「防犯」や「情報漏えい防止」などをうたったシステムに注目 ――Interop Tokyo 2006

組み込みネット編集部

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レポート 2006年6月16日

 2006年6月7日~9日,幕張メッセ(千葉市美浜区)にて,ネットワーク技術に関する展示会「Interop Tokyo 2006」が開催された(写真1).セキュリティや情報漏えい対策をうたった展示やデモンストレーションが多く見られた.例えば,松下電器産業はRFIDを利用した無線センサ・ネットワークによる防犯システムのデモンストレーションを行った.通学路にカメラやRFIDリーダなどを設置して,子どもの経路情報を保護者に通知するもので,来場者の目を引いていた.

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[写真1] Interop Tokyo 2006
2006年6月7日~9日,幕張メッセ(千葉市美浜区)にてInterop Tokyo 2006が開催された.3日間の来場者数は159,818人.

●無線センサ・ネットワークを利用して子どもを守る

 松下電器産業は,無線センサ・ネットワークを利用した防犯システム「街角見守りセンサーシステム」のデモンストレーションを行った(写真2).ランドセルに取り付けるICタグ(パッシブ型およびアクティブ型のICタグを搭載),通学路(街灯や自動販売機,校門など)に取り付けるセンサ・ノード(IPカメラ,タグ・リーダ,パッシブ型ICタグ用アンテナ,通信コントローラ,ディジタル入出力モジュールを搭載)を用いて,登下校時の子どもの通過情報を記録したり,その情報をメールなどで保護者へ通知することができる.

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(a) デモンストレーションのようす

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(b) センサ・ノード(黒い筐体の部分)

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(c) センサ・ノードから送られてきた画像

[写真2] 街角見守りセンサーシステム
展示会場におけるデモンストレーションのようす.同社のブース内に設置されているセンサ・ノードにICタグを持った人が近づくと,撮影された画像データがパソコンに送られてくる.

 センサ・ノードに組み込まれているIPカメラで通学路の子どものようすを撮影する際には,被写体とICタグを付けた子どもが一致しなくてはならない.また,該当する子ども以外の通行人をむやみに撮影することは個人情報保護の観点から問題となる.そのため,本システムでは対象となる子どもを撮影するため,パッシブ型ICタグを利用している(写真3).パッシブ型ICタグがセンサ・ノードの3m~5mの範囲に入ると,1秒間に1回の頻度で撮影を行う.パッシブ型ICタグが検知されなければ撮影は行わない.なお,実用化のためには,被写体以外の人が写ってしまった場合にそれらをマスクするなんらかのくふうを施す必要があるという.また,アクティブ型ICタグを用いて,子どもがノード付近を通過した時間を記録する.アクティブ型ICタグの検知範囲は約15m.

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(a) ランドセルに取り付けられたICタグ

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(b) タグの中

[写真3] ICタグ
ランドセルに取り付けるICタグのケースには,パッシブ型とアクティブ型のICタグが搭載されている.

 撮影した画像や通過時間などのデータは,センサ・ノードをホッピングしながらデータ・センタに収集される.本システムでは画像データを転送するので,無線ネットワークにはある程度の帯域が必要となる.そこで5GHz帯の周波数を用いているという.無線モジュールは汎用品を利用しているが,ネットワーク・プロトコルは同社独自の技術を採用している.

 2006年2月~3月には,大阪市内の小学校で本システムの実証実験を行った.具体的な製品化については,現在検討中.街中へのノードの設置や個人情報の収集・閲覧のためのデータ・センタの設立といったインフラ整備が必要になるほか,システムを運用する際の責任者はだれか,すべての子どもに平等にサービスを提供するにはどのようにするべきかなど,検討するべきさまざまな課題があるという.「本来は地域社会の中で人が子どもを守るべき.ただし,人間では足りない部分をこうしたシステムで補っていければと思う」(同社の説明員).

●異なる規格のRFIDタグの信号処理を行うソフトウェア

 NECシステムテクノロジーは,複数のRFID規格に1台で対応できるリーダ/ライタ(読み出し/書き込み)機器のデモンストレーションを行った(写真4).同社が開発した信号処理用ソフトウェアをリーダ/ライタ機器に実装し,13.56MHz帯を用いるISO/IEC18092やISO/IEC15693に準拠したタグや,2.4GHz帯を用いるISO/IEC18000-4に準拠したタグの読み取りなどを行った.

 信号処理をソフトウェアで行っているため,例えば新しい規格が追加された場合でも,それに対応したソフトウェアをダウンロードすれば,リーダ/ライタ機器のハードウェア構成を変更する必要がない.各種RFIDタグを取り扱う必要のある流通・販売分野などにおける需要を見込んでいる.製品化の時期は未定.

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[写真4] NECシステムテクノロジーのデモンストレーション
RFIDタグの周波数帯や規格などはGUIで設定.リーダ/ライタ機器が近くに設置されていてもお互いに電波干渉しないしくみが盛り込まれているという.

●プリンタの機種に依存しない印刷物の情報漏えい防止用ソフトウェア

 富士通は,印刷物からの情報漏えいを防ぐための対策ソフトウェア「PaperTracer」のデモンストレーションを行った.市販の文書作成ツールから文書を取り込み,仮想的なプリンタ・ドライバ上で文書情報(ヘッダ,フッタ,背景)や地紋などを埋め込むためのデータ加工を行う.加工後は,通常のプリンタでプリントアウトできる.こうした加工を施した文書をコピーすると,文字が浮かび上がるため,原本と区別できるという(写真5).本ソフトウェアは,600dpi以上のレーザ・プリンタ(モノクロ)であれば,とくにプリンタの機種に依存しない.また,プリント用紙も普通紙や再生紙を利用する.今後は,スキャナ(解像度が300dpi以上)で読み込んだときのみ見える情報を埋め込む機能およびその情報を表示する専用ソフトウェアも追加するという.

 本ソフトウェアは,クライアント端末用とサーバ用の2種類を用意する.サーバ用ソフトウェアは,クライアント端末の印刷ポリシやログなどを一括管理するための機能を盛り込む.クライアント端末用ソフトウェアは,256Mバイト以上のRAM容量を備えたパソコン上で動作する.対応OSは,Windows 2000/XP.サーバ用ソフトウェアの対応OSはWindows 2000 ServerまたはWindows Server 2003.クライアント端末用ソフトウェア(文書情報の挿入や地紋印刷対応)は2006年6月下旬から発売を開始する予定.スキャナを利用した情報表示機能などの追加ソフトウェアは,同年秋ごろに製品化されるもよう.販売は,富士通ソフトウェアテクノロジーズが行う.

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(a) コピー前

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(b) コピー後

[写真5] PaperTracerのデモンストレーション
本ソフトウェアで加工した文書をコピーすると,文字が浮かび上がる.

●取材した画像をリアルタイムに伝送できるシステム

 KDDI研究所は,携帯型高画質ビデオ伝送システムを展示した(写真6).市販の家庭用ビデオ・カメラや放送用ビデオ・カメラなどで撮影した画像を,外出先からオフィスや放送局に転送できる.無線カードやEthernetに対応する通信ポートを持ち,ADSL(asymmetric digital subscriber line)や光ファイバ接続,3G携帯電話機,衛星,無線LANなどを介してデータを転送する.同社では緊急取材や災害状況確認,工事現場の進捗報告といった用途における利用を見込んでいる.

 伝送システムを実現する端末には,それぞれ専用の送信機と受信機(パソコンを利用)がある.送信機,受信機ともにリアルタイム伝送時の遅延を抑える専用の通信アプリケーション・ソフトウェアを搭載している.伝送モードは,H.264方式によるリアルタイム伝送モード(20kbps~1.8Mbps)と,MPEG-2方式による蓄積伝送モード(20kbps~15Mbps)に対応する.価格は200万~250万円.

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[写真6] KDDI研究所の展示

●アクセス・ポイントを設置するシステム・インテグレータ向けのスペアナ

 コムワースは,米国Cognio社のスペクトラム・アナライザを展示した(写真7).ノート・パソコンにPCカード状の専用ハードウェアを差し込むことで,2.4GHz~2.5GHz(IEEE802.11b,IEEE802.11g)と5.15GHz~5.35GHz(IEEE802.11a)のスペクトラムを表示できる.各種アクセス・ポイントを設置するシステム・インテグレータが電波状況を解析する用途に向くという.

 専用ハードウェアは,FFT(fast Fourier transform)解析や周波数スイープ,平均・最大値算出機能を搭載している.また,本スペクトラム・アナライザは,チャネルごとの使用端末数を棒グラフとして表示する機能や,特定電波の種別解析機能,電波発生源探索支援機能などを備えている.価格は70万~75万円を予定しているという.

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[写真7] コムワースの展示

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