット用制御ボード「TT-RMCB01」を展示した(写真8)

 本ボードは,米国Analog Devices社が搭載する32ビット・マイクロコントローラ「ADuC7026」(英国ARM社のARM7TDMIコアを内蔵)やEthernetポートなどを搭載する.また,BluetoothやIEEE 802.11(無線LAN),赤外線などの無線インターフェースを用いて制御できる.

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[写真8] TT-RMCB01の外観
メイン・ボードとサブボードの2枚構成.メイン・ボードの外形寸法は39mm×43mm,サブボードは55mm×60mm.

●「ETロボコン チャンピオンシップ大会」を併設イベントとして開催

 レゴブロックの車体で決められたコースを自律走行する競技「ETロボコンチャンピオンシップ大会」が,併設イベントとして開催された(写真9).今夏に東京都立産業技術高等専門学校(東京都品川区)で行われた競技会を勝ち抜いた全30チームが参加した.

 優勝は,デンソー ボディー機器技術2部の「プッシュ☆スタート」,準優勝は オージス総研 組み込みソリューション部の「田町レーシング」,3位はNECソフトウェア北陸の「ムンムン」という結果になった.また,三菱電機マイコン機器ソフトウエアの「猪名寺駅前徒歩1分」とオムロンの「Realizing」は特別賞を受賞した.

 レースでは,突然,前触れもなく走行体が止まったり,前の走行体と接触してリタイヤになったりと,アクシデントが多発した.立ち見客が多く,競技中は終始歓声に包まれていた.

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[写真9] エッフェル塔の前を通過する走行体
走行速度はかなり速い.

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