UWB,802.11nなど,高速無線通信に対応したチップセットが製品化 ――ワイヤレスジャパン2006
2006年7月19日~21日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,ワイヤレス機器や通信サービスに関する展示会「ワイヤレスジャパン2006」が開催された.IEEE802.11nやUWB(ultra wideband)などの高速無線通信に対応したチップセットを用いたデモンストレーションが行われた.例えば,イスラエルのWisair社は同社のUWBチップセットを搭載したモジュールを市販のビデオ・カメラに組み込み,動画の転送を行った.UWBは3.1GHz~10.6GHzの周波数帯を利用する近距離無線通信規格.
●Certified Wireless USB準拠のチップセットを搭載した評価ボード
Wisair社は,Certified Wireless USBの開発キットを展示した(写真1).Certified Wireless USBとは,WiMedia Allianceが策定しているUWB技術を物理層やMAC(media access control)層に用いるUSB規格である.
本開発キットにはRF ICとして「502」,ベースバンドLSI(MACを含む)として「542」を搭載している.ホスト側の評価ボードとして用いるため,Windows XPに対応したUSBドライバも提供する.また,2006年9月末からはデバイス側の評価ボードも出荷する予定.Windows CEに対応したAPIやドライバも用意する.デバイス側の評価ボードについては,2007年からLinuxやμITRONにも対応するという.
542は,Certified Wireless USBに準拠している.542では外付けのUSBコントローラが必要となるが,今後はUSBコントローラを内蔵した製品も開発していく予定.
[写真1] Certified Wireless USB開発キット
RF ICとして「502」,ベースバンドLSI(MACを含む)として「542」を搭載している.
また,同社は市販のビデオ・カメラを用いたUWBによるデータ転送のデモンストレーションを行った.ビデオ・カメラのUSBポートに同社のUWBチップセット(RF ICは502,ベースバンドLSIは531)を搭載したDWA(Device Wire Adapter)を接続し,ホストへビデオ・データを転送した(写真2).本チップセットは,3.1GHz~4.8GHzの周波数に対応する.データ転送速度は最大480Mbps.
[写真2] ビデオ・カメラを用いたUWB通信のデモンストレーション
DWAを用いて既存のUSBデバイス(周辺機器)とホストを無線接続する.
●IEEE802.11nチップセットを用いたデモンストレーション
米国Atheros Communications社は,IEEE802.11nのドラフト仕様に準拠した無線LANチップセット「AR5008」のデモンストレーションを行った.IEEE802.11nとは,複数の送受信系統で通信を行うMIMO(multiple input multiple output)技術を用いることで,伝送速度や通信可能距離の向上を図る無線LAN規格.
本チップセットは,RF ICとベースバンドLSI(MACを含む)からなる.デモンストレーションでは,2.4GHz帯(周波数帯域は20MHz)の周波数を利用して,サーバに格納された動画データを,アクセス・ポイントを介してクライアント(ノート・パソコン)に転送した(写真3).送受信系統の構成は送信ストリーム2×受信ストリーム3で,スループットは80Mbps程度という.
[写真3] 「AR5008」のデモンストレーション
送信側が2ストリーム,受信側が3ストリームで通信している.
●ZigBeeを使ってリモコン制御
沖電気は,IEEE802.15.4に対応した無線通信LSI「ML7065」を用いてたデモンストレーションを行った.IEEE802.15.4とは,比較的低いデータ転送速度で用いられる2.4GHz帯の近距離無線通信規格.ML7065はIEEE802.15.4の物理層およびMAC層までを内蔵する.デモンストレーションでは,通信プロトコルとしてZigBeeを利用し,テレビやHDD/DVDレコーダ,AVアンプなどを一つのリモコンで制御した(写真4).ZigBeeは,低消費電力,低コストを目ざした物理層にIEEE802.15.4を利用する無線通信プロトコル.今回のデモンストレーションではAVアンプをコーディネータ,リモコンやテレビ,HDD/DVDレコーダをエンド・デバイスとした.プロファイルは同社が独自に作成したもの.
また同社は,制御用に8ビット・マイコンを内蔵した無線通信LSI「ML7222」を発売する.ML7222のサンプル出荷は2006年9月末から,量産出荷は2007年から開始する予定.
[写真4] ZigBeeを利用した家電ネットワーク
●携帯電話用RFIDリーダを製品化
KDDIのブースでは,携帯電話用RFIDリーダのデモンストレーションが行われた(写真5).RFIDとして日立製作所の「ミューチップ」に対応している.外形寸法は約106mm×50mm×16mm,重量は約80g(ただし電池は含まない).読み取り可能な距離は約5cm.auの携帯電話(特定機種)で利用可能.業務用として2006年秋ごろから発売を開始する.
RFIDを読み取り,サーバに転送してデータを受け取るという基本的なサンプル・ソフトウェアが提供されるが,基本的にはユーザ側で携帯電話向けソフトウェア開発環境「BREW」を用いてカスタマイズする.
[写真5] 携帯電話用RFIDリーダ
在庫管理や物流管理などにおける利用を見込んでいる.
●FOMAテレビ電話向けフリー・ソフトウェアを利用したサービス
NTTドコモは,同社の携帯電話FOMA向けフリー・ソフトウェア「ドコモテレビ電話ソフト」を利用した「テレビ電話アルコールチェックシステム」のデモンストレーションを行った(写真6).タニタ製アルコール・センサを携帯電話の平型イヤホン・ジャックに接続し,測定したアルコール濃度を管理用パソコンに送る.アルコール・センサは本システム用に開発されたもので,検出したアルコール濃度をトーン信号に変換する機能を備えている.本システムで用意される管理ソフトウェアにより,送られてきたトーン信号をアルコール濃度に変換する.バスやタクシー会社などで,飲酒したドライバを検出するために用いられる.
本システムはすでに発売を開始している.管理ソフトウェアは68,000円,アルコール・センサは20,000円.対応機種は,テレビ電話が利用でき,平型イヤホン・ジャックを備えるFOMA端末である.
[写真6] テレビ電話アルコールチェックシステム
アルコール・センサの測定範囲は0~0.25mg/l.テレビ電話を利用するのは,本人確認やドライバの状況を確認するため.