2.4GHz帯の短距離無線通信規格802.15.4チップがセキュリティ・システム搭載へ ――フリースケール・テクノロジ・フォーラム・ジャパン2006
2006年9月13日,目黒雅叙園(東京都目黒区)にてフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン主催の「フリースケール・テクノロジ・フォーラム・ジャパン2006」が開催された.米国Freescale Semiconductor社の研究開発や製品などに関する基調講演や技術セミナのほか,同社の製品を搭載した機器などの展示が行われた.例えば同社が注力する分野の一つである携帯型機器については,IEEE802.15.4チップ「MC13192」を採用した旭硝子やシャープのセキュリティ・システムのデモンストレーションが公開された.
●IEEE802.15.4チップを採用した理由は「低消費電力」
本フォーラムでは,同社のIEEE802.15.4準拠のRFトランシーバLSI「MC13192」の採用事例が紹介された.旭硝子の「センサー付き防犯ガラス」とシャープの「リビングドアスコープ」である.IEEE802.15.4は2.4GHz帯を用いる短距離無線通信規格である.物理層とMAC層までを規定している.IEEE802.15.4を利用して,低コストで消費電力の低いネットワークを構築するためのプロトコル規格「ZigBee」が策定されている.
「センサー付き防犯ガラス」は,専用の防犯ガラス(導電パターン内蔵)にセンサ・モジュールを取り付けたものである(写真1).ガラスが破損するほどの力がガラスにかかると導電パターンが切断する.このときの抵抗値の変化をセンサ・モジュールで検知する.この情報をIEEE802.15.4の通信方式を利用してシステム・コントローラに転送する.「RFトランシーバLSIとしてMC13192を選んだ理由として,低消費電力が挙げられる.ガラスに取り付けるモジュールは,リチウム・イオン電池によって1年は持つ」(旭硝子の説明員).2007年春からの発売を目ざしている.
なお,今回のシステムでは独自の通信プロトコルを用いている.ZigBeeの採用については,今後の家庭内ネットワークの普及状況を見ながら検討していくという.
シャープの「リビングドアスコープ」は,玄関のドア・スコープ(のぞき穴)にMC13192を搭載したカメラ・モジュールを取り付け,カメラの画像を専用モニタに送信する,セキュリティ・システムである(写真2).カメラ・モジュールは,単3形アルカリ電池3本でおよそ半年間駆動する.
最大3台のカメラ・モジュールと1台のモニタを増設できる.カメラ・モジュールおよびモニタは,2006年9月から発売を開始している.
●自動車のセキュリティ・システムに焦点を当てたデバイスが続々
現在,自動車には燃費(環境)や安全性,快適性などを改善するための機能の搭載が進められている.こうした機能を実現する際にはセンシング技術が重要となる.そこで,同社はセンサを含む車載デバイスにも注力している.
例えば,同社の電界センサはエアバッグ・システムの乗員検知用センサとして採用されている.乗員の有無や体型(おとなか子どもか),姿勢などを電界センサで検知し,この情報をもとに不必要にエアバッグが作動しないように制御する.
電界センサは,センサ・デバイスに外付けした電極に物体(人など)が近づくことで発生する静電容量の変化を検知して,非接触のセンシングを行う.具体的には,電極ピンに与えられている正弦波信号(デバイス内部の発振器により生成)の振幅や位相が,電極と物体の間の静電容量によって変化する.この正弦波を検波器に送って電圧値(DCレベル)に変換している.
本フォーラムでは電界センサ「MC33794」の開発プラットホームのデモンストレーションが行われた(写真3).電界センサにはアプリケーションに適した形状の電極を接続する.例えば,本プラットホームには,タッチ・パネルやスライド・スイッチとして利用できるような電極形状となっている.
また,同社はSiGeミリ波レーダを開発している.ミリ波レーダは,車間距離維持や衝突回避など,自動車のセーフティ系システムに組み込まれる.同社は現在,77GHzのミリ波レーダ・チップのサンプル出荷を行っている(写真4).検知距離は200m程度.トランスミッタ(送信側)にはアンプやVCO(電圧制御発振器),レシーバ(受信側)にはLNA(低ノイズ・アンプ)やミキサなどの信号処理回路を集積している(PLLやA-Dコンバータなどは外付け).SiGeミリ波レーダ・チップは,マイクロプロセッサなどと同じCMOSプロセスとほぼ同じラインで製造できる.そのため,ウェハ・コストや量産効果を考えると,GaAsミリ波レーダ・チップの約1/3のコストで提供できるという.