音響メーカ初のViivテクノロジー搭載機器をオンキヨーが発売 ――インテル・デベロッパー・フォーラム Japan 2006
2006年4月6日~7日,東京プリンスホテル(東京都港区)にて,インテル主催の「インテル・デベロッパー・フォーラム Japan 2006」が開催された.米国Intel社の研究開発や製品などに関する基調講演や技術セミナ,同社の製品を搭載した機器などの展示が行われた.展示会場では,「Viivテクノロジー」を採用したオンキヨーのパソコン「HD(high difinition)メディア・コンピュータ HDC-7」のデモンストレーションが行われ,来場者の注目を集めた(写真1).Viivテクノロジーとは,Intel社が提案する,パソコンをベースにした音楽・映像などのエンターテインメント向けプラットホームである.
また,「デジタルホーム」と題した基調講演では,同社のDirector of Digital Home Marketing and Planning,Desktop Platforms GroupであるWilliam O. Leszinske, Jr.氏がシャープ製のWindows Mobile搭載スマートホン「W-ZERO3」を用いたViivテクノロジーのデモンストレーションを披露した.(写真2).
●「原音に近い音を」を配信し,再生する
オンキヨーの「HDメディア・コンピュータ HDC-7」は,分解能が24ビット,サンプリング周波数が96kHzというHD音質(DVDオーディオ相当の音質)に対応している.CD(compact disc)の音質は16ビット,44.1kHzであり,可聴領域(20kHz辺り)外の音を除去している.一方,HD音質では50kHz付近の音まで再生できるため,より原音に近い音を再現できる.2006年5月25日から発売する予定.
「オーディオ専業メーカとして,とくに音にこだわった.音源ボードを独自に開発し,部品の配置や配線の引き回しなどを最適化した」(オンキヨー AVC事業本部 商品企画部 部長の神谷速夫氏)(写真3).
本パソコンは,CPUとしてIntel社の「Pentium Dプロセッサ820(2.8GHz)」を搭載している.GUIは,Windows XP Media Center Editionの機能を利用しており,マウスやキーボードのほか,リモコンによる操作も可能である.パソコン本体のほか,ワイヤレス・キーボードが付属する.「もちろん通常のパソコンとして利用できるが,音楽再生コントローラとしてホーム・シアターの中核として位置づけてほしい」(神谷氏).なお,ホーム・シアターとして利用するには,AVアンプやディスプレイ,スピーカなどが必要になる.
同社はまた,本パソコンの発売と同時にViivテクノロジー向けの音楽配信サービスを開始する.同社のHD音質の音楽配信サービス「e-onkyo music store」を拡張したもので,同サービスのWebサイトをインテルと共同で開発中.サービス開始までには,ジャズやクラッシックなどのHD音質対応楽曲を1,000曲程度用意しておきたいという.曲の長さによって異なるが,1曲当たりのダウンロード料金は200円~800円になる予定.
●Wireless USB,異なるメーカのPHYチップどうしで無線接続をデモ
NECエレクトロニクスは,同社のCertified Wireless USB(以下,Wireless USB)の評価ボードを使ったデモンストレーションを行った.今回のデモンストレーションでは,イスラエルWisair社と台湾Realtek Semiconductor社のPHYチップどうしで無線接続を行った(写真4).同社は,Wireless USBホスト・コントローラ「μPD720170」のユーザ向けに評価ボードを提供する.PHYチップは,Wisair社,Realtek社,米国Alereon社のものを用いる.評価ボードと合わせて,Windows XP用のデバイス・ドライバも提供する.
本デモンストレーションにおけるスループットは5Mbps程度.評価ボード提供時までに最適化を施し,最大200Mbpsのスループットを目ざすという.また,今後はPCI Express対応製品を開発し,最終的にはPHYチップとMAC,ホスト・コントローラなどのすべて機能を1チップ化した製品を提供する方針.
なお,今回のデモンストレーションではアソシエーションは行っていなかったが,評価ボードはケーブル・アソシエーションに対応しているという.ボードにはAES-128暗号回路が実装されており,アソシエーションの処理はデバイス・ドライバで実行する.
Wireless USBのアソシエーション・モデルは,2006年3月にバージョン1.0が公開された.アソシエーションとは,USBのホストとデバイスの間を正常に通信するためのプロセスのことで,現在のところケーブル接続で認識する方法とホストとデバイスに数値を入力・照合させる方法の二つが定められている.
一方,レクロイ・ジャパンは,Wireless USB対応のプロトコル・アナライザ「UWBTracer標準解析システム(UW002AAA-X)」のデモンストレーションを行った(写真5).本プロトコル・アナライザは,WiMedia Allianceが策定するUWB(Ultra-Wideband)の通信方式に準拠したRFモジュールを搭載しており,外部アンテナまたは同軸ケーブルによりRF信号を捕捉する.会場内でデモンストレーションを行っていたNECエレクトロニクスのWireless USBの通信データなどを捕捉し,解析を行っていた.
現在のところ,本プロトコル・アナライザはアソシエーション・モデルに対応していない.アソシエーションが行われると,無線通信データが暗号化されるため,パケットそのものは捕捉できるが,具体的なデータの内容を解析できなくなる.今後,同社はアソシエーション・モデルに対応したプラグイン・モジュールを提供していく予定.これにより,暗号化を外したデータの取得および解析が行えるようになる.
また,本展示会では同社のオシロスコープ「SDA11000」を使ってRF品質の測定を行っていた(写真6).コンプライアンス・テストの仕様が定まれば,そのテスト仕様に基づいてマスク・テストなどの評価用ソフトウェアを開発するという.
また,東陽テクニカもプロトコル・アナライザ「Wireless USB Explorer 300」のデモンストレーションを行った(写真7).本プロトコル・アナライザは,RF信号を捕捉し,解析することができる.RFモジュールにはWisair社製のPHYチップを搭載している.データ・ペイロードの暗号化を外す機能や物理層とMAC(media access control)の間のデータ通信を解析する機能などを備えている.
今後,プラグフェスタ(相互接続性テストを行うイベント)で認証が取れた段階で,ジェネレータ(テスト信号発生器)を発売する予定.